第64話 豪風
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楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。
ヤベー物にヤベー奴らが乗る回です。
精霊殻強襲型“豪風”。
その真骨頂と言える専用兵装。追尾型ミサイル。
範囲内のロックオンした対象を追尾し、高精度で強烈な打撃を加える必殺兵器だ。
ゲーム版ハベベにおいてもその強力無比さは語り草で、これがあるから豪風はヒーローが最初に乗る機体にも関わらず、最強の機体であると言われている。
豪風といえばミサイル。ミサイルといえば豪風。
そしてミサイルがある豪風は最強なのである。
さて、そんな最優機体の必殺兵器であるミサイル君。
これは射撃武器なため、戦闘系技能の射撃技能の補正を受けることができる。
さらには同じ戦闘系技能の狙撃技能、職責系技能である戦士技能によりダメージ補正が加わり、精霊契約を含む重層同期による精霊殻の稼働により追加補正を受け、ダメ押しに射撃ダメージを向上させる所持品“寅御前護符”があるのでさらに威力がドンッドンッドンッ!
そしてこれが一番ヤバいんだが。
豪風は複座型……そのため、攻撃の計算式に二人の能力が使われる。
それぞれの能力の平均にちょっとプラスされて、ダメージが計算されるのだ。
本来は力不足のキャラでも乗せやすくするための補助システムだったんだろうが、実のところ、このシステムが真価を発揮するのはパイロットが二人とも技能レベル3だった場合だ。
その場合、諸々の計算の先で算出される最終的な数値は“4”になる。
技能レベル4相当。
その突出ぶりは、これまで何度も語ってきた通りだ。
この上、鍛えに鍛えたステータスの暴力まで加われば……。
「グルギャオォォォォーーーーーーーーーーーン!!!」
「ブルヒヒィィィーーーーーン!!」
「な……っ」
「ドラゴン3体……および周辺のハーベスト……全滅、しました」
「なんだぁそれはぁぁぁーーーーーーー!?!?」
結果、こうなるのである。
雨あられと飛び出したミサイルたちは、ドラゴンはもちろん、周囲のロックオンした敵を、容赦なく狙い打って、爆発して、消し飛ばした。
派手に炸裂したミサイルは、さながら戦場に咲く大花火。
もちろんそんな綺麗なものじゃないけれど、日ノ本に勝利をもたらす縁起物なのは間違いなかった。
ちなみにこのミサイル、シミュレーターで出した数値化ダメージが確か、7200。
ドラゴンの平均体力が3200だから、完全にオーバーキルである。
事前のパイセンバフと天常さんたちのバフも乗ってるって事を考えると、多分もっと威力出てると思う。
装填数1というピーキーさを補って余りある、最強の兵装と言えるだろう。
「相変わらず、意味がわからん威力だ……」
「あれで敵味方識別するんだから、最強すぎでしょ……」
「いいなぁ。あたしも後ろに乗せてもらって稼ぎたいぃ……」
「ほーら、まだ敵は残ってるよ。削って削ってー」
「「「りょうかーい」」」
この光景を見慣れている仲間たちですら、この反応。
正直、ブッパしている俺からしても、このチートっぷりはやべぇと思う。
でもやめない!
1匹逃したら20人の人間を殺すかもしれない敵に、それだけ我が運命の姫君である黒川めばえの未来を害するかもしれない存在に、かける情けなどないのだから!
ノー推しの未来ノーライフ!!
「やりました」
『ヤッタゼ!』
姫様と契約精霊の喜ぶ声を聞きながら、俺は入力を続ける。
近くの建物の中に隠れてやり過ごしていたゴブリンを蹴り飛ばし、残敵掃討に移った。
その時だった。
「終夜様、六牧司令からの個人通信です」
「? 繋いでくれ」
突如として入ってきた個人の霊子通信。
回線を繋ぐと、六牧司令からの提案が二言、三言。
「……問題ない。できる」
俺はニヤリと笑って、それを承諾した。
※ ※ ※
「私たちは、いったい何を見せられているのかしらね……?」
周囲を警戒しながら、私、こと森高真理は一人。
目の当たりにした現実を未だに呑み込めないでいた。
(噂には聞いていたけど、噂通りとは恐れ入ったわ)
超機動小隊。
そんなあだ名で呼ばれているあの若い戦士たちのチームは、本物の化け物揃いだった。
(精霊殻パイロットは全員が手動緊急モードを軽々と扱い、私たちの倍以上に動く。機動歩兵一人取っても、それこそ私以上の成果を挙げる。っていうか、なーにあのピンとドローンとかいう新兵器。敵の支配領域であそこまで正確な情報抜き出せるとか、どんな情報管理能力と開発力よ!?)
