第52話 限界突破はスピンオフと共に
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Q、どうしてパイセンは魔法少女になってしまったのか。
“精霊合神”
それは神格を持つ精霊と人が精霊契約を結ぶことで巻き起こる、奇跡の御業。
建岩の巫女が行なうとされる超常能力“神懸かり”の亜種であり、ゲーム版HVVにおいて、田鶴原様に九條愛ちゃんを引き合わせることで発生するレアイベント中のレアイベント!!
九條シリーズの寿命問題を抱えている愛ちゃんを見た田鶴原様が、それを憐れに思い選択肢を与え、その道を士気800以上の愛ちゃんが望むことでそれは成立する!
「羽衣伝説に謡われる天女の側面を持つ田鶴原様のお力で転身し、機動歩兵と同等以上の能力を発揮するようになるそれこそが! まさに今、九條シリーズであるパイセンを救える唯一の方法だった!」
「方法だった、じゃないわよ!!」
「ごふぅっ!!」
羽衣パンチで殴られる。
パイセンのこれまでの攻撃とは比較にならない衝撃に、俺はあっさり吹っ飛んだ。
「えっ!?」
「ぐふっ。さすがは、精霊合神まじかるーぷ……!」
「ちょ、名前なんて付けないで!!」
思わずサムズアップする俺を、魔法少女なパイセンの羽衣がなおも狙っている。
あれこそまさに、田鶴原様の趣……御力! 神通力!!
当然のごとく史実ルートでは全く触れられないこのイベント!
だがしかし!
愛ちゃん人気を押し上げたこのイベントを遊ばせるスタッフでは、ない!
(精霊合神まじか☆らぶは、OVA全6巻のスピンオフ作品として存在する……!)
九條愛を主人公とした本編と全く関わりのない番外譚!
平和な世界で悪さをする精霊たちを、魔法の力でお仕置きする王道魔法少女物!
「神格である田鶴原様の力をベースに、契約した精霊の力を上乗せして行なう多彩なフォームチェンジ! 愛らしさ120%のドキドキわくわくちょっとだけセクシーなスタイルで、多くのファンを魅了するそれこそが、パイセンの新たなる力だ!」
「さっきから何を言っているのよアナタはっ!」
ちなみにこの作品。
あらゆる夢と希望をその身に宿して輝くべき我が推しこと黒川めばえちゃんも登場する。
毎話毎話理不尽な目に遭う被害担当モブ役として。
ぢぐじょう゛っ!!! (出番を)ありがとうございますっ!!
でもこの扱いはゆ゛る゛さ゛ん゛っ!!
「うおおおーーーーんっ!!」
「本当になんなのよ……」
『ならばわらわからも語らねばなるまい!』
「ひゃあっ!?」
『シュウヤと出会ったのは4月の頭。あっさりとわらわの泉を見つけてやってきたこやつに聞かされた、お主の話と、未来の可能性の話』
「頭に直接声が聞こえて……!?」
『なんか面白いことないかのうって思っとったわらわに、これこれこういうアイテムを揃えたらこういうことできません? と聞いてきたシュウヤ。それ超面白いんじゃない? っと気づいたわらわ。つまりはそういうことじゃ』
「これ田鶴原様の声? って、何よその雑な話の流れ!?」
つまりは前世知識によるチート。
知ってることを伝えて、できるかどうか確認して、できるとわかったから準備した。
つまりはそういうことなのだ。
だからパイセンの仕様は、ゲーム版ではなくOVA版なのである。
『実によい仕事をしたのう、わらわ』
「本当に、お美事にございます」
「アナタたち! 何勝手に満足してるのよ!!」
愛ちゃんよりもちょっと大人なパイセンなので、衣装も少しだけ大人っぽい。
っていうか魔法少女といってもちょっと深夜枠っぽい感じになっているが、これはデザイナーである田鶴原様のご趣味なので俺に責任はない。
「何なのよこの姿はぁー!!」
パイセンが恥ずかしがってるが、それはコラテラルなので仕方がないと諦めて欲しい。
人の矮小なスケールで、神様の振る舞いを推し量ることなんてできないのだから。
だからパイセン。
本気の羽衣パンチはやめてください。
それはさすがに真正面から喰らうとシャレにならない! ゴーレムくらいは消し飛ぶ奴!!
