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第166話 輝等羅様は掘り下げたい!~天2女子による恋愛頭脳戦?~

いつも応援ありがとうございます。


感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。

楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。

誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。


青春パートだと強い女、天常輝等羅。

良くも悪くもやらかす女、天常輝等羅。

天常グループの未来は明るい。


「――私、天常輝等羅は…………()()()()()()が、大変気になっておりますわーーー!!」

「「…………は?」」


 高らかに宣言された、お嬢のその一言で。

 カラオケルーム……もとい、天2女子会会場は、一瞬で戦場へと変わってしまった。


(ちょいちょいちょいちょーーーーい! お嬢~~~~~!! 何言ってくれちゃってるのさ~~~~~~~~!?!?)


 硬直する天2女子sに対し、自分は大画面ディスプレイの前でやり切ったとばかりにドヤ顔してるお嬢。

 比べてアタシは今まさに、とてつもない大嵐の中に放り込まれたような気分だった。



(……っていうか、そこは千代麿君じゃないの!? みんなそう思ってたよ!?!?)


 同じ御三家同士っていうしがらみこそあるけどさ!

 その辺はお嬢や千代麿君の剛腕でドカーンって解決して結ばれるところじゃないの?!


「「……っ」」


 ほらー!

 みんなもそう思ってるから動揺しまくってるじゃん!


 隠れ身まで使って話題から逃げようとしてた巡パイセンがワナワナしてるし!

 タマちゃんとかガチで「面白くなってきたにゃぁ!」って目を光らせてるじゃん!!


 お嬢! とんでもない爆弾投げたの自覚して!



「えぇーーー!? 輝等羅ちゃん黒木君のことが好きなの!?」


 ナ~イス、ほのちゃん!!

 場の空気に飲まれて誰も言えずにいたことを一番にストレートに聞いてくれたぁ!


 さすがは黒木終夜大好きクラブ! 隠さない大好きの清白帆乃花!


「気になるって、そういうことだよね!? ねっ!?」

「フフフ。落ち着きなさいな帆乃花さん。確かに私は、黒木終夜のことを高く評価し、お慕い申しておりますわ!」

(わ、わぁ……っ)


 言った。言い切った。

 お慕い申しておりますって言い切っちゃった!


 お嬢、それはマジのマジでマジな奴――。



「――アレとの子供を一人くらい産んでおくのは、天常家……ひいては日ノ本の未来のためにも非常に有益であると確信しておりますわぁーーーーー!」



 ………。

 ………………。


 …………OK。もうちょっっっと詳しく話を聞かせてもらおっか?



      ※      ※      ※



「こ、恋というのは難しいものですわね……」

「まだまだこれからですよ。お嬢様」

「そうそうお嬢、ちょっと世間と常識が違っただけだから、ドンマイ」


 部屋の隅に体育座りしてるお嬢を、私とナギちゃんで慰める。


 先に結論から言っちゃうと。

 お嬢の恋愛観は、だいぶ尖りまくってたね。


「いやぁ、家の継続を真面目に考えなきゃいけないところってすごいッスねぇ」

「一妻多夫……じゃなくて、多夫多妻制?」

「まったくもう。優秀な外の血を入れるためにあれこれするなんて、前時代的な発想よ」

「……(こくこくこく)」

「だねぇ。Eccentricすぎだよ!」


 天常家の繁栄のため、これだと思った相手の血を取り入れる。

 個人の恋愛観っていうより……家のしきたり的なノリの奴。


 候補として終夜君はもちろん、たけポン、モモちゃんまで名前が挙がった。


「このご時世、未来に繋ぐ可能性は多ければ多いと思っておりましたのに……」

「いやぁ~。それにしてもちょっと無法が過ぎるって、お嬢~」

「産めや増やせやは国是ですわぁ~……」

「………」


 ……男子にはちょ~~っと聞かせられないなぁ、これ。

 この暴力としか言えない美貌からのウェルカムメンタル……ど~んな勘違いが生まれるやら。


 “繁栄の天常”怖いなぁ~。

 いや、ナギちゃん見てる限りこれはお嬢個人の考えか。お嬢ヤッバ~……!



