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第212話 時を止めた世界で

いつも応援ありがとうございます。


応援、感想、いつもいつも元気をいただいています。

どうぞ最後までご声援頂けましたら嬉しいです!


勝負は決した。その上で。


 みんな、みんな止まっている。

 空が、風が、波が……ほんのわずかな自然の音すら生み出さない。


(なんだ、ここは?)


 猛烈な違和感。

 祟りがあると言われる禁則地だとかの、いてはいけない場所にいる感覚。

 新姫神社や田鶴原様との謁見の時みたいな神聖さとは別の、無慈悲な冷たさを感じて。


「黒木終夜! 気をしっかり持ちなさい!」

「!?」


 虹姫様に叱責されて、フワッとした思考の海から無理矢理引き戻される。

 彼女は遠くに佇む白衣の男姿に戻ったルピタを睨みつけながら、この場所の説明をしてくれた。



「ここは、白の一族の技術で作られた、時と空間を現世から切り分けた異空間です! 私が展開しました! ここには私が招き入れた者しか入っていません!」


 虹姫様に言われて気づく。

 呼朝のレーダーに表示される味方の数が減っていた。


「……離れないで、めばえちゃん」

「うん」


 今ここにいるのは俺、真白君とめばえちゃん、そして――。


「――ふえ? え? え?」

「これは、高度な技術で作られた結界ですね」


 帆乃花とうちの姫様だ。



「この場に招き入れたのは怨敵ルピタ。そしてそれを打破しうる可能性を秘めた、ヒーロー候補とラスボス候補! およびそれを支える存在です!」

「!」


 ヒーロー候補と、ラスボス候補!?


「と、それを支える存在?」

『建岩の巫女と、私たちのことですね』

『ん』

「ああ! って、いやいや待て待て!」


 だとしても一人、びっくりな子がいるんだが!?



「帆乃花!」

「ふぇ!? 終夜くん!?」

「帆乃花って、マジ物のヒーローだったのか!?」

「ええええ!? どういうこと!?」


 あ、どうやら本人は知らなかったっぽい。

 俺と同じくらい動転してる。


 おかげでちょっと落ち着いた。


「清白帆乃花はヒーロー候補です。彼女こそ、天2で最終決戦が発生したとき、貴方を倒すべく配置されたヒーローなのですから」

「そう、だったのか……」


 ヒーロー候補も複数いるだろうって仮説を立てたばかりだったが、本当にいた上に、それが帆乃花だったなんて。

 いやまぁ、確かにヒーロー適正っていうか、それっぽさがすごかったけどな!?


 今なんて完全にスーパー系の女主人公みたいな感じになってるし!


「え、えと、えと、終夜君?」

「俺と帆乃花でバチバチに殺しあう世界もあったのかもなぁ」

「しみじみと酷い想像しないでー!? っていうか、その言い方だと終夜君がラスボス」

「その時は贄が手を貸しましょう」

「どっちに!?」

「……いや、むしろラスボスとヒーローだから運命の相手か?」

「へぁっ?! う、運命の相手ってぇ!?」


 ん?

 別に変なことは、言ってないよな?


「……終夜様。今のが無自覚ならば少々、軽率かと」

「えっ」

「あなたたちはもう少し、緊張感というものを持ってもらえませんか?」


 姫様に窘められあと、続けて虹姫様にも怒られた。

 いやあの一応、ちゃんとモニター越しに見てはいたんだよ? アレ。



「……ルピタ」


 ルピタは立ったまま微動だにせず、静止した世界で夜空を見上げていた。

 何かを考えてでもいるのか、それこそ奴自身も時を止めてしまったかのようにピクリとも動かないまま。


 それは、全くの無防備に見えて。


「……やっちまうか」

「やりましょう」

『好機です』


 これ幸いと、みんなで攻撃する。



 チュドドドド……!!


