表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
154/226

第154話 少女たちの英雄譚・後編

いつも応援ありがとうございます。


感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。

楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。

誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。


少女たちの亜神級退治物語、決着の時!


 人と、機械と、精霊と。

 3つの心を束ねて行なう超ド級の連携技――限界突破駆動(システム・オーバード)


 呼朝の活躍を見てから、豪風にもそれはインストールされていて。

 けれどまともに扱うためには私も命ちゃんもどちらも、豪風も、そしてサザンカちゃんも体力・気力が足りなくて。



「帆乃花様!?」

「命ちゃん! 今からちょっと、無茶しよう!」


 結局のところ。

 弱い私はまた、彼女に迷惑をかけるわけだけど。


「いったい何を……?」

「あのね、命ちゃん……()()()()()()()()()()()()()()()

「……!!」



 なんとなく、できる気がした。


『あとは、貴女たち次第で未来は変わります』


 どうしてか、あの人の言葉を思い出して。



「大丈夫、私を信じて!」


 18回目の爆撃対応。

 残りのミサイルパックの数、1。

 

「!! ………………わかり、ましたっ!」

「サザンカちゃんも、それでいい?」

『是非モナシ』

「よーしっ!!」


 全会一致。

 心は一つ、あいつに勝つ!



(大丈夫! ちょっと力を束ねる人の部分が、二人分になるだけだから!)


 束ねる心が3から4に変わるだけ。

 もしも何かの不具合があるなら、そこはぜーんぶ、私が受ける!



「……行くよ! 重層同期再リンク! 私と、命ちゃん、まとめて接続!」

「重層同期、再リンク……! 大阿蘇様、どうかご加護を……!」

『限界突破駆動……開始します!』


 すべての準備が整った!

 私は意識を集中し、来るだろう衝撃に備え――。



(――え?)



 爆ぜた。



      ※      ※      ※



「!?」


 次の瞬間には、もう。


(あ、れ……?)


 こころも、からだも。

 ぜんぶが、ばらばら、ばらばらに……。


(……帆乃花様)

(あっ)


 重なる心の内側から、命ちゃんの声が聞こえた。


 ぐっ、と。

 一気に私が私を取り戻していくのを感じた。



(帆乃花様。貴女はこの期に及んで、勘違いをしていらっしゃいます)


 いつも聞いてる優しい声音で、命ちゃんが言葉を紡ぐ。


(え? え?)

(私が終夜様と並び立つなど、烏滸がましいにもほどがあります。あの方は誰よりも先を行き、いずれは世界を救う真の救世主なのですから。私などは彼に使い潰される、ただの道具に過ぎないのです)

(え、ええ~!?)


 心が重なっているからか、命ちゃんの言葉が本当だって、ハッキリと分かってしまう。

 衝撃の告白に、私は何が何やら驚くしかなくて。


(私はそれでいいのです。それが至上の悦びなのです。そのために、この身のすべては使うと決めて、そして今日までそう在り続けております。つまり、貴女は私に何も気負う必要などないのです。すべては私の選択であり、私がそうなるよう仕向けているのですから)

(命ちゃん……でも、それは……)


 嘘じゃないのはわかるけど。

 その優しい言葉に、全部を委ねちゃいけないと思った。



(それは、私の意志じゃない)

(………)


 そう、そこには私の意志がない。

 だから、言うべき言葉は……こうだ。


(たとえ命ちゃんが心からそう思っていたとしても、私は気負うよ。命ちゃんの時間を奪っているのも、黒木くんに追いつけてないのも、どっちも事実だから)

(帆乃花様……)

(だからね、命ちゃん。私はこれからももっともっと頑張る。もっと強くなるし、もっと命ちゃんの役に立てるようにもなる。そう、黒木くんと並んで、守りたいって決めたのは……他でもない私自身だから。そのために必要だと思ってやったこと、その結果も、責任も、私自身の選択だから、全部背負って前に進むよ)


 それが、私が私であるために必要なことだから。

 そうじゃなきゃ、私は私のやりたいことを楽しめない。生きられない。



(強くなりたい。守りたい。青春したい。恋もしたいし友情もしたい。思いつくことはなんだってしたい。だって私は……自由だから!)


