第33話 英子といっしょに語ろごたったい!
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感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。
楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
第2部、開幕です!
●LIVE
「霊子ネット越しにこんにちはっ! 4月も末。各地で咲いていた桜もすっかり葉桜が目立つようになってきました昨今、皆さんいかがお過ごしでしょうか? TKAの和田英子です!」
「いぇーい!」
「ピースピース!」
「……むんっ!」
「ワンワンッ!」
「ご覧の通り。本日はこちら、煌びやかな白の制服が眩しい天2軍学校こと、上天久佐第2軍学校に、お邪魔しています!」
「「わぁーー!!」」
「元気ですねぇ!」
「鍛えてますから」
「わっ、すごい筋肉! 触ってもいいですか?」
「どうぞ……んっ」
「ふわー! すごいっ! さすがは機動歩兵!」
「ありがとうございます」
「アタシもっ! 翼ちゃんも!」
「いぇーい! 母さん、見てるー!? カケルちゃんついにテレビデビューしちゃったよ!」
「ワンワンッ!」
「わっ、わっ。あははは! 皆さん本当に元気! ワンちゃんも元気! この元気があれば、なるほど、実戦を生き延びたのも頷けますね!」
「と、いうわけでして! 今日は今話題沸騰中の、天2軍学校の生徒さんたちから! お話をお聞きしたいと思います! 訓練生の身でありながら侵略者との実戦を経験し、妖精級を8体も倒すという大戦果を挙げた英雄候補生たちのお話に、大注目ですよ!! リアルタイムで見れない方も、アーカイブを公開しますので、ぜひともご覧になってくださいね! それでは、英子といっしょに~~?」
「「「語ろごたったい!」」」
「ワンワンッ!」
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英子といっしょに語ろごたったい!
TKA……テレビ隈本アーカイブスが誇る人気キャスター、和田英子によるバラエティ番組だ。
この和田さん。
ゲーム版HVVにおいて、大局的なイベントが発生した際のアナウンス役だったり、時折インタビューと称してヒーローたちの元へとやってきては取材を重ね、世間での評価を上げてくれるボーナスキャラである。
戦局が人類致命的劣勢になっても最前線で報道し続けるその胆力もさることながら、ゲーム的には彼女の登場=プレイヤー有利な何かが発生するというのもあって、人気が高い。
操作もできずFES対応外のキャラクターながら、人気投票最高8位と大健闘している。
彼女に関するイラストやSSが大量生産されたのもあって、ゲームは知らないけど彼女は知ってるという層すらいるほどの知名度を持った、つよつよお姉さんなのだ。
「あら、黒木さんは行きませんの? 世論向けの嘘八百は終わってますわよね?」
「結構だ。あそこは……眩しすぎる」
「……そう、そうですの。ではその分まで、この天常輝等羅が目立って参りますわぁ!!」
元気に和田さんたちのもとへと駆けていくお嬢様を見送って、俺はこの場に背を向ける。
(……俺には、そこは眩しすぎる)
大人気キャラである彼女の近くに行くなんて、俺にはできない。
彼女の前に立ったら、俺は、どうにかなってしまうかもしれないから。
そう――。
(――マイエターナルホーリーナイトクィーンめばえちゃんが、一度として人気投票で勝てなかったサブキャラを前にして、俺は自分を律せる自信がねぇ!)
我が推し。我が愛。
大人気メディアミックス作品、ハーベストハーベスターの登場人物――黒川めばえ。
世が世ならもっと人気があったに違いない、黒髪ロング陰キャ闇属性系ヒロイン。
いやまぁ人気がないってのはライバルが少ないってことで絶対に悪いってわけじゃあないんだがいやでも推しこそが最上だと世界に布教するのも単推しとしては正しくてむぐむぐ……。
……とにかく!
この最推しがいるHVV世界に転生した以上!
俺の目的は彼女の不名誉で不幸な未来を切り拓き、今日に期待できる朝を届けること!
(彼女が“踏み台型ラスボス少女”になる未来なんて、絶対に認めない!)
そのために必要なことは。
ひとつ、ネームドモブである黒木修弥に転生した俺に迫り来る、天久佐撤退戦での死の運命を乗り越え生き延びること。
ひとつ、その先の輝く未来を確実に掴み取るために、どんな不幸も跳ね除けられるくらいの力を手に入れること。
この二つだ!
(すでに人類滅びかけのこの世界においてまず、力は正義! 武力、権力、財力……なんでもいい。あればあるだけいい!!)
数多の力を鍛え、手に入れながら、推しの明るい未来に貢献する。
そのために、今できることを全力でこなす!
「……いた」
そんな俺には目下のところ。
絶対に達成すべき、重要なミッションがある。
「行くぞ!」
彼女の助けがあれば、間違いなく俺の望む未来へと近づけるという確信がある。
そんな人材の確保だ。
だから!
「うおおおおーーーーーっっ!!」
「え? あっ」
「清白帆乃花さん!」
「……っ!」
「……精霊殻1番機の、パイロットになってください!!」
頭を下げて、手を差し出して。
誠心誠意体当たりしてお願いする。
「………」
(……どうだ?)
チラッ。
と、顔を上げた俺の目に映ったのは。
「えあうおうえいあえう……!!」
言葉にならない言葉を吐きながら、何とも言えない微妙な顔をする、清白さんの姿。
「あうえいえいあえうおあいえあ……っ!」
「清白、さん?」
まるで名状しがたいヌメヌメでも踏み潰したかのような身悶え方でプルプル震え。
そして。
「~~~~~~っ! 無理!! ですっっ!! ごめんなさ~~~~~~い!!」
ぴゅーーーー!!
「あ」
脱兎のごとく、逃げられて。
バタンッ。
遠く……プレハブ別棟の保健室へと繋がるドアが。
ハッキリとした拒絶を示すかのように、激しく固く、閉じられた。
「う゛お゛あ゛あ゛あ゛あ゛~~~~~~~~~~~!!!!」
「何やってるのよ、あなた……」
「パイセェ~~~~ン!!」
「きゃあっ! 近寄らないで暑苦しい!!」
ミッション、アンコンプリート。
保健ちゃん――清白帆乃花の可能性に気づいたその日から、挑みに挑んで1週間。
「諦めん、諦めんぞ……未来のエースパイロット!」
俺は未だ、彼女の口から色よい返事をもらえずにいた。
英子さんはデカい。どことは言いませんが。それも人気の一因。
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