第45話 久遠の闇、再び。そして、新たなる青春を呼ぶ声
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楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
闇が再び、シュウヤに迫る!
夢を見ている。
俺は一人、真っ暗な闇の中を漂っている。
(お、来たか……ボエッ! クッセッッ!)
いつも通りのクソキモねっとりドロドロ闇ゾーン。
思わず変顔キメちまうほどの吐き気を催す臭いも、これまたいつも通りだ。
“少女の見る久遠の闇”イベント。
ウォーヨンユエンアイニー黒川めばえちゃんを苛む、悪しき明晰夢。
最近じゃ大体3日に1回くらいの頻度で、繰り返し俺も見るようになった。
「さーて。んじゃ、今晩もいっちょやってやるぜ!」
毎度毎度迫りくる地獄のような闇の中。
毎度毎度愛を解き放って光で砕くのを繰り返してきた。
繰り返してきた結果。
俺は、とある事実に気がついた。
『この闇、使えるんじゃね?』
と。
※ ※ ※
公式設定資料集に、曰く。
“久遠の闇とは、見た者の心を追い詰めるために作られた悪夢である”
と。
(つまりこのクソ夢は、誰かが意図して作った人工物というワケだ)
人工物。
誰かの明確な意思が介在したもの。
それゆえの明晰夢。
(ってことは、同じ意思の力で、この夢に干渉することだってできるはずだ)
ただ光を放って闇を祓うだけじゃ、足りない。
もしもどこか、この夢の中に推しが囚われているというのなら。
俺はより明確なイメージでもって、彼女を助けに行きたい。
「……推しへ参る! いや、推して参る!」
そう、俺はここでもさらなる力を、推しを迎えに行くための力を求めた。
そうした思いが高まりに高まりまくった結果。
ヴンッ!
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超常能力“精霊纏い”を行います。
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俺は、このクソ夢の中で超常能力の発動に成功した。
それどころか。
「うおおおおお! ふんっ!」
ガチャンッ! ガチャンッ!!
「よし! 今宵も我がDO-TANUKI二刀流は、血に飢えておるわ……!」
まだ持ってない装備でも、イメージの力で闇に干渉することで、好きに創造できた。
であれば当然。
「想定戦場、隈本城二の丸公園……!」
戦場も。
「GYAOOOOOM!!」
「ゴブブブブッ!」
「ピギィィィー!!」
敵も。
「オオオオオォォォォーーーーーーーーーー!!!」
精霊級だって再現可能だった。
「………!」
変幻自在、千変万化!
だったら。
やることは一つだよなぁっ!?
「さぁ、今夜も楽しもうぜ……侵略者共ぉ!」
無限沸きの敵相手に、好きな戦場・装備でバトり続ける!
最っ高の環境! 最っ高のシミュレーション!
実際ちょっとステ上がるんだよな! 起きたら! ヒャッホゥ! ボーナスだっ!!
(クソ夢の闇は無限にある! 使われて使われて、せいぜい俺の役に立て!)
このクソ夢が望むのは、俺の絶望。
だから俺を追い詰める環境を作るのにはどこまでも協力的だ!
それを利用し、俺はもっと強くなる!
「でりゃあああーーー!! めばっ……ずぇあ! ぜあっ! めばえっ!! めばえ! めばえ! めばえ! めばえぇぇぇうわぁああああああああああああああああああああああん!!! あぁああああ…ああ…あっあっー! あぁああああああ!!! めばえめばえめばえううぁわぁああああ!!! あぁクンカクンカ! クンカクンカ! スーハースーハー! スーハースーハー! いい匂いだなぁ…くんくん。んはぁっ! 黒川めばえちゃんのウェービーな黒髪をクンカクンカしたいお! クンカクンカ! あぁあ!! 間違えた! モフモフしたいお! モフモフ! モフモフ! 髪髪モフモフ! カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!」
「ピギィィィ!」
「ゴブギャアアーーーー!!」
「GIYAOーーーーーー!!!」
「グボォォォーーーーーーーー!!!」
闇は減り、俺は強くなる。
「精霊殻、騎乗! 小説版3巻のめばえちゃんかわいかったよぅ!! あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!! ふぁぁあああんんっ!! アニメも2期放送されて良かったねめばえちゃん! あぁあああああ! かわいい! めばえちゃん! かわいい! あっああぁああ! コミックス10巻以上(番外編含む)も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!! にゃああああああああん!! ぎゃああああああああ!! ぐあああああああああああ!!! コミックなんて現実じゃない!!!! あ…小説もアニメも映画もよく考えたら…め・ば・え・ちゃ・ん・は・現・実・じゃ・ない? ……にゃあああああああああああああん!! うぁああああああああああ!! そんなぁああああああ!! いやぁぁぁあああああああああ!! はぁああああああん!! 上天久佐ぁああああ!!」
「ガオオオオーーーーンッ!!」
「ブルヒヒィィィーーーーンッ!!」
「ギシャアアーーーーーー!!!」
一歩ずつ。一歩ずつ。確実に前進していく!
