第47話 VSイベントは御三家同士で!
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暴走する天常さんに対して、佐々君がとった行動とは……!
天2軍学校こと、上天久佐第2軍学校。
その校舎は、戦時特例により上天久佐市の運動公園を間借りして設立された。
そこには広いグラウンドと共に大型の体育館が併設されており、緊急時には周辺市民の避難先として機能する。
屋内に有するトレーニングルームや武道場などは普段から生徒たちの訓練に用いられ、2つある会議室では小隊運営に関わる重要な会議が行われたりと、俺たちの活動を支える大事な屋台骨として活躍している。
そして今、俺がいるのは体育館の大ホール。
誰かが表彰されたり演劇の舞台になったりする、ステージの上。
そこで――。
「こんなところに呼び出して、いったいどういった了見ですの。千代麿?」
「どういったもこういったもない。ボクは今日、ここでお前に勝利する! 天常!」
天2軍学校が、隈本が誇る2大巨頭。
“教育の佐々”と“繁栄の天常”の次期当主たちが。
「あら、これは面白いことを囀りましたわね? 貴方が私に勝てるとでも? この天に輝くキララ星たる、この! 天常輝等羅にっ!!」
「勝つさ! 佐々家次期当主、日ノ本が誇る肥後もっこす、佐々千代麿がっ!」
――両雄、相穿たんと向かい合っていた。
「ねぇ、帆乃花。これはどういう状況なのかしら?」
「今は見守ろう。巡ちゃん」
「……貴方は、何か知ってる?」
「……フッ」
いい質問だ、パイセン。
「これはな、パイセン」
「えぇ」
「VSイベント、だ」
「……えぇ?」
“VSイベント”!!
それは、互いに譲れぬ何かを賭して行われる決意の戦い。
己が信念、物品、時に想い人すら賭けてぶつかり合う、小隊員同士の決闘!
ゲーム版HVVにおいて“○○を賭けて勝負”の提案を行なうことで発生し、主にアンソロジーや2次創作界隈で猛威を振るった提案行動である!!
どう猛威を振るったかは、言わなくてもわかるね?(ニッコリ)
ちなみにめばえちゃんを賭けて勝負とか言う不届きな輩がいたらコロチュ♡
マイダークライトサンクチュアリ黒川めばえちゃんは物じゃあないし、絶対不可侵領域だから。OK?(ズドンッ!)
「さぁ、勝負だ天常っ! ボクが勝ったら最近の暴走について、詳らかにしてもらうぞ!」
「受けましてよ、千代麿! 私が勝ったら貴方も私の青春に全力で付き合っていただきますわっ!」
互いに賭ける物を告げ、勝負は成立!
「戦いはこの、細川渚が見届けます。よろしいですね?」
「「異議なし!」」
共に日ノ本の未来を担う大役者たちが、今!
「では、いざ尋常に……勝負開始です!」
ぶつかり合う!!