 私の大好きな人が、それを教えてくれたから。

 自由でいい、好きにしていいって言ってくれたから。


(私ね……黒木くんと一緒に、世界を救いたい!)


 私も命ちゃんと同じ、私の意志で、黒木くんのために戦いたい。 

 彼だけに任せるなんて絶対にしない。私も一緒に、成し遂げたい! 



(だからごめんね。命ちゃん。きっとこれからも私は命ちゃんに迷惑かけると思うけど……自分勝手だけど……これからも、力をいっぱい貸してください。その分、ううん、それ以上、もっともっと命ちゃんのしたいこと、私も応援するから!)


 そのために、私はこれからもやれることを、やりたいことをやっていく。


 それが、それこそが。

 今の私が悩んで、泣いて、だからどうしたって打ち出した答え。


 心が重なっている今なら、きっと間違いなく命ちゃんに伝わった……はず。



(……なるほど。であれば、一つだけ)

(なぁに、命ちゃん)



()()()()()()()()()()()()

(え?)

(あの方に足りないのは、それだけなので)



 命ちゃんから返ってきたのは、不思議なお願い事だった。


 ヒーロー。

 きっとここで言われている意味は、一夜志基地で語られた……真白一人君のこと、のはず。


 でも。



(……わかった。私、なるよ。ヒーローに!)


 私は受け入れる。

 だって私がヒーローになれたら、命ちゃんも、黒木くんも喜んでくれるって思えたから。



(ありがとうございます。帆乃花様)

(あっ、それ!)

(?)

(私のことは、帆乃花でいいよ! なんだろ、これからはそう呼んでもらった方が嬉しい気がする)

(そうですか? では、そのように……帆乃花)

(うん!)


 不思議な感覚。

 命ちゃんにそう呼ばれたら、いつも以上に力が出せる気がする。


 彼女と心が近づいたって思えば思うほど、私の中の何かが熱く燃え上がってくる。

 出来損ないな私でも、何かができるって信じられるような気がしてくるの。



(あぁ、それです)

(?)

(その“出来損ない”というのは、いったいどなたの定義なのでしょうか? 今、私のパートナーを務められるのは、貴女をおいて他にはいないのですよ? 人類の希望、ハーベストハーベスターの勲章所持者にして、豪風のメインパイロット。私の持ち得ぬ幸運4という特別な才覚を持つ人。あなたを出来損ないと評する者がいるとすれば、それはきっと、()()()()です)

(……あはっ!)


 あれ、本当だ。

 私のどこが、出来損ないなんだろう?


 そう定められた運命なんて、とっくに変えてしまっているのに。



(さぁ、そろそろ参りましょう。決戦の舞台へ)

(うん!)

(大丈夫。何かあれば私が支えます……貴女は、貴女の舞踏を、思いのままに)

(うん、お願い!)


 心地よく重なった心が、抱えきれないほどの勇気に変わる。

 今の私たちなら、なんだってできそうな気がする。


(……あれっ。そういえば命ちゃん。自分のこと私って言ってるね? そっち素なの?)

(……終夜様には秘密ですよ?)


 意識が離れる。

 心の世界から現実の世界へ、引っ張られるようにして還っていく。


 私たちの戦いが、始まる……!



      ※      ※      ※



『――再リンク完了。限界突破駆動、フィードバック分散設定完了、制限時間1分半です』

「!!」


 長い長い夢を見ていたような感覚から、一気に覚醒する。


「わっ……!」


 瞬間。

 溢れ出す力は自分の限界なんて軽く飛び越えていて。


 すべてが鮮明に、私の全部がこれまでと何もかも違っていて……!


