第209話 ラスボス討伐戦~伝承再演~
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ラスボス討伐戦も終盤、ここから曲が変わる奴。
「ククク、よもやよもや。この形態まで敗れるとは……いよいよ後がなくなってきたぞ」
天常さんたちの歌によりバチボコに強化された俺たち天2一同。
その力で思う存分にボッコボコにしてやった大樹のルピタが、またあの黒い泥になりながら声を発する。
問答無用と帆乃花たちがミサイルを撃ち込んだが、残念ながら効果は薄かった。
「あれは、ルピタが自らの存在の虚実を謀っているのでしょう……狂気の沙汰です」
そう語るのは虹姫様こと、別世界……それも未来の世界から来た建岩命さんだ。
(そういえば……ここには今、姫様が二人いるんだな)
俺の傍に立っている虹姫様と、豪風の複座に座っているうちの姫様。
(SF創作だと、こういうのってあんまり掘り下げない方がいいんだよな……)
タイムパラドックスだとか、ドッペルゲンガーだとか。
とにもかくにも、違う世界の自分自身との接触で碌でもないことが起こるのは常識だ。
「教えてくれてありがとうな、虹姫様!」
だから俺は、努めて大きな声を出し、彼女をそう呼ぶ。
出した声の大きさに、虹姫様はほんのわずかな時間だけキョトンとしてたが。
「えぇ。アレを倒すための準備を、私は、虹姫は今日まで重ねて参りましたので!」
すぐにその意図を察して、大きめの声で応えてくれた。
別世界の命でもなく、RRでもなく、虹姫としてのコードネーム。
優秀な俺の仲間たちは、それを聞き逃すことなく、しっかりと頭に入れてくれただろう。
「終夜」
「なんだ、巡パイセんがっ!」
グイッとベルトを掴まれ引っ張られる。
何事かと思えば、パイセンの細っこい人差し指が遠くを……ルピタを指していた。
「どうやら、準備できたみたいよ」
「お」
視線の先、そこに立っていたのは……これまでの拡大路線とは別に、小さくなった敵の姿だった。
「……ふぅー」
小さい、といってもそのサイズは精霊殻より大きな20m弱はある。
ゴキゴキと肩を鳴らしながら腕を振るその姿は、ムキムキマッチョの人間型で。
「やはり、最終形態といえば……相対する存在と縁のあるモノがよいでしょう?」
「縁? ……あ」
楽しげに語るルピタの言から、理解に至る。
それと同時に、まるでそれを見せつけたいがための演出であるかのように、敵の一部が変化する。
星屑に染まったその巨体の、額から。
「かつて、精霊殻と名を与えられた大鎧と対峙した、日ノ本最大の脅威……!!」
二本の角が、生え伸びる。
それに伴い赤黒く、それでいて光輝をまとった体色へと変化して。
ドグンッ!
そこからさらに全身の筋肉がパンプアップ!
腕とか足とか、それこそ丸太のように固く、太く、頑強さを増す。
これまでとは明らかに違う、ハッキリとした形を持った、圧が生まれる。
「……鬼」
誰かがその名を、呟いた。
「……えぇ、えぇ、えぇ!」
それを聞いたルピタが、獰猛な笑みを浮かべて宣言する。
「第六形態にして最終形態は、かつて日ノ本に最も絶望を振りまいた存在の形! 鬼! これより始まるは再演世界の最終戦! 神楽の如く、舞いましょう!」
月夜に、最大最古の怪物が吠える。
「さぁ……鬼たる我に勝てる者なし! 異を唱えるなら見事、我が角、手折ってみせよ!!」
「……しゃらくせぇっ!」
精霊殻の鬼退治。
かつての伝説を謳う再演儀式の台詞を合図に……俺たちの決戦は始まった!
※ ※ ※
「はぁーいっ! それじゃダメージチェック、いっくよー!」
初手、先陣を切ったのは。
「精霊弾装填! 狙いをつけて……バァンッ!」
我らが狙撃手、鏑木翼。
超遠距離からスナイパーライフルで、寸分違わず鬼となったルピタの胸を撃ち抜く!
天常さんの歌による強化も込みで、安全圏からの大火力による一撃だ。
相手の強さを測るうえでこれ以上ない選別役である。
チュゥンッ!
