第39話 祭りは終わり、縁が芽生える
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楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
本章エピローグ的なお話です。
「お母さーーん!!」
舞台が終わるや否や、精霊殻から大ジャンプして、母親の元へと走っていった清白さん。
6mの高さからの飛び降りに、観客たちから悲鳴が上がったが、そこは契約鎧の性能発揮で特に問題ございませんでしたことよ。
「お母さん! お母さん! おかえり!」
「うん、うん。ただいま、帆乃花!」
まさしく感動の再会。
勝利を収めたお侍様の凱旋である。
俺はコックピットのモニター越しにそれを満足げに眺めつつ、今回の出来事を思い返す。
彼女たちの背後には、やはり原作HVVとの関連があったのだ。
※ ※ ※
日ノ本超常能力秘密研究所“白の鳥籠”。
それは、幸運技能を人為的に付与された“最強の対侵略者用兵器”を育成する実験を秘密裏に行なっていた、マッドな組織。
天賦か神の気まぐれでなければ得られないとされるその力を、人の手で与えようという研究。
九條シリーズに並ぶ、HVV公式厄ネタのひとつだ。
(清白さんは、幸運4を持っていた。これが攻略の取っ掛かりだった)
レベル4というのは、特別な力だ。
(天然物の幸運4は、公式設定で日ノ本にはいないと明言されている。従って清白さんは、人工物のレベル4。つまりは白の鳥籠出身だと、俺にはすぐに分かった)
ここまではいい。
だが、問題はここからだった。
(公式設定資料集にもいなかった、幸運技能レベル4所持者。そんな彼女がなぜここに、天2軍学校にいるのか?)
これだけの逸材を、白の鳥籠が手放すはずがない。
脱走など以ての外で、万が一にも逃がしたなら、追手が差し向けられるのは当然の流れだ。
(だってのに、それが起こっていなかった。つまりこの場所で彼女は……守られていた)
清白さん自身が追手に対処していた様子はない。
であれば、間違いなく彼女は、誰かの庇護を受けてここにいる。
(確信に至るヒントは、パイセンが教えてくれた)
清白さんの保健室所属が、誰かの手引きによるものだった。
みんなの反応を見るに、それは御三家絡みでも研究所絡みでもない、誰か。
であれば、俺に心当たりがあったのだ。
(こっちは、公式設定資料集にも載ってたからな)
前世の知識が、俺に答えを導き出させてくれた。
その鍵となる情報は――公式設定資料集の年表の中に記されていた。
2019年、5月3日。
“白の鳥籠”壊滅。
巨大研究施設の突然の崩壊。
その顛末に関しては、ゲーム版HVVにおいても言及がある。
(曰く、白の鳥籠は一人の女性研究員の手によって完膚なきまでに破壊されたのだ、と)
白の鳥籠壊滅の最中、研究所から逃げ出したという少女がヒーローたちの小隊にいる。
その子(ファン呼称“兵器ちゃん”)の作中セリフから、組織の最期は割とあっさりめに語られるのだ。
組織を抜けた彼女は、私たちを救うため、最期の最期まで戦ってくれたのです、と。
そこから先の情報は、自分の足で稼いだ。
ほぼほぼ確信して動いていたのもあって、その女性の尻尾を掴むのは簡単だった。
あとは当日の夜、彼女の後をつけて。
白の鳥籠が史実通りに崩壊するのを見届けたそのあとで、コンタクトを取ったのだ。
なんか満足げに瓦礫に埋もれて死にそうだったところを引っこ抜いて。
(確かめてみれば、やっぱりこの女性こそが清白さんの庇護者だった)
俺が天2軍学校所属だと伝えると、とんでもなく驚いていた。
だがおかげで話はとんとん拍子に進んで、今日のサプライズと相成ったのである。
なんか推しの子がどうとか言ってたから、俺の推しは闇系ですと答えておいた。
(さて、厄介な連中はまだまだいるし、幸運4持ちって事実がそいつらにバレたらちょっと面倒かもしれないが、それに関しちゃ天下の御三家セキュリティで十分対応可能だ)
佐々君と天常さん、パイセンとは、祭り前日に対応を相談済。
迷わず協力を申し出てくれて一安心。頼れる仲間はみんな目がギラギラしている。
ついでにこのあと、六牧司令にも一枚噛んでもらう予定だ。
なんたって俺たちは、人類の明日を想う仲間だもんね!
得意でしょ? 高度な政治的判断と二枚舌外交!
そんなこんなで、清白親子の守りは盤石。
以降は大手を振って、好き勝手生きられるようになったのである。
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そして。
春の文化祭から3日が経った、朝のHR。
「本日から、天2軍学校特別養護教諭として働きます、清白なずなです。よろしくお願いします」
「本日から、精霊殻1番機パイロット候補生としてA組に配属されます、清白帆乃花です。よろしくお願いします!」
我らが天2軍学校は、さらなる戦力強化人事に成功する。
とはいえ。
「私たち母娘がこうしてここにいられますのは、皆さんのおかげです。本当にありがとうございます」
「お母さんと一緒に、ううん、みんなと一緒に過ごすこの場所を守るために、頑張りますっ!」
今はこうして、仲睦まじく微笑み合う親子の姿を見られることが一番だろう。
彼女たちを縛る一番大きな枷はもう、砕け散ってなくなったのだから。
(俺もいつか、めばえちゃんとあんな風に笑顔を向けあえたら……)
夢はいつでも無限大。
これからも一つひとつを積み上げて、彼女の明るい未来へ繋げていけたらと心から思う。
「えへへ……」
頬を染め、照れ笑いしながらなぜかこっちに手を振る清白さん(娘)に、軽く手を振り返し。
「……ふっ」
俺はあと少しだけ、と。
心の中のめばえちゃんメモリーを鑑賞して、幸せな空気を噛み締めるのだった。
清白帆乃花とそのお母さんが、仲間になった!
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