「っていうか、お嬢」

「なんですの?」


 そういえば、と。

 気になったことをお嬢に聞いてみる。


「さっき名前出した中に千代麿君がいなかったけどさ、やっぱり家同士のしがらみとか大変なの?」

「いいえ? 昔ならばいざ知らず、今、天常家と佐々家とのあいだにそのような壁はございませんわ。むしろ協調路線はこれからさらに強めていく予定でしてよ?」

「なら結婚するの?」

「そう、ですわね……」


 ゆっくりと、深く考え込むような仕草を始めるお嬢の言葉を待つ。

 しっかり聞き耳を立ててる天2女子sの誰かが、ゴクリと息を呑む音が聞こえた。



「……アレが。千代麿がこの私に特大のプロポーズでもしてくるのでしたら、考えなくはありませんことよ!」

「「………」」


 アタシたちはゆっくりと、ナギちゃんに視線を集める。

 彼女は静かに肩をすくませると「処置なしです」と首を左右に振った。


「私と千代麿……家格は並びますし、能力も申し分なし。であれば、あとはあ・ち・ら・が! 頭を下げて懇願すれば、私も受け入れる可能性がなくもないと思っておりましてよ! オーッホッホッホ!」

「……はぁ」


 お嬢さぁ。

 それがもう、答えじゃん!


 とっとと気づけ! 自分の気持ちに!!

 ごちそうさまっ!!



      ※      ※      ※



「……さぁ! 気を取り直してコ・イ・バ・ナ! 続けて参りますわよー!」


 高笑いを挟んだからか、復活したお嬢が再び音頭を取って、改めてこの場を支配する。


「私自身で語れるものは、開示いたしましたわ! もはや逃しはしませんわよ!」


 しかも無敵モードに入っちゃってて、琥珀色の目がギラリと光っているからもう止まらない。


「さぁ、次はどなたにお話を伺いましょうか!」


 その瞳が、次のターゲットを探してギョロめく。



(ふむふむ……ナギちゃんはお嬢の脇に待機してすまし顔、タマちゃんはお嬢と同じでずっとワクワクしっぱなし、めばめばは落ち着かない様子で周囲をキョロキョロしてて、オリーは落ち着いてめばめばの肩に触れて微笑んでる、パイセンは無……)


 対して、他の天2女子sの反応は様々だ。

 中でも巡パイセンの虚無顔がちょっと面白い。ひたすらに存在感を消そうとしてて逆に目立ってる奴。


 構わないでオーラ出してるけど周りからしてみれば一番狙いやすくなってる……けど。


「ふっふーん、ですわっ!」


 お嬢はそれを、あえて泳がせている。


(……正直、わかる!)


 あそこまであからさまというか隠せてないのは、むしろあとに取っておきたいよね!

 みんなが話して逃げ場がなくなったところで、一番目立つ形で開示させたいよね!


 メインディッシュには、まだ早い。

 っていうか、一喜一憂してるパイセンが可愛いから、そこも踏まえてスルーでしょ!



(……なんか、ちょっと面白くなってきたかも)


 アタシに飛び火しても、正直、面白みがない答えになるの確定なんだよね。

 っていうか、お嬢にはもう聞かせてるっていうか。


(いずれ年収1000万以上の一般天常家所属のいい人を紹介してって、おねだり済み!)


 実質裏家業は廃業済だし、表舞台に立って目立ちたいわけでもないし。

 アタシとしてはいい人を見繕ってその人のもとで左団扇がしたいワケ。


 だから戦後にいい人を紹介してもらって、愛を育みながら生きていく予定なのよね。


(お嬢の紹介なら下手な人は来ないし、未来は安定。それこそこの中じゃ一番お・と・な!)


 いつだったか黒木君に粉かけたこともあったけど、今は成立しなくて良かったって心から思ってる。

 あそこで撤退したおかげで、今の天2の泥沼に、巻き込まれずに済んだんだからさ!



(天2の泥沼……そう、それは黒木君を中心とした人間関係!!)


 史上3人目のハーベストハーベスター、緑の風、人類の希望……自他ともに認める人類最強のエースオブエース。

 そんな彼を慕う子は、世間一般老若男女の人気を抜きにしても、非常に多い。


(天2女子sにおいても、彼に明確な恋心を抱いている子は相当数存在する……!)


 見ればわかるレベルから、仄かに想いを抱いてそうな子に至るまで。

 各種取り揃えていますってくらいに、想われまくってる!


 本人がガチで謎のめばえちゃん単推しやってるから表面上は平和だけど、いつ崩れてもおかしくないパワーバランスになっているとアタシは思っている。


(アタシが把握している限りで確定“黒”は既に3人……ほのちゃんとパイセン、そして姫様)


