第165話 開催! 天2女子会!(終夜はお休み)
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本章は内容が内容なので、終夜君視点はしばしお休みです。
代わりに別のハベベさん視点でお送りします。
天2小隊の一斉休暇日。
アタシこと、上天久佐第2独立機動小隊所属の機動歩兵――鏑木翼は、今。
「私の歌を、お聞きなさ~~~い!!」
「お嬢様ーーーーっ!!」
「ねぇねぇ一二三ちゃん! 次は何歌う?」
「そッスねぇ。ウチ、あんまレパートリーないッスから……」
「めばえ、あなた体は冷やしてない? 一応ブランケット持ってきてるけど使う?」
「だ、だ……大丈夫……」
「No problem! こうやってぎゅーってしたら温かいよ! えいっ」
「へぁっ!? な、なにを……っ」
「あ、じゃあわたしもー! ぎゅー!」
「~~~~っ!!」
「お二人とも、めばえ様が茹でダコになっておられますよ。ほどほどに」
「……命。できれば巻き添えにされてる私にも言及してくれると、ありがたいのだけど?」
「………」
天2女子会という名の、カオス空間に巻き込まれていた。
(まさかの天2主要女子9割参加。いつも利用してる大部屋が今日は本気で狭く感じるねぇ~)
仕事も遊びも全力投球の天2に所属する私たちは、休みが合うときはよく連れ立って行動をする。
SUNぱーる上天久佐で買い食いしたり、すぐ近くの温泉施設で天然の塩泉を満喫したり。
今日みたいにカラオケに出かけるのだって、もう両手で数えるより多くこなしてるよ。
ただ。
(まさかの一斉休暇で天2女子ほぼほぼ全員集合が達成されるなんてねぇ~。翼ちゃんの予想をはるかに越えてきちゃったってワケ)
最近じゃみんなそれぞれの立場も重くなってきて、作戦行動以外で揃って何かをやる機会はほぼほぼなくなってたんだけど。
こうして改めて集まってみると、そのとんでもなさに驚かされる。
(天常家会頭にその従者、建岩の姫に現人神。白の鳥籠の元兵器たちに霊子ネットの支配者、緑の風の寵愛を受ける一流呪術師。そしてついさっき判明した……英国特産、天才魔女の卵。控えめに言ってもヤバすぎじゃない?)
こう、ただの元・フリーエージェント(現・天常家所属)ってだけのアタシがこんな普通に混じってていい空間なのか、ドア傍で立ってなきゃいけないんじゃないかとか思っちゃうよね!
「天2の皆様いつもご利用ありがとうございます! 追加のお飲み物お持ちしましたー!」
「待っていましたわ! ささ、皆様それぞれグラスを手に取りあそばせ!」
「どうぞ、どうぞ」
各々頼んだジュースが届けば、店員さんからお盆を引き継いだナギちゃんが手際良くみんなに配っていく。
アタシも頼んでたメロンソーダを受け取ると、一瞬だけ目が合う。
「……大丈夫ですよ、翼様。ここは、そうした常識の通じる場所ではありませんから」
「……たはは」
優しい微笑み。
しれっと内心を見透かされてて、アタシは苦笑した。
「さぁ、改めまして乾杯といたしましょう! 本日の慶事、オリーさんの才能開花に!」
「「「乾杯っ!」」」
何もかもが常識外れの天2の女子たち。
姦しいなんてものじゃない、ワチャワチャがデフォルトなアタシたちの女子会は。
「んっ、んっ、ぷはー! しゅわしゅわするー!」
まだまだ、クライマックスには程遠いのだ!