 突撃銃やマグナムの弾を撃ち、精霊空拳を飛ばし、容赦なく攻め立てる。

 人間サイズの敵には明らかなオーバーキル。


 この中じゃ一番優しいであろう帆乃花ですら、何か直観でも働いたのか躊躇なしである。


 が。



「……ってもまぁ、そうなるよな」


 攻撃を終えたその場に、ルピタは変わらず立っていた。

 さっきと違い姿勢も変わっているしところどころボロボロになっているから、謎のバリアとかで身を守ったワケではないらしい。


 だったらこのまま続けるかと再び俺たちが身構えると。


「……降参、降参ですよぉ」


 あろうことか奴は、ゆっくりと両手を持ち上げ、無抵抗の構えを取った。

 それからうなだれていた顔をこちらに見せると……。


「……もぅ、やめません? ほんと、意味ないじゃないですか」


 ガン萎え。

 そう一言で言いきれるような無気力な顔を晒した。


「やめやめ、おしまい! やるだけ無駄! 無駄! ハイ終了~」

「………」


 どう見ても拗ねてるガキです。

 本当にありがとうございまどうしてくれよう。



      ※      ※      ※



「九洲各地に展開させた柱はすべて倒され、“空泳ぐクジラ”も討ち果たされた。さらにはラスボスであるナイトメアも、核となった私が改良に改良を重ねて用意した六形態そのすべてを攻略され、文句の言いようもなく完敗という次第」


 呼朝から降りた俺と、虹姫様によってぐるぐる巻きにされたルピタが、恨み辛みを吐き出している。


「めばえちゃん、僕のそばから離れないで」

「うん……守って、ね?」


 同じく暗夜を降りてきた真白君とめばえちゃんは、俺たちよりもう少し離れたところで会話に参加する。

 帆乃花と姫様には豪風に乗ったまま、念のためにと突撃銃の照準をルピタに合わせてもらっている。


 姫様と虹姫様が近づくってのが、あまりよくない可能性もあるし。



「とりあえず、この縄で縛ってる限りは大丈夫だと思う、が……」


 ぐるぐる巻きに使用したのは錬金の天才オリー謹製の捕獲ロープだ。ゲームにはないアイテムだったが、いろいろと試す内に完成したすごい奴である。なにしろ捕まると超常系技能が使えなくなる。普通にヤバい。天2ではすでにいくつか量産されており、主に暴走する天2隊員(ぼうと)(ハンターとか青春モンスターとか緑の風)鎮圧のため平和的に使用されている。


「はい。こちらの鏡の力もあります。万が一にも抜け出すことはできないかと」


 そこに虹姫様が持ってきた、虚ろを映し空間ごと押さえつけたりできるなんていうトンデモアイテムの力も加わり、今のルピタはまさしく無力化されている。


 つまり、いつでも仕留められる。


(大人しくお縄になったルピタのことは要警戒だが、これはチャンスだ)


 このろくでもない愉快犯だけが持っていそうな情報を、一つでも多く吸い出してやる。

 こいつの中に隠された手札は、まだ、絶対にある。



「よし、知ってる情報を全部吐け」


 ゲシッ。


「ぎゃあああー! 全力で顔面を踏んでいる! 一切の容赦なし! 殺意しかない!」

「おっと」


 いけないいけない。

 こいつは生かしていっぱい情報を集めないといけないんだよな。


「ふっ、ふふふ。だがこれも推しからのファンサだと思えば悪くはない? いや、痛いのは好ましくないなぁ。できることならもっと親しげに私のことを認知して」


 ……でもこいつ、めばえちゃんのこと苦しめたんだよな。


 ゴッ!


「おぼぉぉーーー!!」

「あ」


 気づいたらまた顔を踏んでいた。

 いけないいけない。


「………」

「ひぁぁぁ! 無言で足を持ち上げるその動作に、一切の慈悲が見えない!」

「待つんだ黒木君! 今はまだ、話を聞かないと!」

「真白君!? くっ!」


 ゴッ!