そして今。
容易く目の前のゴーレムを打ち倒せるこの実力だって、大きな下駄を履かされてのもの。
(天常家のご令嬢。希少な精霊楽士だって聞いてたけど、その従者も演奏系の精霊楽士で合奏までできるとか、どれだけ天から才能を与えられているのかしら)
ここまで格の違いを見せつけられると、羨ましいとも思わない。
ただただ圧倒されて、畏怖させられるだけだわ。
心のJKが「ヤッバー、ナニコレェ!?」って大合唱よ、まったく!
ピーッ! ピーッ!
ほら、私の精霊殻もピーピー音を立てて……って。
この通信チャンネルは――!
「――隊長!」
「倉科ちゃん! 無事だったのね!」
「はい! 天2の人に助けてもらいました。こちらの人的被害はありません!」
「よかった! あの子たちには本当に感謝してもし足りないわね」
……これで、またひとつ。
噂が真実だって確認しちゃったわね。
「天2が間に合った戦場に、死者は出ない……か」
「あはは、九死に一生を得ました……」
こうやって軽口が叩き合えるのも、あの子たちのおかげね。
さぁ、残るは掃討戦。
1匹見逃せば20人の人命が奪われる。
希望の芽生えを絶やしてはならない、だったかしら。
「倉科ちゃん。これから第161機動小隊は残敵掃討の任に」
「コントロールズーから戦場のすべての戦士たちへ!」
「「!?!?」」
警戒!
緊張と同時に周囲への目視、レーダー両確認!
同時に意識を次の言葉に注意して――!
「――先ほど、ここよりさらに奥の戦域にて、生存者の反応を確認。どうやら地下シェルターにて生き永らえていた模様。これより救助のため、天2独立機動小隊は前線を押し上げる」
………。
………………。
「「はぁ~~~~~~~~!?!?」」
思わず飛び出た私と倉科ちゃんの、驚きの声が重なった。
(これ、どう考えても嘘よね!?)
ここ奪われてから何ヶ月経ったと思ってるの!?
不知火の壁が壊されて、八津代平野でボロ負けした時点でもう奪われてたのよ!?
それでも天久佐本島と上天久佐、そして宇都が頑張ってくれたからようやく押し返しに押し返して、八津代の海側から押しに押して取り戻そうって場所なのよ!?
っていうかこの先は、間違いなく死地!
マーキングやサークルどころか、キューブだってどれだけ配置されてるかわからない、それくらい危険な場所なのよ!?
さっきのドラゴンがウヨウヨしてるかも知れないのよ……って、一撃だったけど!
せめて建岩の観測報告くらいは待ちなさいよ!
「た、隊長……」
「いや、まさか、まさか……」
“独立機動”
独自に動き、戦場を好きに選ぶことができる権限。
それがたった今。
芦子北の一部奪還に成功したっていう偉業を成し遂げたところで、え?
この先まで行くって……芦子北全部取り戻す気なの!?
「コントロールズーより森高千剣長へ連絡。どうぞ」
「こちら森高。何考えてるのよ!?」
本当に何を考えてるの!?
「勝利を」
「っ!?」
即答……!
「未だこの地には残敵がいます。そちらの対処をお願いします」
「……正気?」
聞かずにはいられなかった。
だってあまりにも、その動き方はまともじゃなかったから。
「残念ながら、正気です」
「……いけるの?」
続けて聞いた質問に。
返ってきたのは同期データ。
「?」
展開すると。
そこに映っていたのは――。
「は? 豪風?」
――すでに戦場を変え、さらなる奥へと突撃している、エースオブエースの姿だった。
そしてその直後。
私の目に映ったのは……あまりにも、意味が分からなさすぎる光景だった。
「え?」
そこでは、敵のど真ん中に飛び込み、四方を囲まれてしまった豪風が。
「ええーーーーーーーーーーーーーっっ!?」
ミサイルを発射し、敵を再び壊滅させていた。
ドラゴン「ワレ精霊級最強個体ゾーーー!?!?」
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(07/24追記)
一部文章につきまして、読者の方からご意見をいただき、なるほど確かにと修正が必要な箇所を発見しましたので、ここに変更をお知らせします。
(編集前)
つまり、乗ってるパイロットが二人とも優秀だった場合。
それも、技能レベルをしっかり3に上げ、ステータスも十分に鍛えてあった場合。
↓
(編集後)
本来は力不足のキャラでも乗せやすくするための補助システムだったんだろうが、実のところ、このシステムが真価を発揮するのはパイロットが二人とも技能レベル3だった場合だ。
その場合、諸々の計算の先で算出される最終的な数値は“4”になる。
技能レベル4相当。
その突出ぶりは、これまで何度も語ってきた通りだ。
この上、鍛えに鍛えたステータスの暴力まで加われば……。
より分かりやすく、よりこの作品らしいヤバさの説明になったと思います。ありがたいご指摘でした。




