第43話 下茂田温泉物語~男湯編~
いつも応援ありがとうございます。
感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。
楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
お風呂回です!
時間いっぱい、天久佐本島中を駆け巡り。
最後に“ゲートドライブ”で帰還を果たし、みんなと合流。
天久佐が誇る新鮮で美味しい海鮮料理に舌鼓を打ち。
お腹を満たしたところで、いざ行かん!
「露天大浴場!」
国民保養温泉地、下茂田温泉が誇る癒しの露天風呂!
『ジャンガラマルコ夢海王富士まつ ~天下の湯~』!!
ゲーム版HVVじゃ一発で体力・気力全回復&士気300上昇させるその湯の力、とくと味わわせてもらうぜ!
「はぁ~~ん! さ゛い゛こ゛う゛た゛ぁ゛~~~~!!」
味わったぜ!!
下茂田温泉物語~男湯編~ 完!!!
「待て待て黒木! 終わるなっ!」
「あぇ~?」
もうちょっとだけ、続くぜ!!
※ ※ ※
「ほら黒木、もうちょっと正気を保て」
「あぇ~~……」
湯船に浸かってドロドロに溶けている俺を、佐々君が成形する。
「これでよし、っと」
「んぁ~~……」
なんとなく形になったところで、その隣に佐々君が腰かけた。
「………」
「………」
カポーンッ。
「………」
「………」
サワサワサワ……。
「………」
……いや話さないんかーい!
(なんか話題があったから俺に寄ってきたんじゃないのかよ!)
完全整いモード入ってたのをようやっと聞く耳持った状態にしたんだが!?
話さないなら放っておいてもらいたいんだが!?
ここで回復するのを当てにして、超常能力限界いっぱい使いまくったんだが!?
うおー! パーソナルスペース内に誰かいると落ち着かない!(めばえちゃんは除く)
「……うっ。そんな目で見るな、黒木」
「………」
なんだぁ? その流し目は。
白い肌が湯の温度で温まってほのかに赤らんでいるが、長湯に耐えられるのかぁ?
あんまりモタモタしてると小柄な体がのぼせてぶっ倒れやしないかぁ?
「……何か話したいことがあるなら、言ってみたらどうだ?」
「!? そ、それは……」
ほらほらほらほらハリーハリーハリーハリー!
俺の回復のためにも用事はサクッと終わらせてくれると助かるんですがねぇ!
青い髪から雫が滴って、情感たっぷり作っちゃってまぁ。
なんか一大告白でもする空気だな。かわいいね?(美少年)
「言いにくいことなのか?」
「なっ!? ちがっ……言う、話す! 決して黒木に隠し事ややましいものなどない!」
「………」
「うぅ……」
なんか、縮こまってしまった。
下手に追い立ててもこのままじゃ埒が明かない気がする。
「六牧司令。これ、女将からの差し入れです。どうぞ……」
「ありがとう、西野君。お互い苦労が絶えないね……」
広い大浴場の中。
俺は半分くらい意識を回復へ向けながら、佐々君の言葉を待つ。
「ねぇ、知ってるかい木口? この壁の向こう……女湯なんだよ?」
「なっ!? ま、まさか、乃木坂、お前……!」
「そう、そのまさかさ!」
苦悶の表情を浮かべて思い悩んでいる彼の口からは、言葉にならない艶っぽいため息が、何度も何度も零れていく。
少しずつ少しずつ、心の準備を整えていっているのがわかる。
そして。
「……黒木。聞きたいことがあるんだ」
「うん?」
ようやく口火を切った佐々君が、俺に告げたのは――。
「……お前、このボクこそが唯一無二なんだよな?」
「え、うん。そうだが?」
――なんか、普通の質問だった。
「~~~~~~~~~~~っっ!!!!」
「???」
質問の意図がよくわからない。
佐々君は貴重な整備技能レベル4持ちの唯一無二の存在だ。
佐々家次期当主って立場も相まって、彼ほど便利で優秀な奴もいないと思う。
そんな特別オブ特別だってのをいまさら確かめて、佐々君は何がしたいんだろう?
「ぼ、ぼ、ボクがいて助かってるか?」
「助かってるな」
「ぼへっ、ぼ、ボクは必要か?」
「必要だな」
「ぼへっ、ぼへへっ、ボクのこと、好きか?」
「好き好き大好き」
「………」
ん?
急に黙ってどうし――。
「ぼへぁーーーーーーーっっ!!!」
「!?!?!?」
――ホワイ!?
佐々君が爆発した。
「あへ、はへ、あへへ……」
「うおおい、待て待て待て!」
そのまま溶けて湯船に消えていきそうになったのを、慌てて抱き上げる。
佐々君かっる! ほっそ!
でもこの抱いた感触、いい仕事してますねぇ……質実ともに磨きがかけられてるぜぇこれは。
「うえへへへへへ、くろきぃ……」
「あーあ……」
言わんこっちゃない。
完全に茹だってしまっている。
(さっきの時点ですでに言動がぐにゃぐにゃだったもんなぁ)
質問の内容も意味わかんなかったし。
真面目で厳格な佐々君のことだ。さっきの問いにも何かしらの意図があったとは思うんだが。
「す、ず、ひろ……ボクは……まへな……ひ……」
「……うーん、わからん」
いつまでもお姫様抱っこしているのは、肥後もっこすを自称する佐々君のプライド問題だ。
ひとまず俺は、近くに設置してあったビーチチェアに、彼を運ぶことにした。
「うおー! カケルちゃん、突貫します!」
「けしからん! けしからんぞ乃木坂ぁ! だが!!」
「だが! ……じゃないんだよね~、木口候補生、乃木坂候補生?」
「「げぇ、司令!!」」
「僕の仕事、これ以上増やさないでくれるかなぁ?」
「「ぎゃわー!」」
あまり揺らさないよう気をつけながら、佐々君をビーチチェアに寝かせる。
「~~~~!」
「っ! っ!」
「~~~!!!!」
女湯も、男湯も。
どっちもうるさいくらいに賑やかで、明るい雰囲気が溢れ出している。
「……入り直そ」
なんか、どっと疲れた。
俺は喧騒を離れ、一人静かに入れる隅っこに、改めて腰を落ち着ける。
「……いつか、めばえちゃん連れて来たいなぁ」
チラチラと輝き始めた星たちを見上げながら。
俺は肩まで浸かって、癒しの名湯を堪能するのだった。
つまり次回も、そういうことです。
応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!
ぜひぜひよろしくお願いします!!
(06/13追記)
一部文章につきまして思わぬ反応をいただいたので、テーマに沿ったより良いと思われる表現へと編集しました。
(編集前)
佐々君かっる! 軽い!
でも手触りガッシリ、鍛えてますねぇ。善哉善哉。
↓
(編集後)
佐々君かっる! ほっそ!
でもこの抱いた感触、いい仕事してますねぇ……質実ともに磨きがかけられてるぜぇこれは。
主人公が仲間の成長を喜ぶ大事な場面なので、これでバッチリです!