・
・
・
「……いやだからこれ本当どういう」
「しーっ。巡ちゃん、しーっ!」
「もごごっ!?」
※ ※ ※
「さぁ! 白状してもらうぞ天常!」
「ぜぇーーったい! 嫌ですわーーーーっっ!!」
勝負は付いた。
互いのすべてを賭けた3番勝負は、2対1で佐々君が勝利を手にした。
ちなみにこの状況は、負けてなお駄々を捏ねる天常さんに佐々君がヘッドロックを掛けているところ。
ゲーム版とは違い、即座厳密に結果が適用されるわけではないらしい。
「しかし、涙なくして語れない戦いだった」
「黒木くんはどの勝負が印象深かったの? 私は一戦目の叩いて被ってジャンケンポン勝負も良かったけど、やっぱり二戦目が……」
「無駄に白熱した山手線ゲーム(隈本の特産品縛り)だったわね」
「そうそう、お互い詳しいから続いてたもんねっ!」
「俺は三戦目の褒め褒めラップバトルだな。照れた方が負けの」
「「ああー」」
勝負内容もゲーム版準拠のガチンコ殴り合いではなく、細川さん監修の健全な対決にアレンジされていた。
最後に趣味が漏れ出てた気がするが、顔を真っ赤にして戦う二人が面白かったから良し。
天2軍学校始まって以来のベストバウトと言っても過言ではないだろう。
いやぁ、いいもん見た。
「勝負はボクの勝ちだったろう! さぁ、吐けー!」
「んぎぎぎぎっ! お・こ・と・わ・り・で・す・わぁー!!」
なおも抵抗を続ける天常さんを、幼馴染特有の距離感で責めたてる佐々君。
天常さんらしからぬ未練がましさに業を煮やしたか、とうとう彼の堪忍袋の緒が切れた。
「天常っ!」
「っ!」
鋭く叱責するような呼びかけに、ビクリとこれまた珍しく、天常さんが射竦められる。
「「………」」
見つめ合う二人。
小柄な美少年の佐々君とナイスバディな天常さんが向き合う図。
(あれで付き合ってないんだよなぁ)
(あれで付き合ってないんだよねぇ)
(あれで付き合ってないのよね……)
(お三方が何を考えているのか、私には手に取るようにわかります)
その瞬間、観客の俺たちの心はひとつだった。
「天常、いいか、よく聞け。今回の勝者であるボクが問う」
状況が動く。
佐々君が本題へと踏み込む。
俺は当然、なんで青春ごっこをしているのかと彼が問いかけると思っていたのだが――。
「――どうしてボクたちに余計な気を遣う? 何を遠慮しているんだ、お前は!」
思ってたのとは違う言葉が、飛び出した。
「……へっ?」
「お前はいつもそうだ。普段はさんざん他人を巻き込んで派手に立ち振る舞うくせに、いざ本当に大事なことは自分一人でやろうとする。それでも最近は細川を頼るくらいはしていたのに、今回はまた彼女を遠ざけただろう! 学びがないぞ、学びが!」
キョトンとしている天常さんの両肩を掴んで、真っ直ぐ見つめて佐々君。
「だいたいなんだ、青春青春青春と、今更焦って何をする? じゃあ何か、ボクたちが過ごしてきたこれまでは青春ではなかったとでもいうのか?」
「それは……」
「お前が裏でこそこそ何か動いているのだってボクは知っているぞ。細川だって知っている。きっと黒木や、察しがいい奴らはわかってる。わかっていてお前の暴走に付き合っているところもあった。だがな、その中で細川を遠ざけたのだけは許さん! 彼女はお前の右腕だろうが!」
「!?」
ハッとした天常さんが、細川さんの方を向いた。
久しぶりに彼女と目を合わせた細川さんは、嬉しそうに苦笑いを浮かべていた。
「そして今となってはこのボクを遠ざけることも許さん! お前には天2入学の時にも便宜を図ってもらった恩がある。そして今日まで共に研鑽した日々は、間違いなくボクの糧となった。これまであった佐々家と天常家という大きな対立の壁が、協調の道へと変わったのをボクは感じていた!」
だから、と。
佐々君は言う。
「ボクを頼れ、天常! 何か成し遂げなければならないことがあるのなら、微力だろうが何だろうが使い倒してこそのお前だろう! いざ力が必要な時に気を遣って頼らないなど、愚の骨頂だぞ!」
「……っっ!!」
打ち付けられた言葉は。
天常さんの深いところにある何かを、正確にぶち抜いたようだった。
「あ……ぅ、その……」
呆けた様子の天常さんが、視線を俺たちの方へと向ける。
「あ、えっと……」
「………」
その視線が意味するところに返す言葉を持たない清白さんと、優しく微笑み返すだけのパイセン。
ならここは、俺の出番ってことだろう。
介錯つかまつる。
「天常さん」
「………」
「少なくともここ1ヶ月の内、今日のパイセンが一番、自然に楽しんでたぜ?」
「!? そう、そう……ですの」
俺の言葉の意味を、その明晰な頭脳でキッチリと理解した天常さんは。
「……わた、わたくしが……間違っておりましたわ……」
静かに腰砕けになって、その場にへたり込むのだった。
天常さん「シンプル殴り合いでしたら私がきっと勝ちましたわ」
佐々君「なんだと!?」
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