第168話 告白
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視点、終夜に戻ってエピローグです。
夏場の昼は確かに長いが、それでも夜はやってくる。
「ふぃー! 何とか揃えられたな!」
月明かりが照らす中。
天2の寮の入り口脇で、俺は今日一日で用意できた成果を前に、汗を拭っていた。
「オリーのためのアトリエ道具一式。最上級錬金鍋に、神秘の混ぜ棒、各種宝石類に練習用の素材もいろいろ。俺の家に残してた錬金用のアイテムも全部持ってきたが、俺が使うよりもオリーが使ってくれた方が絶対いいし、出し惜しみはなしだよな?」
集めに集めた大量の錬金アイテムは、これからさぞ有効活用されるに違いない。
なにしろ相手は錬金技能レベル4、製造系技能のレベル4だ。
(製造系技能はレベル4の領域になると、異界技術に手が届く)
異界技術。すなわち六色世界の技術だ。
天2でいえば情報4のタマちゃんが作った超プログラムの数々や、赤い霧が濃くても稼働する超小型ドローンがそれになる。
クスノキ女史は間違いなく開発4で、その力を借りて“明星”は“呼朝”になった。
(錬金技能レベル4……設定資料集に載ってたあれも作れるしこれも作れる、さらにはきっと、俺の知らない未知のアイテムだって作れるはず!)
あぁ、今からでも心が躍る!
何年も愛したゲームの、その奥にある深淵にまた近づくことができる!
しかも今、大きな戦いは起こりえない!
空泳ぐクジラ? あんなん“飛燕”に乗って速攻でずんばらりよぉ!
「姫様が、アトリエの設営は明日にも始まりますって言ってたからな。そそるぜぇ、こいつぁ!」
技術革新に思わずじゅるっと舌なめずりしていたら。
ヴォンッ!
「お」
誰かが“ゲートドライブ”でやってき……うおいデカいなコレ!?
「っ、しゅ、終夜? なんでここに……!?」
「こんばんは。終夜様」
「やっほー、終夜ちゃーん」
「おおー! 複数人転移、完成したんだな!」
開いた穴からぞろぞろと出てくる天2女子ーズを前にして、俺は以前姫様が言ってた“ユナイトセル”の完成を知った。
「こんばんは、黒木終夜」
「こんばんは! めばえちゃあばばばばばば!!」
私服のめばえちゃんんぎゃわわわわわ! あばばばば!!! ありがとうございます!!
やばいやばいやばい意識を逸らせ脳が震える!!
「あばぶぶぶぶ……ごほん。いいねぇ。ますます便利になってきた!」
「はい。これによってさらに終夜様の行動の幅が広がるかと」
「実際とても便利ですわね。これはぜひとも量産せねば」
「はい、お嬢様」
「Wow! これ私の道具? すごいすごーい!」
とたんに華やぐ寮の玄関。
ぶっちゃけ、天2の女子はレベルが高い。魅力の訓練は各々任せなのに、みんなしっかり磨いてる。
だからかいい匂いもするしここは芸能界かってレベルで美が溢れてる。
まぁ、たとえ現実の魅力がランクBでも、俺にとってはめばえちゃんこそがOWだけどな!
最近のめばえちゃんってば魅力が伸びてきて推せすぎて直視できないし!
あとでオリーかタマちゃんに写真撮ってきてもらえないか交渉しよう。
今はこの、錬金道具一式を寮で倉庫代わりにしてる空き部屋に持って行かねば。
そう思い身を屈めた……その時だった。
「……ふぅ。よし、よし。…………黒木君!」
「ん?」
呼びかけられて、振り返る。
俺のすぐ後ろ、見上げた先には清白さんが立っていた。
「何か用事か? 清白さ」
「好きです!」
………ん?
「え?」
「……好きです。黒木君」
真っ直ぐ。
俺を見つめた清白さんが、そう言った。
胸の前。
左手首を右手でぎゅっと握って立ち尽くし。
唇をきゅっと、緊張に閉じて。
目元をグッと、にじませて。
「……私、清白帆乃花は」
真っ直ぐ、真っ直ぐ。
頬を染めて、真剣に。
「黒木終夜君のことが、恋してるって意味で、好きです」
疑いようのない言葉で、俺に気持ちをぶっつける。
「「~~~~!?!?」」
突然の出来事に、周りの天2女子たちも騒然としていて。
誰も予想してなかった行動なんだと俺にも理解できて。
「……ぉぁ?」
俺はヤンキー座りしながら錬金鍋へと伸ばしていた手を、引いて。
少しだけ、考えてから口を――。
「――ってことで! これからは終夜君って呼ぶね! またね終夜君おやすみなさい!!」
ぴゅーーーーー!!
「………」
口を開くより先に、言うだけ言った清白さんが、いなくなってしまった。
「「………」」
落ちる沈黙。
遠くでセミの鳴く声が、いやに大きく響いて。
「……はっ?」
ようやっと、何を言われたのかを理解した俺は。
「!?!?」
全身がカッと、熱くなったのを感じた。
「な、な、な! なんてこったにゃぁーーーーーー!?!?!?」
「ほのちゃーーーーーーーーーんっ!?」
「What a wonderful~~!!」
「「………」」
この日。
俺は前世含めて人生で初めて……現実の女の子から告白された。
これもまた、ひとつの大戦の幕あけかもしれない。
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