 若干1名「それ、恋?」みたいな姫様がいるけど。

 アレはなんていうか……恋愛じゃなくて、崇拝? いや、一言じゃ言い切れない複雑で激重な感情がのってる気がする。



「恋バナかぁ……私初めてだなぁ」

「いや、巡さんに何度も相談してたって聞いてるッスよ?」

「あっ! あれは相談! 相談だから!!」


 わかりやすいのはほのちゃんだ。

 まぁ、この子は元が素直でストレートな子だし、惚れ込んだら一直線だよね。

 好きな人に並べる自分になろうと頑張ってるいい子だよ。


 っていうかアタシ的に注目してるのはむしろ……ひふみんの方だったり。

 ほのちゃんほどじゃあないんだけど、矢印立ってそうな気配があるんだよね。


 ただ……。


「ほーんと、頑張らないとダメッスよ。雪姫様?」

「もー!」


 ……うん。

 アレは触れたらダメな奴。アレは間違いなく……地雷だ。


 燻ってるけど折り合いはつけてるから今は触れないで系の地雷だ。

 ハッキリとそうだとは言えないけど、触らぬ神に何とやらって奴だよ絶対に!



「……それでは一二三さん! 貴女の恋バナを聞かせてくださいまし!」

(って、お嬢~~~~~~~~~~~~!?!?)


 おじょっ!? お嬢~~~~~~っっ!?!?

 何やってんのさ~~~~~~~!!


「へぇ……了解ッス」


 あ゛ーーほらもうっ! ひふみんの目が鋭くなったー!!

 なんか空気がしっとりしてきてるってぇ!!


 変なスイッチ入ってるじゃん絶対~~!!



「……って言っても、ここにきてまだまだッスし、施設にいた頃はそういう色恋とか縁遠かったんで、ウチから話せることってないんスよ」

「あらそうでしたの。じゃあ仕方ないですわね」


 …………セ~~~~~フ!!

 ひふみん側が理性的でよかった~~~~~!!


「申し訳ないッス。あ、“LOVEドキッ”の十皇寺(じゅうおうじ)くんとか好みッス」

「いいですわよね十皇寺くん! 傍若無人でありつつも見るべきはちゃんと見ていて!」

「そうッスそうッス。7巻の使い捨て恋人なのがマジでもったいなかったッス」


 和やかにスルー! お見事!

 でもその高身長スレンダーボディから滲み出る“これ以上触れるな”オーラは隠してね!



      ※      ※      ※



「……なかなか楽しいですね。恋バナといいますのは」

「これを純粋に楽しめてる姫様はすごいよ、本当にさぁ……」


 やいのやいのと恋バナを続けるアタシたち。

 こんな状況にも拘らず隣でマイペースにポテトをパクつく姫様の言葉に、アタシはがっくりと肩を落とす。


『ま、まぁ。その……隠すつもりはないと言いますか、バレバレと言いますか……うん、私、黒木君が好き』

『強いて言うならチヨマロ様だけど、Illicit loveになるから……ねぇ?』

『にゃははっ、わたしが好きなのは確かに終夜ちゃんだけど、そういうLOVEとは違うかな~? だからそんなに怖い目でガン見しないで欲しいなぁ~~……え、詳しく? いやぁ……』

『お嬢様に仕えることこそが、私の望みですので。今はまだ、そのような些事に心を向けられません』


 あれからアタシも含めてポンポンと指定されては答えるといった流れを繰り返し、アタシたちの恋愛事情は開示されていった。

 それらの聞き役に回った姫様は、終始楽しげに薄っすらと微笑んでいて。


「恋。深く強い感情の発露。アレは病と聞きましたが、なるほど。恋をしていると自覚していらっしゃる方とそうでない方、あるいはそれをひた隠しにしようとなさる方では趣が違いますね」

「ぶふっ。なーんでそれをそのまま口に出しちゃうかな?!」


 たまにグループに向けて喋ったかと思えば、こういうのばっかり投げて遊んでるの!!

 この姫様、ちょっと胆力がありすぎ!


 アタシの心臓はもうずっとバックバックいってるのに!

 面白いけど、面白いけど心臓に悪いよこれ!!

 


「さぁさぁ、盛り上がってまいりましたわね! 次は……!」


 場の熱量を知ってか知らずか、我らがお嬢もテンションを上げて次の獲物を狙いだす。

 といっても、パイセンにはまだ踏み込まない……となれば。


 天2の女子会、その恋バナは――。



「――めばえさん。そろそろ心の準備はよろしくて?」

「!!」



 この流れを作ることになった原因。

 最近、明らかに雰囲気が変わっためばめばに向かうのは、必然だった。

余談ですがパイセンこれで自分の気持ちだいたい隠せてるつもりですってよ。


応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!

ぜひぜひよろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
>「まったくもう。優秀な外の血を入れるためにあれこれするなんて、前時代的な発想よ」  原作だと自力繁殖の能力が無くてクローン培養みたいに殖やすホムンクルス達ばかりで、最後の唯一残っている人間が姫だけ…
ここでめばえちゃんで盛り上がって最後にパイセンの流れですね!
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