第131話 守護者からのプレゼント
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青春パートだってHVV流で天2流! な、章が始まります。
4月後半。
建岩家の秘奥にして六色世界からの干渉者“白の一族”である新姫たちと共闘する契約を結んだ俺は、5月の神子島戦線参加へ向けて準備を進めていた。
神子島戦線は九洲最大の戦場であり、原作HVVにおいてはHVV戦役が終わるまで解放されずに終わった場所である。
大陸から迫りくるハーベストたちへ向けた対策として日ノ本が選んだのは、3つの壁を設置しての迎撃だった。同時にそれは、壁を設置することで敵の流れを制御し、戦場をこちらで指定するという意図もあった。
その結果、最も多くのハーベストを招き入れ、最も激しい戦場となったのが神子島地区なのである。
そんな超々激戦区へと殴り込みに行くのだから、用意も徹底しなければならない。
もともと難易度EXな場所への進撃に加え白衣の男の干渉も確実となれば、その難易度はOD級間違いなし。準備してしすぎることはないと思われる。
なので。
「……さぁみんな、訓練の時間だよ! 訓練しよう……ぜっ!」
天2独立機動小隊は、訓練強化週間へと突入した。
期間は2週間、ここでキチンと仕上げてから、日ノ本最大の戦場攻略を目指す!
※ ※ ※
天2基地、グラウンド。
「ハッ、ハッ、ハッ……」
トレーニングウェアに身を包んだめばえちゃんが、長い髪を振り乱しながら一生懸命走っている。
「その調子ですわ、めばえさん! 体力向上訓練ですのでフォームの維持に意識を割いてくださいまし!」
それを監督しながらバルンバルンと並走する天常さんは、今回もブルマ姿だった。
そんな様子を鉄棒で片手懸垂ついでにグルリと回って逆立ちしたりしつつ、俺は眺めていた。
(今回もみんな、士気が高くて結構結構)
右を見ても左を見ても、みんな一生懸命に鍛えている。
「3,2,1……はい、ストップ。姿勢を楽にしてください」
「ガハッ! こ、これが……本場の天2式特別訓練! 佐々先輩たちの強さの秘訣……き、きちぃ……!」
「おや、鹿苑寺様はこの程度で音を上げるので? であれば今から竜胆様の元へ合流し、仲良く座学に励まれますか?」
「な……っ!? こ、の! やってやろうじゃねぇか!! 次のメニューだ、細川先輩!!」
「はーい! このまま後20周は時間内に駆け抜けよう!」
「帆乃花様のおっしゃる通りにございます。パイロットとして常に高いパフォーマンスを発揮できるよう、疲弊時こそ平然に、です」
「ひぃ、ひぃ、地獄ッス!」
「大丈夫大丈夫! 一二三ちゃんはこれまでも私たちと一緒だったでしょ?」
「今回は瓶兆様が気絶するギリギリまで、みっちりと追い込みシゴき上げますね」
「ぎゃ~~~ッス!」
「ハッ! ヤッ! セェイッ! カケルちゃんスラッシュ!」
「軽い軽い! 軽いぞ乃木坂! そんな筋肉では格闘技能2にも至れんぞ!」
「……隙あり! たけポン!」
「ぬぅおっ! 鏑木!?」
「へっへーん! どうよあたしの隠密っ! 新しいコツ掴めそうかも!」
筋トレ、走り込み、組み手。
戦士職はとにかく体力気力運動力を鍛えるべく動き続ける。
(こっちはよし、じゃああっちはっと……)
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超常能力“テレパスセンス”を実行します。
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整備職メンバーの今を、超常能力で調べれば。
(オリーとナイフちゃんは資料室。で、佐々君から出された課題中。タマちゃんは司令室……これ六牧司令の手伝いじゃなく事務技能鍛えてるだけか。んでおおっと、西野君これはいけない)
パパッと現在位置を把握して。
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超常能力“ゲートドライブ”を実行します。
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「くっそぉ。こうも毎日毎日ギリギリまでしごかれちまったら身が持たねぇよ。凡人にはサボる時間も必要なん」
「寮の屋上でサボッてるならぁ、一緒にぃ、訓練しよぉぜぇ~~!?」
「ぎゃあああーーーー!? 逆さ生首ぃぃーーーー!!!」
整備職の基本は知力。
日々のたゆまぬ研鑽こそが、頭脳の冴えと仕事の能率を上げるのだ。
「……おっ」
全速力で資料室へ駆け去る西野君を見送ったところで、俺はテレパスセンスが示すある情報に意識を向ける。
(佐々君とパイセンが同じ場所にいる……となるとこれは!)