※ ※ ※
「知ってる? メロンソーダってメロン使ってないんだってさ」
「そうなんですの!? 我が家でいただいたメロンソーダは確かにメロン味でしたわよ?」
「お嬢様。一般的には翼様のおっしゃる通り、果汁を含まない風味を再現した物になります」
「そうなんですの!?」
お歌の時間はしばらくお休み。
今はのんびり雑談タイム。
ディスプレイに向かって左右に二つ、向かいに一つのソファ席。
左側の長いソファに背もたれている、アタシの隣はお嬢。その向こう側にナギちゃんだ。
「むむむ。ポテト……Lサイズを頼むかLLサイズを頼むか……」
「どうせみんなが摘まんですぐに消えるんスから、LLサイズ二皿くらいでいいんじゃないッスかね?」
ナギちゃんの隣、ドアに近い、ディスプレイの向かいのソファ席にほのちゃんとひふみん。
「はちみつジュースって喉にいいらしいけど、あっまぁー!」
「HAHAHA! 甘いよね。でも飲み慣れちゃうと、今度はその濃さに、病みつきになっちゃうよ」
「もきゅもきゅもきゅ」
「んっ……んっ……」
「……オリー。タピオカ飲んでるパイセンとめばえちゃん、可愛すぎない?」
「……YES.これ、カメラにとってもいいかな? かな?」
右側のソファに並んでるのがドア手前からタマちゃん、巡パイセンとめばめば、そしてオリー。
っていうかめばめばがタピオカ飲んでるところ初めて見た。いつもカフェオレなのに。
「……めばえ様は、少し変わられましたね」
「姫様」
アタシの隣、お嬢とは反対側に座る姫様が、アタシの視線に気づいて話しかけてきた。
一呼吸、大阿蘇産のミネラルウォーターをストローで飲んで喉を潤して、姫様の落ち着いたよく通る声がアタシに向けられる。
「以前は……自らの世界に籠り、他者へと目を向けることは稀に思えたのですが。ここ数ヶ月で劇的に視野を広げられたように思います」
「へぇー。確かに、最近のめばめばは落ち着いてるっていうか、余裕あるよね」
今もタマちゃんとオリーに絡まれてるけど、そこにギクシャクした感じはない。
当たり強めな二人に流されてはいるけど、それを自分から受け入れられている。
無駄に喋ろうとしないし、無駄に身構えないし、無駄に心を晒してもいない。
「……改めて見ると、けっこー前と変わってるね」
「はい。以前とは比にならないほど、とても魅力的になっておられます」
フムフム。
ステータスチェック!
おお、魅力ランクがBになってる!
見る人が見ればどっぷり惚れ込んじゃうくらいには魅力的!
ちなみにアタシの魅力はA! Sに行かないように調整は完璧!
この空間にはSSSとかEXがゴロゴロいるから、相対的に没個性!
「大きな戦いがないと、身だしなみとか整える余裕が出てくるよねぇ」
「それもございましょうが、めばえ様にはきっと、良い出会いがあったのだと思います」
「え? どゆこと?」
「端的に申し上げますと、身だしなみを整えたい理由が彼女にできた……のかと」
「え……!」
まさか……!!
「それって――!」
「はい。きっと――」
ガタッ!!
思わず立ち上がって、声に出す。
「――恋してるのっ!?!?」
「――皆様との交流がいい刺激に……はい?」
「え? あっ……」
気づけば周りの視線が、アタシに集中していて。
「恋?」
ちょっとの沈黙のあと、誰かが怪訝な声を出した。
※ ※ ※
(……やらかした~~~~~~~~~~~~~!!!)
地雷を踏んだ。
天2の恋バナとかどう考えても厄ネタでしかないじゃん!!
それなりに把握してるつもりだけど、アタシの知ってる限り拗れてる奴しかいない!!
あぁもうすでにパイセンが警戒モード入って隠れ身使おうとしてるし!!
(一番健全なカップルがケーマ君&まぁやちゃんな時点で……アカン奴!!)
踏めば踏むほどカオスが増す地雷じゃん!
何やってんだアタシ!!
「あ、えっと、その。今のはちょっとちがくて……」
すぐに何でもないって言おうとしたけど……。
「……恋、ですって?」
「あ゛っ」
こういうのに一番乗りしそうで、させちゃいけない筆頭が……反応してしまった。
「……ふっ。ふふふっ」
肩を震わせ、お嬢が笑う。
金髪縦ロールがフルフル揺れて、いつ出したのか彼女の手には豪奢な扇子が握られて。
「……よろしくてよ。よろしくてよよろしくてよっ!! 恋っ!!!」
しょんぼり座ったアタシに入れ替わるようにして立ち上がる。
自然と彼女に集まる視線に満足げに頷いて。
「恋! 青春に付き物の偉大なる一要素! よい機会です。ここはひとつ……天2女子の恋事情! 詳らかにいたしましてよーーーーーーーーーーー!!!」
(あ゛あ゛~~~~~~~~~~~~!!!)
絶対碌なことにならない宣言を聞いて。
隣のアタシは頭を抱える。
((何してくれてるの!?))
って刺してくる何人かの視線に、アタシは心の中でごめんって謝った。
「さぁ、言い出しっぺは私ですし。宣言しますわ!」
わざわざディスプレイの前に立ち、小隊一位のビックバストを大いに揺らしてお嬢が言う。
(まぁ、お嬢は安牌っていうか……誰の目にも明らかっていうか)
あの人しかいないでしょ。
って、きっとみんなが同じ人物を頭に浮かべていたと思う。
でも――。
「――私、天常輝等羅は…………黒木終夜さんが、大変気になっておりますわーーー!!」
「「…………は?」」
その一言で、弛緩していた部屋の空気に刹那で緊張が走るのを、アタシは肌で感じた。
「えっ?」
パイセンの“隠れ身”が解けてたから、間違いない。
その時、天2女子会メンツに戦慄が奔った……!
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