「命ちゃん!」

「聞こえています。……行けますね?」

「うん!」


 前よりも命ちゃんを感じる。青く燃え盛る心が、とっても綺麗。

 前よりもサザンカちゃんを感じる。へぇ、サザンカちゃんってそんな形なんだ。


(あ……うん。大丈夫、聞こえてるよ……!)


 前より豪風を感じる。一緒に行こうって、言ってくれてる!




「~♪ ……?」


 私たちの変化を、相手も認識したみたい。

 すぐに虫羽根をひるがえして、上空から私たちの方へと向き合う。


 だけど。



「遅いよ」

『パイロットによるエネルギー供給確認、ミサイルの精霊弾化……及び、エッ、これハ……!?』

「……サザンカ! そのままプログラムを走らせなさい!」


 展開する。

 相手がフェアリーを呼び出し爆弾に変えるよりも早く。

 肩に広がるミサイル弾倉を、もっと広く、もっとたくさん、たくさん、たくさん!


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



「コマンド入力! S・O・M・L!」



 Sprit of Mirage Launch.


 左右上下に拡張された空ろの弾倉に、装填するのは超常の弾頭。

 魂を込めて作りだした、蜃気楼のように揺らめく、幻想のミサイル弾!


「いっけぇぇーーーーーー!!!」


 咆哮とともに、オーベロンに大量の幻想のミサイルを発射して!



「ギ、キィィィッ!!!」


 先手を取られたオーベロンが、フェアリーたちを盾に使って受け止める!!


 爆発。炸裂。


「「ピギィィィィ……!!」」


 幻のミサイルは、けれど確かに実態を穿ち、消し飛ばす!


「……ニィ♪」


 でも、それは本命である偽りの王までは届かない!

 所詮は弱者の悪足掻き、弾数無限の己の勝利は揺るがない……そんな悪辣な笑顔が浮かぶ。



「……だから、どうしたっっ!!」



 追加でコマンド入力する。


 入力するのはホンの――2ステップ。


 Mと、I。


 たったそれだけで、私たちの勝ちは確定する。



「M・L・M・I。()()()()()()()()、成立!」

「照準変わらず、合っています」

『姿勢制御、問題なし』


 今さっき撃ち出したのは、幻想の弾。幻のミサイル。


 つまり、私たち最後の切り札は、まだ豪風の肩にある……!!



「ギッ!?」

「私たちの攻撃は、止まらないよっ!!」


 そして今。

 間髪入れずに撃ち放つ、最後のマルチロックミサイル!


 フェアリーの盾も作らせない、最速の一斉射!



「70発の必中弾! ぜーんぶ、もってけぇ~~~~~~~~!!」


 19回目の打ち合いは。

 私たちが圧倒的に早く、そして、一方的に撃ちきった。



「ギギィッ?! ~♪」


 とっさに聞こえた小さな歌声は、でも。


 ドドドドドドドドッ!!!


「~~~~~~~~~~っ!!!」


 直後に炸裂する大量のミサイルが起こした爆音に紛れて途切れ、聞こえなくなった。


   ・


   ・


   ・


 煙が晴れ、空には昼の青空が広がって。


『……オーベロン、消失を確認。幽世の門の反応なし。完全に撃破しました』


 サザンカちゃんから伝えられた事実に。


「命ちゃん……!」

「帆乃花……!」


 顔を見合わせた私たちは、完全にシンクロして頷き合い。


「私たちの……」

「贄たちの……」


「「大っ勝っ利ぃ~~~~~!」」


 まったく同時に両手を挙げて、勝利の万歳を決めたのだった。

SOML 射程:1~6 射撃 EN消費90 必要気力130・システムオーバード中限定

※パイロットの組み合わせによってカットインと掛け合いが変わります。また、トドメ演出時には追加のミサイルがぶち込まれます。


応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!

ぜひぜひよろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
気合でミサイルを生み出すとは流石に予想できなかったようですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