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第145話 赤いコートの女

いつも応援ありがとうございます。


感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。

楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。

誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。


不意打ちを受けた終夜は……!!


「――死ね、黒木終夜」

「!?」


 目の前が、赤一色に染まる。

 視界いっぱいに広がるそれは、全身赤まみれの大人の女性だった。


 キンッ!


 斜めに切り上げる軌道で放たれる、真紅の刀による一閃。

 それは、覚悟を決めた真白一人君が俺に放った殺意と敵意とは比にならない、鏖殺(おうさつ)の意志。


 俺が何者であろうと構わない、絶対必殺の覚悟が込められた一撃で。



「……クッ!」

「あんたが、真白君のバックについてる黒幕か?」


 だからこそ、俺も迷わず全力全開。

 蛍丸そっくりの刀身から予測しての全力回避。


 刀の流れに合わせて体を傾け、黒い精霊殻の腕から地面へ落下し、初太刀を躱す。



「……自己主張激しすぎだろその恰好」


 見上げればそこに、真っ赤なレディ。

 赤いつば広帽子に赤コート、ブーツも赤なら、顔を隠すサングラスまでが赤ときた。


「RR!」


 アールツー、ね。

 真白君の叫びからして、二人は知らない仲じゃない。


(白衣の男の関係者か……あるいは……)


 頭の中で様々な予測を立てながら、同時に念を込めていく。



「できればあんたとも話がしたいが、それも無理だよな?」

「死ね、黒木終夜」


 代り映えしない返事にため息ひとつ。

 呆然となる真白君を置いて、精霊殻の腕を蹴り、飛び込んでくる赤いコートの女に。


「はいそうですかで死ねるかよ!」


 俺はDO-TANUKI・Mk-Ⅲを呼び出して、即座にソレを起動する。



 ヴンッ!


 ------------


 DO-TANUKI・Mk-Ⅲ。

 システム“擬似霊刀化”を実行します。


 ------------



 ギャリリリリリッ!!!!


「!?」

「アイデアがあれば開発(つくれる)ってな。本家にもちゃんと通じたみたいで何よりだぜ!」


 振り下ろされた真紅の刃を切り払う。

 直後、勢いよく地面にぶつかるその衝撃は、そのままフィジカルで受けて痛みごと利用し即座に立ち上がる。


「………」


 遅れて赤いコートの女が着地する間に起き上がり、息を吐く。

 明らかに、人の領域を超えた動きを見せる、彼女の技は……。


(……間違いねぇ。今まで俺が相対した中で、この女が一番強い!)


 かつて倒した亜神級すら、その身一つで倒しそうなほどの力を示していた。



      ※      ※      ※



「はぁぁぁっ!!」

「本当に問答無用かよっ!」


 力を示した。

 だってのに、赤いコートの女は一切意に介さず襲ってくる。

 100%の純然たる殺意。黒木終夜絶対殺すマンである。


「その恰好、赤の一族だってアピールしてんなら、最強のラスボス候補な俺を殺しちゃ不味いんじゃないのか!?」

「それ以上に、貴方の存在を認めるわけにはまいりません!」

「ホワッツ!?」


 意味不明。

 とてつもない速度で放たれる決死の一撃の数々をどうにかこうにかいなしつつ、かろうじて回る頭の余剰で考える。



(赤の一族にとっちゃ最高の駒である俺を認められない、それ以上の理由? 俺の存在が、赤の一族にとっても不利益が生じるってことか?)


 喉を狙った恐ろしいほど早い突きを、体捌きと首を曲げることで避ける。

 そのまま半身の姿勢をとって相手からの当たり判定を減らし、続く刀を受け流す。


(そもそもこの、RRって奴を俺は知らない。設定資料にもいなかったし、白衣の男と同じイレギュラーな存在なのは間違いないよな)


 俺の知らない、史実にはいないイレギュラー。

 チート装備を真白君へともたらし、今この瞬間俺を亡き者にしようと攻め立てる。



(赤、赤、赤……なんでこんなに赤いんだ?)


 全身真っ赤なこの女の、存在意義がわからない。

 赤の一族だとして、白衣の男の関係者だとして、彼女の振る舞いそのすべてが、そのどちらにとっても不利益を起こそうとしているように見える。


(かといって、白っぽいかって言うと……)


 白の一族だったとしたら、今度は新姫様たちと連携してないのもわからない。

 もしかしたら裏で繋がってて俺が騙されてるって線も、蛍丸の存在的にありえなくもない。


 が、だったらなんで、新姫様が大阿蘇様名義の契約書まで作ったのかってなる。

 HVV世界を愛する彼女が、ここまで心を砕いた上で、その邪魔をしてくるとは思えない。


(……クスノキ女史真の黒幕説、あるか?)


 クスノキ女史とRRが裏で繋がっているパターン。

 ……いや、強くなりすぎた俺を殺したいなら、そもそも新型精霊殻の完成を間に合わせなけりゃよかっただけだ。



(……結論。RRは赤っぽくも白っぽくもありそうでなさそう。全部が全部、胡散臭い)


 存在自体が謎。その真の目的もわからない。

 ここで俺を殺したその先で、いったい彼女は何がしたいんだろうか?