「げっ!」
「……ふっ」
放たれた弾丸は、確かに狙い通りにヒットした。
しかし、弾を穿たれたはずのルピタの胸部には、ほんの僅かなへこみと擦れたような痕が残るだけで、とても、有効打を与えたとは言い難い結果だけが残った。
「刺突系は効果薄! 斬撃、打撃チェック!」
「応っ!」
「支援飛ばすわよ!」
即座に木口君が動く。
併せて俺と、巡パイセンが戦列に加わった。
「強化!」
黄の差し色の羽衣が舞い、契約鎧の俺と木口君を強化する。
「黒木! 斬撃は任せた!」
「了解! どっせぇぇぇぇい!!」
小回りが利く機動歩兵の利点を使い二手に分かれ、左から木口君、右から俺の布陣。
青い燐光をまとった木口君の精霊拳と、俺のDO-TANUKI・Mk-Ⅲがほぼほぼ同時にルピタの腹と角を打つ!!
……がっ!
「むぅっ!」
「マジかっ!?」
木口君のこぶしが、俺の刃が。
神懸かりの加護を得た一撃が、防御を無視してダメージを与えるはずの一刀が。
その装甲を……ぶち抜けない!
「こんなものかい? 天2独立機動しょうたぁいっ!!」
「ぬぁぁ!」
「おあああっ!!」
丸太のような剛腕が振るわれる。
とっさに流れに身を任せたが、振り抜かれた腕が起こした旋風で、俺の体は宙を舞い、吹き飛ばされる。
「フッ」
「!?」
刹那に過ぎる嫌な予感に、とっさに刀を前に出す。
ゴッ!
「ぬ、あっ!!」
不可視の衝撃。
否、精霊空拳もどきとでも言うべき圧縮された力の波動の直撃に。
「うおおおおおああああ!?!?」
俺の体はさらにそこから、数10m吹っ飛んだ。
「ゲ、ハッ!」
体勢を立て直すこともできず、無様に地面を転がる。
DO-TANUKI・Mk-Ⅲは俺の手を離れ……というか先の衝撃でへし折れ、壊されていた。
「うおおおお! 黒木ぃぃ!!」
さらに追撃されそうだった俺を、敵の懐で踏みとどまっていた木口君がフォローしてくれた。
こちらに狙いをつけた手の二の腕を飛び上がって殴り、その矛先を逸らさせて。
喰らっていたら、ちょっとシャレにならなかったかもしれない。
「角を折ったら、いいんだよねぇ!?」
戦いの流れは止まらない。
その次の瞬間には、隠密状態で距離を詰めていた乃木坂君が姿を現すと同時に、ルピタの頭部へ例の特殊な手榴弾を放り投げる。
爆ぜたときに強力な精霊の反応があったことから、なんらかの付与を受けた特殊なアイテムだ。
それが確かに、奴の角を巻き込んで炸裂した……はずなのに。
「ざぁんねんでしたぁ!」
その角にはヒビ一つすら入らず、健在。
それどころか一切の怯みすら起こさなかったルピタが、馬鹿にするように大口を開けて舌を出し……。
「…………は?」
直後。
その背中から3本目の腕を生やし、背面の死角を取っていたはずの乃木坂君を強打した。
嫌な音がして、吹き飛んだ乃木坂君が、受け身もできずに地面を転がった。
「………」
「カケルちゃん!?」
「乃木坂ぁーーーー!!」
倒れたまま動かず沈黙する乃木坂君に、鏑木さんと木口君が叫ぶ。
そんな一瞬の動揺を、ルピタは見逃さない。
「避けてっ!!」
「ちっ!! おおおおおっ!!」
狙われたのは、木口君。
寸で気づいた巡パイセンの叫びでとっさに防御姿勢をとった、が。
「ぐ、ぎっ……」
防いだ腕に、いくつもの刃を生やしたルピタの膝が“開新”の装甲を貫き深々と突き立っていた。
「……ふふふっ。元来鬼とは形なき畏れの現象でもありました。変幻自在はお家芸ですよ?」
「っ!!!」
雑に足を振るい、木口君を転がして。
生やした手や膝の刃を収納し、ルピタは自らの体を掻き抱き、またあの気持ち悪いくねくねをし始める。
益荒男めいた見た目から行われる意図して惰弱な振る舞いは、この場の誰より悪辣で、俺たちの不快感を煽り立てた。
「あぁ! あぁ! 堪らないっ! これが最終決戦! これがラスボスという役割の味わい! 圧倒的強さで敵を蹂躙し、場を支配し、思う存分に弄ぶということ! 今日まで頑張って準備を重ねた私へのご褒美として、十分な濃さが堪能できる!」
