第147話 目指すべき場所
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運命の邂逅を経て、終夜は……。
一夜志基地、朝。
作戦総司令執務室。
「あー、こほん」
わざとらしい咳を一回。
執務机に肘を置き、顔の前で手を組んだ格好の六牧司令の視線が俺たちを見る。
今ここに集まっているのは天2の主要メンバーだ。
俺、めばえちゃん、佐々君、天常さん、姫様、パイセン、清白さん、瓶兆さん。
木口君、鏑木さん、乃木坂君、細川さん、タマちゃん、オリー。
いわゆる古株の戦士&整備士の面々である。
それに加えて他薦と自主的不参加を認めた結果、西野君は不参加、瓶兆さんは清白さんと姫様推薦、めばえちゃんは――。
「――わ、私も……参加させて?」
「はいよろこんで!!!」
誰あろう俺の推薦で、この場に参加することになった。
(あのめばえちゃんが自主的に作戦行動に関わろうとするなんて嬉しすぎるっ!)
って気持ちが9割だが、それとは別に今日の話の内容が、めばえちゃんの後々を考えても重要だから知っておいて欲しかったって打算も少しだけ入っている。
なぜならば。
今からここで語られるのは……世界の真実について、なのだから。
(ってなわけで。ここに集った錚々たるメンバーは、今から新たなステージに巻き込まれてもらいます)
世界の真実を語る会。
これが何の集まりなのかを知っているのは俺と姫様、そしてタマちゃん。
「……はぁ~~~」
んで、六牧準霊師殿。
あの様子だと、事前に話す内容はもう聞かされてるっぽいね。
でもまぁ、それはしょうがない。
「……大作戦開始前に、こうして皆様にお集まりいただいたのには、理由がございます」
なにしろ今日の語り部は。
彼の上司の上司である……我らが建岩の姫様、建岩命なのだから。
「聞いていただきたい、そして、これより先の戦いにおいて、覚悟していただきたいことがあるのです」
今日の彼女はいつもと違う、白地に白で文様が刻まれた、特別な装束を身にまとっていた。
神道神職において白地白紋は、上位かつ特別な地位にいる者のみが着ることを許される柄だ。
「本日皆様にお話ししますのは……世界のとある、真実についてです」
つまりは、これから語られる話が“神秘の建岩”……その最高位の者による公的な言葉なのだと示すため。
大神大阿蘇“建岩龍命”に仕えし巫女が、それだけの用意をする必要のある話をするのだという意思表示である。
自然と、この場の誰もが等しく緊張に包まれた。
「この世界には……より上位の、別の世界が存在しています。その名も……六色世界」
皆の視線を一身に受けながら、静々とした所作で姫様は語る。
「我々が今もって戦い続ける侵略者たちは、その六色世界から送られてきた存在なのです」
微動だにしない赤いエアインテークの長髪には、神気をまとう金の髪飾りが彩を添えていた。
※ ※ ※
「この戦争を裏で手引きする上位存在……か」
「白の一族と赤の一族……にわかには、信じられませんわね」
「ですが真実にございます。事実として建岩は白の一族の方を長年保護し、その知恵を借りて今日まで過ごしてまいりました」
語り、次々に浮かぶ疑問の声に、姫様は律義に答えていく。
「じゃあさー、アタシたちがどれだけ頑張っても、最後はそのラスボスとヒーローが決着つけないと意味ないの?」
「いいえ。あくまで世界が滅亡し、その世界から資産価値が失われないようにするための取り決めとして、ラスボスとヒーローによる決着という法が彼らによって敷かれているだけです」
「つまり……直接的な決着、ハーベストと人類の戦いが普通に付く分には問題ないのね?」
「はい。侵略の将である赤の一族を打倒し得れば、後は物量戦を乗り切ることで人類はこの世界を守り切ることができたといえるでしょう」
「だが、その後に再度の侵略がないとは言えないんじゃないか?」
「はい。それにつきましては建岩の保護する白の一族、新姫様が……」
質疑応答の形で続くやり取りを、俺とタマちゃん、六牧司令で見守る。
と。
そんな俺の端末に、ポンッと、タマちゃんからの個人メールが届いた。
『終夜ちゃん。これいつから知ってたの?』
「………」
こっちを恐る恐る見つめているタマちゃんに、六牧司令も何が行われているのか察したらしく、視線をこちらへ向けてくる。
明らかに、“ずっと前から知ってたよね?”と言わんばかりの疑いのまなざしだ。
「………」
ポチポチカチャカチャ、ターン!