「ぜぇっ、ぜぇっ、ぜぇ……ちっ。体力気力も回復してるどころかすべての能力が底上げされているじゃないの……!」
『ほっほっほ。わらわの力が注がれておるのじゃ、そのくらいは常々効力を発揮しようぞ』
常時強化、常時回復。
ちなみにこれ、変身解除してもちょっと残る。
マジでチート。
「強い、強いわ! 本当に強い! 私、戦えるようになってる!」
「やったぜパイセン!」
「でも私! 心は18なのよ!!!」
ボディは今日からエターナルロリゴッデスになったけどね。
「んもー! ばかっ! ばかっ! ほんっとうに、バカ!!」
その場で地団駄を踏むパイセン。
ふふっ、可愛い。
『安心せい! どこに出しても恥ずかしくない美少女魔法少女じゃぞ』
「うあ~~~~~~~っっ!!」
神様からのお墨付きまで貰って、パイセンが慟哭する。
そうやってさっきからずっと大暴れしてるけど、でも、俺は気づいてるぜ?
(パイセン。顔がにやけてる)
今、好き勝手に振る舞えるのが、楽しい。
今、思ったことを口に出せるのが、嬉しい。
そんな風な顔をして、本気の本気で大暴れしてるのが見れて、俺も楽しい。
「その見透かしたような目! 少しは反省しなさい!」
「うおおおっ!?」
教えてもないのに魔法の弾撃ってきた!!
暴れながら、成長している!?
「……もう! 終夜! アナタ、覚悟なさい!」
魔法少女なパイセンが、俺にビシッと指をさす。
「私が選んだこの道が、アナタの知ってる妹たちの輝かしい未来に繋がってるって、アナタが証明してみせるのよ!」
迷いのない瞳で、真っ直ぐに俺を見つめて。
「そのためだったら……この力だって使うし、私にできることなら、アナタに、してあげるから……」
恥ずかしくなったのか、最後はもごもごになりながら。
「だから! いいわね!?」
何がいいのかわからんままに、けれど求められてるってことだけはよくわかって。
「そりゃもちろん、望むところだ! お互いの未来のために!」
パイセンが望んでる未来は、俺の望む未来とだって重なってるから。
だから俺に、否やなんて、ない。
「これからの大活躍に期待だな、精霊合神まじかるーぷ!」
「だからその名前で呼ぶのは止めなさいっ!」
『ほっほっほ。わらわもそなたの心を通じてここから見守っておるぞ。精進せよ、まじかるーぷ?』
「~~~~っ! も~~~~~~っっ!!」
呼称も確定。
心機一転。
新たな力を手に入れて、寿命も限界突破して。
「終夜! サイコセル!」
「え? あ、はい」
前よりもっと元気に、そして頼もしくなったパイセンは。
「よし。じゃ、アンタはちゃんと反省しながら帰りなさい……“ゲートドライブ”!」
「は? あっ!」
ミョインッ。
「うおおおいパイセ~~~~ン!? 俺だけバイクかよ~~~~~!?!?!?」
『ほっほっほ。してやられたのぅ』
すっかり俺を置き去りにして、次のステージへと飛び立っていくのだった。
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ちなみに。
「終夜。私はあの力、ギリギリまで使わないから。いいわね?」
「なんで?」
「若干名、あれを見てアナタ以上に興奮して手が付けられそうにないのがいるからよ。金髪縦ロールとか変態ハッカーとか」
「……ああー」
パイセンの精霊合神は。
しばらくのあいだ、二人だけの秘密になった。
そして。
「よかった、よかったですわーーー! 巡さん! これからいっぱい着せかえしましょうね!」
「い・や・よっ!」
今回の一連の流れを経て。
「九條! 今度学内で企画しているイベントがあるんだが……」
「巡ちゃん! 今日の放課後ジョイマックスにパフェ食べに行かない? ううん、行こう!」
「巡様。お嬢様のことで少々ご相談したいお話が……」
パイセン周りの人間関係が、ちょっとだけ変化した。
「もう! 少しは気を休める時間をくれないかしらっ!」
各所に引っ張りだこにされだしたパイセンは。
でも。
「……まったく、本当に。しょうがないんだから」
前よりもっと、楽しそうな笑みを浮かべるようになったのだった。
A、現人神ですけどー?
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次回新章。
ついにあの、重要人物が登場する?!