顔を赤らめ、荒く息を吐く。
目は血走り、歓喜に震える体は無駄に腰をヘコつかせて。
「望外の喜び! 望外の快感! これぞ、神の思し召しというものかっ!!」
あのクソ野郎は、今がまさに人生の絶頂だって言わんばかりに昂りきっていた。
「………」
俺を含めたその場の誰もが、その姿にドン引きだった。
理解できない、理解したくない。
だが同時に、あれがそう振る舞えるほどの優位を与えてしまっているのも事実だった。
「解析完了、データ提供ありがとうございます。虹姫様」
「いいえ。どうかお役に立ててください。建岩の姫様、そして、天2のヒーローさん」
ただ一機だけ。
『再演算完了! 限界突破駆動、開始!』
「うんうん! いっくよぉぉー!!」
そんなの関係ねぇとばかりに、次の手を打つ豪い風を除いて。
※ ※ ※
「自信をもってください、清白さん。この中では一番、貴女の攻撃こそが通りやすい」
「うん、ありがとう! 虹姫様!」
激しい攻防が繰り広げられているその裏で。
豪風に触れた虹姫から、あの鬼を倒すための策を、帆乃花と命の二人は受け取る。
「まだちょっと半信半疑だけど、終夜君が信じてる虹姫様の言葉だからね!」
「大丈夫ですよ帆乃花。贄も保証します。アレがそう言うのなら、そこに理はあるのだと」
「命ちゃん? 虹姫様アレって呼んじゃダメだと思うよ?!」
契約精霊のサザンカが、提供された情報を元に再計算を開始して。
そのほんの僅かな時間を使って、帆乃花と命は呼吸を揃える。
「私はヒーロー。みんなのヒーロー! 世界を、大好きな人を守る!」
「……参りましょう」
併せて敵の情報を解析していた命がそれを終えるのと、サザンカの再演算が完了したのはほぼ同じタイミングで。
豪風が、全身から緑の燐光を迸らせて、限界を超える!
「ミサイルマルチロック、オールフォーワンキリング! 全弾標的捕捉!」
『全ミサイル精霊弾化完了! ブッ放セェー!』
「コマンド入力! S・O・M・L!! スピリット・オブ・ミラージュランチ!」
瞬間。
豪風の両肩に取り付けられた多弾倉ミサイルが展開。さらにその周囲に幻想のミサイル弾倉が拡張展開、拡張展開、拡張展開!
「クジラ殺しの一発、お見舞いしてあげるっ!」
ヒーローの号令と共に、無尽もかくやのミサイルが、雨あられと放たれる!!
「む、これは……!」
「いっけぇぇぇぇーーーーー!!」
狂喜乱舞していたルピタの元へ、ロックオンした必殺弾が押し寄せる!
『お嬢様っ!』
『ぶちかませぇー! ですわぁぁーーーー!!』
精霊たちを鼓舞する声が、さらにその威力を高めては。
チュドドドドドッ!!
その爆発で鬼の全身を包み込み、さらには周囲を破壊して、白煙の中へと呑み下す。
「やった! 決まった!」
「さすがに……これなら……!」
負傷した駆と猛を庇い、治療していた翼と巡が歓声を上げる、が。
「……ま、そういう隠し玉くらいは、あるよな?」
この場で誰よりもあの男の悪辣さと用意周到さを疑わない男だけは。
目の前の現実を目の当たりにしても、動揺しなかった。
「……ふぅ、あぶないあぶない」
それは、鬼を包み込むにはあまりにもファンシーな膜。
ぷるんぷるんと揺れながら、表面にわずかな虹の濁りを伴うそれは……シャボンのようで。
「そんな……!? それは……!!」
「えぇ、えぇ。再現するのには骨が折れましたが、自らの身を削り命を張って繰り返し検証した甲斐がありました」
驚愕するのは虹の姫君。
彼女は、目の前で起こった現象の正体について知っていた。
「……幻実防御結界!?」
「はい。ご明察です。内と外を別つ白の空間制御能力と、世界を侵食する赤の略奪能力のコラボレーション。あなた方“虹”が未だ実験中の新技術。ここに成ってございます」
絶望が、世界を染め――。
「そんなものは僕たちが……!」
「打ち砕く、わ……!」
バキンッ!
「あ?」
――なかった。
次回、奴らのターン!
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