これみよがしにキーボード打ちしてメッセージを作り、送信。
二人して俺のメールを確認し。
「「!?」」
その内容と俺の顔を何度も繰り返し見返して。
「「絶対嘘じゃん」」
“目覚めたときから”と送ったメッセージに、まったく同時にツッコミを入れてきた。
「あそこだけ盛り上がっているが、つまりは既知組か。なんだか少しだけ、妬けるぞ」
「……細川、可能な限り裏を取りなさい。可能ならばハーベストハーベスターの伝説の流布を軸にして時系列を追って、ですわよ」
「はい、お嬢様」
「はぁ~、これ、本当だとしても気軽に公表とかできない奴だよねぇ」
「そもそも信じてもらえない奴じゃないッスかね?」
「Wow! 世界の真実は、コートームケイ、だよ!」
「………」
姫様のお話も区切りがついたのか、反応もさまざま起き始めている。
ただ、さすがは“神秘の建岩”ブランド。誰も彼もが信じられないと言いながら、実際のところはこの情報をどうやって呑み込むかにみんな尽力している。
あの姫様が、ここまでやって伝えた情報を疑う奴はいなかった。
(これで上位存在、六色世界やヒーローとラスボスについての認識は深まった、よな)
この状況。
こうなるように仕向けたのはもちろん俺だ。
(姫様伝いに世界を狙う上位存在のことを知ってもらい、それらの脅威を認識してもらいたかった……ここまでで、第一段階)
ここから先は、俺のターン。
俺たちが本当に目指すべき場所を、みんなに伝える時間だ。
「……みんな、聞いてくれ。昨日の晩、俺は司令から許可もらって神子島に威力偵察に行ってきた」
「事後承諾だったけどね」
「そこでみんなも聞いたかもしれない、噂の謎の黒い精霊殻と接触し、パイロットとコンタクトを取ることに成功したんだ」
「……!」
噂についてはさすがにみんな知ってたようで、俺の言葉に一気に場が引き締まる。
「パイロットの名は真白一人。彼こそがこの世界を救う本物のヒーローだ」
「なん……だって!?」
「本当ですの!?」
「はい。新姫様曰く彼こそが、ラスボスとの最終決戦に臨む人類の希望である、と」
「真白一人……本物の、ヒーロー……」
本気衣装姫様からの援護射撃で、真白一人の存在が一気に格上げされていく。
そこに被せるように、俺は言葉を紡いだ。
「だが残念なことに、彼は今、赤い服をまとった謎の女によって誘導を受けている。そいつの名前はRR。出会い頭に俺を殺そうとして、その先で、さらなる殺戮を企てている存在だった」
「「!?!?」」
「このままじゃ真白君は、俺たちのヒーローは、赤い女の先兵にされちまう」
「「………」」
沈黙が下りる。
誰もが俺の次の言葉を待っている。
この状況が欲しかった。
「……だから、俺は提案する。真白一人奪還計画を!」
天2独立機動小隊だからこそできる、ビッグオーダー。
「俺たちにとって神子島地区奪還なんてのは前哨戦に過ぎない。そんな雑魚戦は蹂躙して、本当にやらなきゃいけない……希望の未来を手に入れるために絶対に必要な、ヒーローを取り戻す!」
これは、ただの戦争じゃない。
どれだけ荒唐無稽であっても、終わらせるための特別なピースが求められる戦いだ。
そのピースを逃すことなく手に入れなけりゃ、推しの幸せに辿り着けない。
「赤い女は間違いなく俺を狙っている。が、俺たちの拠点にまで乗り込んでくるとは考えられない。ぶつかった限り俺の方が強かったからな! だから、次にあれが俺を狙ってくるならば……そのタイミングは――」
ダンッ!!
と、俺は執務机の上に広げた南九洲の地図を叩く。
「――ここだ。桜花島、神子島地区奪還の最終決戦地。そこで待つだろう巨大な敵を打倒した、そのあとで、姿を現すはずだ」
より派手で、より激しい、一番盛り上がる戦場。
間違いなくここで、白衣の男は何かを仕掛けてくる。
そんな戦いを乗り越えた、俺が一番疲弊するタイミングこそ、RRにとっての好機に違いない。
(この際、白衣の男と赤いコートの女の繋がりなんて気にしない)
どちらとも、俺にとっては乗り越えるべき障害でしかないのだから。
(何ならその両方を、この世界から消し飛ばせばいいだけだ!!)
俺の望む未来をこの手に掴むため、めばえちゃんの希望の明日を拓くため!
「赤だ白だ六色だ何だ知らないが、全部まとめてぶっ倒し、俺たちのヒーローを迎えに行くぞ!」
絶対に負けられない戦いを、始める!!
次回新章、神子島戦線!
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