第194話 天2へようこそ真白君!
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特急配達黒木便。
奥分。
「え、これって……?」
精霊殻“明星”のパイロット、真白一人は困惑していた。
戸惑いながらもゴーレムを一体縦に割き、機体を前へと、倒すべき目標へと近づける。
「シャギャアアアアッ!」
行く手を遮るべく夕空から急降下して迫る、精霊級ハーベスト“ワイバーン”。
喰らえば致命傷必至な脚爪による攻撃を放たんと、明星に向かい大きく翼を広げる空の怪異は、しかし……その一撃を通せない。
「シャグアアアッ!!」
直後、ワイバーンは断末魔を挙げて仰け反り、塵となりつつ落下する。
その身はまさしくハチの巣にされたと言ってよい程に、数多の弾丸に打ち貫かれていた。
こと、それを為したのは。
「敵ワイバーン撃墜! KP5ぉ!」
「よっしゃああ!!」
精霊殻“無頼”を駆る、日ノ本軍の奥分防衛隊の面々。
「え、え? どういうこと? なんで?」
真白一人は困惑していた。
どうして自分は“彼らの助力を受けているのだろうか”と。
軍に属さず秘密裏に、世界の危機と戦ってきた。
その代償として自分は、彼ら国軍にとっての危険分子とされていたはず。
『マシロヒトリ』
その問いに、彼と契約している精霊スズランが答える。
『…………これが今の、貴方の所属です』
「え? ……なっ?!」
彼女がモニターに表示したのは、軍名簿。
そこには顔写真こそ載ってなかったが、真白一人の情報が記載されていた。
「“上天久佐第2独立機動小隊所属特務隊員”……真白一人百剣長!!?」
『どうやら天2の天才ハッカーが情報を書き換え、私たちを味方だとラベリングしたようです』
「えーーっ!?」
突然の軍属。突然の味方扱い。突然の……憧れの部隊への所属。
数多の驚きに彼の指は滑り、明星の突撃銃は2体撃ち抜くはずだった敵を3体撃ち抜いてしまった。
「これっていったい……もしかして、めばえちゃんが」
『おそらくですがそれはないかと。どちらかと言えばこの手の無法は……マシロヒトリ!』
「!? 何か来る!! って、えぁ!?」
驚きに浸る間もなく、明星のセンサーが急接近する何者かをモニターに示す。
そこに表示された識別と名前に一人が再び目を見開いた……ときにはもう。
ソレは、あの日と同じように明星の肩に貼りついている。
「会いたかったぜぇ、まぁぁしぃろくぅ~~~~~~ん!!」
「……黒木君っ!!」
戦闘中にも拘らず、一人は明星のハッチを開いて出迎える。
「ひとり、くんっ!」
「めばえちゃん!」
「俺たちのヒーローへ。キミのヒロインをお届けに上がったぜ!」
黒川めばえを小脇に抱え、黒木終夜は会心の笑顔を浮かべていた。
※ ※ ※
めばえちゃんを真白君にシュートして、俺たちは周囲のハーベストを殲滅しながらお喋りを始めた。
間近で黒い明星の活躍を見ながら共闘するシチュ、何気にやりたかったからテンション上がるぜ。
「気づいたら僕、君たちと同じ天2所属になってたよ」
「マジで!?」
軽く状況把握させてもらいながら、真白君とのトークタイムを楽しむ。
ってか真白君うちの所属になったの!? うわっ、マジだ!
「タマちゃんさっすが、いい仕事するじゃん」
どうりで奥分防衛隊の皆さんが、バリバリ後方支援に回ってくれてるわけだ。
なんか俺が登場してからさらに気合入ってるみたいだし、意外となんらかバフでも載ったか?
だったら……。
「ねぇ、どうして黒木君はめばえちゃんと一緒だったの?」
考え事してたら、ふいに真白君に尋ねられた。
言葉のニュアンスに、ほんの少しだけ……俺でなきゃ見逃しちゃいそうなくらいの湿度を感じた。
「あー……それは」
「騙されてた私を、黒木君が救ってくれたの」
「めばえちゃん?」
「聞いて、一人君。おじさまは……怜王おじさまは、もう。亡くなってしまったわ」
明星の中で真白君にお姫様抱っこされてるめばえちゃんが、言い淀む俺の代わりに声を出してくれた。しかも、言いにくいだろう明日葉さんのことについても、迷いなく口にして。
っていうかめばえちゃん。
俺の告白前後から、なんか喋り方ハキハキしてない? 覚醒した?
なんにせよ、キリッとしてるめばえちゃんも綺麗だね。
「それって、どういう……?」
「ここしばらく連絡が取れなかったそのあいだに、赤の一族になりかわられてしまったの」
それからめばえちゃんは、驚くほど手短に、そして自分のやらかしも含めて誠実に、何があったのかを語った。
それを聞いた真白君は腕を伸ばしてきたイフリートをマグナムぶっぱで蹴散らしながら、先行入力して作った時間で、めばえちゃんのことをぎゅっと抱きしめた。
「そっか。大変、だったね。キミが背負ったその罪、僕も一緒に償うよ。ボクたちは共犯者……だからね」
「ん……ごめんなさい。ありがとう」
優しい言葉。温かなやり取り。
二人の世界。
「………」
そして、ネットリンカー越しの俺。
(……てぇてぇって気持ちと一緒に、脳みそが破壊されてくこの気持ち……まさしく愛だ! 愛ったら愛だ!! 俺がそう決めた!)
ぐふぅっ。
推しが幸せならって言いたいけど、今はまだちょっとダメージあるな。
……ちょっと、そこらへんのドラゴン八つ裂きにしてくる!
・
・
・
「ただいま!」
「おかえり」
「おかえりなさい」
時間にして数分。
ドラゴンとついでに何匹か精霊級のハーベストを狩ってから戻ってくると、何やらスッキリした顔の二人に出迎えられた。
二人してちょっと顔が赤くて、どこかよそよそしい感じ。
「あの、黒木君」
「はい」
「僕たち、付き合うことになりました」
「勇気を出して、告白、した、わ」
「………」
……ッスゥー。
……………………。
「……幸せにおなりなさい」
「黒木君が仏様みたいな顔になってる!?」
エンダァァァァァァッッ!!
推しと推しが、爆速で付き合うことになりました。
俺の左手は、無意識のうちにサムズアップの形を取っていた。
「……幸せにおなりなさい」
「黒木君!? 大丈夫!? 黒木君!?!?」
きっと、心は泣いてたと思うけど。
それくらいは許して欲しかった。
終夜「覚醒した乙女って、マジ強いね」(遠い目)
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