覗き上等で顔を突っ込んだ先は、以前に俺がパイセンと一緒にお参りした近所の八幡様。
神社の境内で静かに祈りを捧げる佐々君を、精霊合神状態のパイセンが見守っていた。
「「………」」
佐々君の周囲を淡い光が舞って、少しずつ集まっていく。
彼の美少年ビジュアルと相まって幻想的な雰囲気が漂うそこに、これまた美少女なパイセンが羽衣を伸ばして光を逃がさぬようサポートする姿は、まさに現代の神話。
「……むっ」
ふと、大きめの光が佐々君の内側に入ってったのを合図に祈りは終わって。
「おめでとう。千代麿」
「あぁ、ありがとう。九條。これでボクも、ようやく精霊との契約が可能になった! ……待たせたな、テマリ!」
佐々君の成長を祝う時間もほどほどに。
彼の呼び声に応え、その場にポンっと姿を現した精霊は宝玉を持った小兎で……って!?
(うおマジか!? 玉兎じゃん!)
整備系行動に補正入るだけじゃなく、移動まで助けてくれる素晴らしい精霊さん!
臆病な性格で、俺がいくら呼び掛けても出てきてくれなかった奴なのに!!
「これからよろしく頼むぞ。テマリ!」
そんな超有能精霊と無事契約を結ぶ佐々君。
すりすりとほっぺを擦り合わせられながら幸せそうにしている姿は、彼らにもまた紡いだ物語があるように思えて……。
「……それで、あなたは何をしてるのよ? そんな逆さ生首で」
「Oh」
そうこうしてたらパイセンに見つかって、目の前に立たれてた。
「なんか素敵イベントの予感がしたから、つい……」
「そうね。素敵イベント中よ。だ・か・ら……」
羽衣を後ろに振りかぶってぐるぐる回すパイセン。
「去りなさい! 邪なる者よ!」
「へぶぅっ!」
パァンッ!!
いいモノ一発貰って、鉄棒からも落下する。
「ぐはぁっ!」
地面で受け身をとっても残るダメージに、しばらくのあいだぐるぐると目を回す。
と。
「ボウッ!」
そこに聞こえてくる、妙にくぐもった犬の鳴き声。
「お?」
「ボウッ!」
見れば、俺の傍らに一匹の黒い犬が立っていた。
「ボウッ!」
「クロさん」
パグの血混じってそうな愛嬌たっぷりへちゃむくれ顔の、真っ黒毛並みの中型犬。
彼の名は『クロ』。天2が軍学校だった頃から、この地を縄張りとしているワンコ。
そして。
彼こそはこの、上天久佐を守護する精霊たちのトップ――“守護者”の称号を持つ存在。
「ペッ」
「これは……ビニールに入ったぬいぐるみ?」
「ワウッ!」
実は俺や何人かの隊員と精霊契約済みの、縁の下の力持ち的有能キャラである彼が咥えていた物。
「げっ。これ……クマモノくんか!?」
「ワウワウッ!」
差し出されたそのアイテムに、俺は。
(うわぁ、ここでキタか……っ!)
大作戦を控えた天2小隊に、まったく違う角度から、とんでも台風が来たことを理解するのだった。
終夜「ぎょ~くとちゃ~~ん! け~やくし~~ましょ~~~~!」
テマリ(ガクガクブルブル……)
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