「RRって言ったな!? 聞きたいことがある!」

「!?」


 敢えて真紅の蛍丸と切り結び、鍔迫り合いに持ち込む。

 押しては引いて、体勢を変えながら、見合う時間を確保する。


「お前の目的は、なんだ!」

「……!」

「俺を殺して、お前は次に何をする!?」


 問いかけと同時に相手を押し込む。

 ここまで剣戟を重ねて理解したのは、ステータスは多分、俺の方が上だってこと。


 答えなければ押し通すと、そう圧をかける。


「……っ!」


 サングラス越しにも伝わってくる、赤いコートの女からの、強い感情の熱視線。

 あまりにもそれが研ぎ澄まされすぎていて、ふと、誰かの顔が俺の脳裏に過ぎり――。


「――お前を殺した、そのあとは……!」


 同時。ワザとらしい厚化粧の赤い唇から、その言葉が飛び出した。 




()()()()()()()()()()()()()……」

「―――」




 あ。

 こいつは殺す。


 今殺すすぐ殺す絶対に殺す逃がさず殺す何がなんでも殺す俺のすべてをかけて殺す全身全霊あまねく運命を越えてこいつを殺す未来も明日も希望も夢も何一つこいつから奪わせず殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。


「死ね」

「っ!!」


 押し切って体勢を崩させ、一刀のもとに両断しようと刃を構えた――次の瞬間。



「そこまでだっ!!」

「「!?」」


 ドズンッ!!


 俺と赤いコートの女とのあいだに、巨大な黒い腕が横たわる。

 構わずに振り下ろした俺の刃は、超過駆動の緑の燐光に威力を受け止められてしまった。



「ダメだ真白君。こいつはここで殺さないと」

「今、この場で一番冷静なのは僕だ! 双方、尋常じゃない! 一旦お互い頭を冷やさなきゃダメだ!」

「………」


 あぁ。

 真白君はマジでヒーローだなぁ。


 この期に及んで、みんなに優しい。


 でも。

 それじゃダメなんだ。



「それじゃあ、彼女は救えない」

「!?」



 ヴンッ


 ------------


 超常能力“ゲートドライブ”を実行します。


 ------------



 跳び越える。

 ヒーローの優しい腕の、その向こう。



「……っ!」


 赤いコートの障害の……その背後に着地して。



「お前は絶対に殺す。めばえちゃんをラスボスなんぞに、させるかよっ!」



 今度こそ獲った。

 そう、思ったのに――。



『終夜! ぶれすダ!!』

「グルオォォォォーーーーンッ!!!」


 頭に響く無視しまくってた警告の声と、今この時になってようやく気づいた、夜空の竜。

 竜の口はとうに開いて熱を持ち、そこから爆炎のブレスが吐き出された。



      ※      ※      ※



 ゴオオオオッ!!


 わずかに揺れた剣先を、それでも振り抜いてから俺は飛び退る。

 視界を埋める燃え盛るブレスの向こうで、真白君の精霊殻が動くのを見た。



「待て、待て待て待て、待てよおい! 赤い女ぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!」

『ばかばかばか! 生身でブレスに突っ込むのはさすがにやめクァッ』

『―――!!』

「うおっ!?」


 追いかけようとしたら、不意に足元が見えない何かに縫いつけられて、動けなくなる。

 直後。


『終夜!!! 冷静になってください!』

「うぎっ」


 頭痛がするレベルでヨシノが叱責してきて、いよいよもって動きを押さえ込まれてしまった。



『終夜! 今はあのドラゴンを倒して生き残ってください! お願いですから!』

「~~~っ! くそっ! くそっ!!」


 縫いつけられた足はもう動く。

 真白君はとうに隠れ身でも使ったか、影も形も見当たらない。


『終夜!』

「だぁぁぁぁ! わかった! わかってる! 大丈夫だ!!」


 こうなったらもう、話は終わり。

 やるべきことを、やるしかない。



「交渉は決裂。だが新しい情報はたっぷり。持ち帰って、準備して、次こそ――」


 マイエターナルフェイバリットダークシャイニングスターめばえちゃんの障害を……消す!


「……くぅ。わからんわからん、なんもわからん!! だが、ぜってぇさせねぇ!!」


 やっと、やっと幸せになれる未来が見えてきたんだ。

 そんなめばえちゃんの未来を、奪わせはしない……!! 絶対にだっ!!!



「グルギャオォォォォーーーーーーーーン!!!」


 一刀両断。

 ドラゴンなんぞ生身で。



「全速力で戻るぞ!」

『だったら、契約鎧を今一度ちゃんと着てください!』


 精霊纏い。

 俺は胸の内にたまったうっぷんをいろいろな方法で撒き散らしながら、朝が来る前に一夜志の基地まで戻るのだった。

なお、前回落とした通信機は無頼さんチームが命がけで回収しました(タマちゃんサポート)


応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!

ぜひぜひよろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
ドラゴン「そんなー(´・ω・`)」 出番も活躍も禄になく、ドラゴンさんは出荷されました。 南無(=人=)南無
RRが居るならDDも居るかな?それともC3とかPOかな。 それはそうと、十分な筋力を保持した状態で契約鎧で戦う場合、大物よりも小回りのきく敵の方が脅威ですね。
はたしてRRの正体は!?そして真白君との和解はなるのでしょうか?
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