「この! ちきしょー! やめてやる!! 現実なんかやめ…て…え!? 見…てる? アンソロ表紙のめばえちゃんが俺を見てる? 唯一表紙を飾ったアンソロ第5巻のめばえちゃんが俺を見てるぞ! めばえちゃんが俺を見てるぞ! 恨めし顔のめばえちゃんが俺を見てるぞ!! アニメ第5話のめばえちゃんが俺に話しかけてるぞ!!! っていうか今俺がいるところがHVVの世界だぞ! よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ! いやっほぉおおおおおおおお!!! 俺にはめばえちゃんがいる!! やったよ一人(ヒーローの名前)!! ひとりでできるもん!!!」
そうして切り拓いていった先に、夢のゴールが待っている!
「うおおおおーーーーーー!! めばえめばえめばえめばえめぇばぁえぇーーーーーー!!!!」
叫ぶのだって止めはしない!
想いの強さが、心の光が。
同じ夜に迷い込む、あの子の助けになる可能性が、ほんのわずかでもある限り!
「めばえっ! マイッ! ラァァァァーーーーーーーーーーーヴッッッ!!!!」
俺にそれをしない理由など、ない!!
「ううっうぅうう!! 俺の想いよめばえへ届け!! 隈8小隊(原作小隊の名前)のめばえへ届けぇっ!!!!」
バキッ、バキッ!!
バリンッ!!
「!?」
大体敵を150体くらいぶちのめしたところで。
いつものように世界を覆っていた闇が、ガラスのように砕け散り。
「うおおおおーーーーーーー!!」
前よりももっと明るさを増した、真っ白い光の中へと俺は呑み込まれ――。
・
・
・
――ゲシッ。
「んおっ!?」
俺は目を覚ました。
見慣れない木製の天井。
俺の頬を蹴っ飛ばしている、クラスメイトの木口君の太い足(臭い)。
「んん、むにゃむにゃ。くろきぃ……」
俺の腕に絡みついている、佐々家の御曹司(美少年)。
「……おお」
そういえば、慰安旅行してるんだった。
※ ※ ※
起きて、朝食を摂ってから。
俺たちは本旅行の建前である『天久佐の壁』見学を行なった。
「これだけ堅牢に見える壁も、今年のうちに破壊されるっていうのか……」
「天常家が緊急補修をしてくれるそうだが、焼け石に水だろうな」
情報共有している佐々君の不安げな言葉に、静かに言葉を返しておく。
壊されないに越したことはない、とも言えないのが歯がゆいところだ。
(ある程度は正史の通りに進んでもらわないと、確実にめばえちゃんを助ける道筋が立たないからな)
現時点でもどこがどう影響して変わっているかわからない綱渡りのような状態だ。
それでも俺にできるのは、可能な限り有利になるよう考えながら動き続けることだけ。
(何がどう影響して、という意味なら……あれはちょっと気になるな)
昨日今日で、大きく変わったものがひとつある。
「ほら、あちらをご覧になって。巡さん」
「ん……」
天常さんと、パイセン。
二人が、一緒に行動しているのだ。
今朝がた、タマちゃんが俺のところに来て。
『ごめーん、終夜ちゃん。なんか昨日さー、二人が重要そうな話してたっぽいんだけど、録り損ねちゃった~』
と、言っていた。
多分、その時にでも何かしら二人で重要な話をして、心境の変化があったんだろう。
(あの二人、微妙に距離取り合ってたからなぁ)
同じグループで纏まることはあっても、隣り合うことはなかった。
そんな二人の急接近。
個人的には歓迎することじゃあるんだが……。
「巡さん。よろしければ壁、登ってみません? 私、掛け合いますわ! 天常の名に懸けて! 忘れられない思い出を作りましてよ!!」
天常さんがバグっている。
妙にせかせかしているというか。
パイセンに構いすぎているというか。
おかげでさっきから、後ろの細川さんがずーっとアワアワしている。
(妙なことにならなきゃいいんだがな……)
すすす、っと距離を詰めてきた佐々君から間合いを取りつつ、俺はそびえ立つ巨大な白壁を見上げる。
日ノ本を守る絶対の壁は、しかし俺の不安を解消するには毛ほどの役にも立ちそうになかった。
・
・
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そして、数日後。
「……さぁ皆様! 本日も! せ・い・しゅ・んっ! しますわよ! んのぉーっほっほっほ!!!」
天常さんは、確実におかしくなっていた。
シュウヤくんはいつも通り、お嬢様はいつもと違う。
まて次章!
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