第36話 開催! 天2軍学校春の文化祭!
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楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
祭りだわちゃわちゃ回!
「ご覧ください! 本日5月5日、こどもの日。先日皆さんを沸かせた上天久佐第2軍学校ですが、今はお祭りムード全開です! 春の文化祭ということで、近隣住民とも連携し、学民合同の催し物が多数行われています!」
春のゴールデンウィーク中。
天2軍学校のある、元・上天久佐運動公園は大きく様変わりしていた。
「あ、すいません! 先生さんですか? TKAの和田英子です! お話うかがってもよろしいでしょうか!」
「あぁ、構わんよ。私はここの教員、揚津見八重香だ」
「ありがとうございます! では揚津見先生。今回はまたどうして、文化祭を開催することになったのですか?」
「フッ。いい質問だ。それもこれも、我が校の優秀な生徒たちが自主的に始めたことでね。地域住民との折衝や、この場の飾りつけまで、皆が積極的に準備してくれたのだ」
「それはすごいですね! 天久佐地区は日ノ本の最前線、この場所で開催されることの意義は大きいと思います」
「その通り。先日もそう遠くない地域でハーベストによる施設破壊が行われたり、危険と隣り合わせな場所だが、そんな場所で生きているからこそ、彼らは信じているのですよ。未来を。そして、守ろうとしているのです。自分たちの……青春を!」
「っ! こ、これはぜひとも詳細に放送しなければ! 貴重なご意見、ありがとうございました! 映像いったん、スタジオに返しまーす!」
事前に通達していたのもあって、メディアの人も来ている。
地元住民も大いに巻き込んだこのお祭りは、なかなかの盛り上がりを見せていた。
軍学校春の文化祭。
ゲーム版はもちろん、正史である小説版でも、アニメ版でも採用された、由緒正しきイベントである。
「シュウヤちゃんの販売展示ってどれ?」
「あれ、あそこの一角」
「えーっと、あ、アレね! ウフフ。学校に入る前くらいに、いろいろ作ってたものねぇ」
お客様として母さんも来てたので案内する。
美術技能上げの時に作った中で出来がよかったのを並べたスペースを、一緒に見て回った。
準備中に細川さんが「えっ、これ売り物なんですか? 文化財指定の展示品じゃなくて?」とか言って驚いてたけど、さすがに言い過ぎだよなぁ。
「うおっすっげぇ美人。天女かな?」
「ご存じ、ないのですか?」
そして二人で歩くその道中。
相変わらず高めに高めた母さんの魅力が、周囲に猛威を振るっていた。
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魅力:1308〔S〕
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っていうか、より磨きがかかってやべぇことになっていた。
某ハイブランドを着た悪魔ですら、即スカウトパリコレ直行ルート選ぶだろう逸材と化している。
「あれが黒木の御母堂様……美しい」
「お母さまーー! 私にもその美の秘術の一端を、ご教授くださいませー!!」
「あっ、ずるいぞ天常! ボクだってその秘術知りたい!」
ハイテンションで駆け寄ってきた御三家の二人と、あらあらまあまあ、なんて言って迎える母さんとのマッチング。
ワイワイ盛り上がりだした3人を残し、俺は別の場所を見回りに向かった。
※ ※ ※
「すごーい! 契約鎧だー!」
「うむ。さぁ少年。この腕に手をかけて……むんっ!」
「きゃー! 浮いたー!」
「はーい! クリームたっぷり翼ちゃん印のクレープ屋さんだよー! イチゴ、みかん、チョコがあるよー!」
「それぞれの味で3つもらえる?」
「まいどあり! えへへっ、お祭り楽しんでいってね!」
「お姉さん。ボクと一緒に祭りを見て回りませんか?」
「え~、でも~」
「大丈夫。情報屋カケルちゃんにすべて任せてくれれば、最高の時間をお届けするよっ」
「ヘイ、ティーチャー。フトドキモノデース」
「こらぁー! 乃木坂ぁー!!」
「ゲェーッ。よりにもよって佐藤先生! 退却ぅー!」
至る所で大盛り上がりの文化祭。
ただ展示物を眺めて回るもよし、地元民提供の屋台で食い倒れするもよし。
各々が楽しみたいように楽しんで、明るい雰囲気に包まれている。
「こうやって歩いてると、思い出すよなぁ」
俺にとって、忘れられない大切な思い出。
推しと過ごす、夢のような時間。
(めばえちゃんとの、文化祭デートイベント……!)
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『う……この雰囲気、得意、じゃ、ないわ……』
『あ、ぅ……人が多すぎる……』
『うぅ……』
スッ……。
『は、はぐれないように……手、握ってて、くれる?』
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――時よ止まれ、推しは美しい。
人混みを苦手とする彼女がそっとこっちへ手を差し伸べるあの描き下ろしこそは、まさしく世界に誇る不朽の名画だ。
(いつもと違ってほんの少し浮かれた雰囲気の彼女。こちらを直視できず、けれど頑張って見ようとして上目遣いになった瞳。振り向き様を切り取ったがゆえに、ふわりと揺れるウェービーな黒髪と制服のスカート。祭りの明色に彼女本来の暗色とのコントラストが映えて、うぐぐっ、思い出すだけで心の奥底から“ギュンッ!”ってなる!!)
こんなん見せられたらもう堪ったもんじゃないんだ。
俺はこの子のために生まれてきたんだなって自覚するのも当然ってワケよ。
美しい、これ以上の芸術作品は存在し得ないでしょう。
キミたちも、そうは思わんかね?
……あ?
建岩の姫の神秘的な笑みや愛ちゃんの満点スマイルスチルのがいい?
……テメェッ!!
それを! 言ったら! 戦争!! だろうがっっ!!!
「……ハッ! いかんいかん。妄想の中でまで掲示板の奴らと喧嘩するところだった」
「クゥ~ン」
気づけば隣に座ってたへちゃむくれの黒ワンコに、そっとフランクフルトをお供えして。
「さてさて、そろそろ本丸に向かうか」
俺は一路、プレハブ校舎の保健室へと足を向けた。
※ ※ ※
そして、今。
「グハハハハ! この地は我々鬼の一族が支配するのだぁ! ……ほら、次そっち」
「あっ! え、そ、そ、そんなことはさせませんっ!!」
「「わぁぁぁーーー!!」」
日が傾き始めた空の下。
俺は保健ちゃんと演劇をやっていた。
「どうして、どうしてこんな、ことにっ!」
「どうして? 愚問だな。すべては俺が計画し、実行し、手のひらで転がした結果だ!」
正確には。
精霊殻に乗っている保健ちゃんと、同じく精霊殻に乗った俺で、である。
「さぁ! 天2軍学校春の文化祭がお送りする一大イベント! 鬼役の黒木パイロット候補生と、武士役を務める我らが保健ちゃん、清白パイロット代理による、精霊殻伝説をモチーフにした特別演武です!」
実況する女生徒の言葉に、会場からは歓声が上がる。
「悪いが、バトル部分はアドリブだ。易々と壊れてくれるなよ? ……クックック、ハーッハッハッハ!」
「……っ!」
個人通信越しに清白さんを煽りながら、ジリジリと、俺は彼女の乗った機体へと歩み寄った。
お祭りでもシュウヤくんはいつも通り。
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