「おぼぉぉーーー!!」

「黒木くーん!!」


 すまない真白君。

 もうしばらくのあいだだけ、俺は難聴系主人公になるよ。


「……えいっ」

「ぎゃいやーーー!!」

「黒木くぅーーーーん!!」


   ・


   ・


   ・


「やれやれ、過剰なファンサには困ったものです」


 ミノムシ状態のルピタを前に、尋問を再開する。


「……いいですか? お互いにやれることをやり切りましたし、こうなった以上は私も抵抗する意義を見出せませんのでねぇ。あとはただ、粛々と時が来るのを待つのみということで」

「時が来る?」

「この世界のキミには到底与り知らぬことだよ。真白一人」


 話の中で気になる単語を問いかけるも、会話相手として不足とばかりに不敵な笑みで返されて、真白君の表情がわずかに歪んだ。


 ただ、その単語は俺も気になるものだったから、ちょっと考えてみることにする。



(時が来る。時ってーと、あれか?)


 確か……歴史の――。


「――歴史の、収束点」

「!? ……そうそう、それだとも。さすがは黒木終夜! 歴史の真実に最も近い場所までこうもたやすく辿り着いていようとは!」


 げぇ! うっかり口にしたせいで、ルピタの奴が元気になっちまった!

 やめろ! そんな目で俺を見るな! ぶち殺したくなる!



「歴史の収束点?」

「あぁ、えっと……説明は」

「私がしましょう」


 事情を知らない真白君たちのために、虹姫様が解説してくれた。


「この世界が、歴史を繰り返している再演世界……」

「このままだと、私たちの歴史が本来の歴史を塗り替えてしまう……」

「えっとえっと。それってつまり、どうなっちゃうの!?」


 新たに告げられた世界の真実に対する反応はいろいろだ。

 ただ、そんな中でも冷静だったうちの姫様は、やっぱりというかすでに思い至ってたんだろう。

 冷たくも、芯を突いた言葉を告げる。


「今を生きる贄たちには、特に影響はありません。ですが、かつての歴史を歩んできた人たちは、その改変により様々なモノを失うことになるでしょう」

「失うって……そんな…………」

「………」


 その言葉に呆然とする帆乃花を横目に、彼女は冷たい瞳で黙り込む虹姫様を見ていた。



「この再演世界はもはや、旧歴史を上書きし得るほどに改変され、より素晴らしい形に変わった」

「ッ!」


 ルピタの口から突如として放たれた配慮のない言葉に、虹姫様が鋭い視線を向ける。

 それで彼の中の何かが満たされたのか、奴はさらに饒舌に語っていく。


「このまま行けば歴史改変は確実。新たにこの世界こそが正史となり、虹の王とその仲間たちが紡いだ歴史は食い破られ、ここにいる黒木終夜を含んだ新たな世界が、歴史を紡いでいくことでしょう!」


 赤い瞳に六芒星を浮かばせて、ルピタが笑う。

 事実、このままいけばこの世界が正史世界を塗り替えて、新世界を作っていくのだろう。


 改めて、途方もないスケールの話をされていると感じる。

 世界の変革、歴史改変。


 めばえちゃんが踏み台になる世界を変えようとしてた俺が言えたことじゃないが、世界丸ごと変えちまうなんて、とんでもない話だと思う。



「……うーん」

「黒木君?」


 でも。


「うう~~~~~ん」

「どう、したの?」


 それ、なぁ……。



「…………どうにか、できないのか?」

「!」


 ポロっと、零れた。



「……嫌、なんだよな。それ」


 口に出してみて、自覚する。

 俺の推し活センサーが、さっきからずっと鳴り響いていることに。


「……だって、正史世界あっての、IF世界だろ?」


 その結末を、受け入れちゃいけないって。



「どうせなら、さ」


 ただの思い付きを、俺は口にする。


「その元の歴史も、今の歴史も」


 ただ望んだことを、口にする。



()()()()()()()()()ってのは……ありだと思うんだよな」

「「!?」」


 それができるかできないか、まったくわからない。

 何の根拠もない。


 でも、不思議と。



「……俺、できそうな気がすんだよな。コレ」


 手はある。

 そんな、変な確信みたいなのがあった。



「……ほう!」

「……!」


 そんな俺の言葉に、二人。

 ルピタと虹姫様が表情を変えた。

最終局面に向けて、ホップステップジャンプのオンユアマーク


応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!

ぜひぜひよろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
情報を抜けるだけ抜くとか言わずにルピタは殺れる時に殺っておかないと絶対後で禍根になるやつですね。
ルピタ、マジこいついい空気ばかり吸いやがって
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