第127話 白の一族
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白の一族。その謎のヴェールが、今……!
新姫神社。
大阿蘇神社十二神の八宮――新姫神をのみ、祭神として祀る秘密の神社である。
「表歴史における新姫神様は、七宮――新彦神様の妻として名を刻まれております」
案内役の顔を紙で隠した巫女さんが、行きすがら話をしてくれる。
「神社としては夫婦神として小坂大阿蘇神社にて祀られているのが有名でしょうか。ですがそれはあくまで表の歴史。真実は違います」
砂利を踏む音と、巫女さんの話し声。
俺と姫様と巫女さん以外に、山中だってのに不思議と音はなく。
「新姫様は、かつて大阿蘇様――建岩龍命様と友諠を結び遠戚となられ、この世の精霊たちを庇護し育むためにその御力を尽くされた、外なる人なのです」
神秘的な雰囲気の中、足を止めた巫女さんに促されて進んだ先。
築何千年と経っているはずなのに、まったく古さを感じさせない新築めいた白木の社。
靴を脱いで上がり、正面の襖をくぐれば。
二人、入ったところでピシャリと勝手に襖が閉じた。
「……お待ちしておりました。黒木終夜」
部屋の奥、橙の蝋燭灯りに照らされた祭殿の前から声がする。
そこには真っ白い着物に身を包み、同じく真っ白で床に広がるほどに長い髪を持った――寒気がするほどに綺麗な、白い肌の少女が座っていた。
「お初にお目にかかります。わたしが、白の一族が一人……新姫と申します」
正座し、こちらを静かに見つめる瞳は血のように濃い赤色で。
「日ノ本を守る英雄とこうして相まみえたこと、大変喜ばしく思います」
「こちらこそ、会えて光栄です。新姫様」
彼女の見せる穏やかで、それでいて冷たさもある無感情な笑みと合わさって。
どことなく姫様と似ているな、なんてことを俺は思った。
※ ※ ※
「「………」」
用意された座布団に俺も正座して、新姫様と対峙する。
建岩の姫様はそんな俺らから離れた場所に座り、会話に不参加の構えを示していた。
あくまで彼女はこの状況の橋渡し。
俺と秘奥が相対するために必要な、境の結び目の役割を担っているだけということらしい。
「……さて、何からお話ししましょうか」
先に口を開いたのは新姫様。
少女らしく高めの声が、けれどその見た目不相応に落ち着いた雰囲気と共に紡がれる。
見た目年齢パイセンと似たレベルなのに、圧倒的な年期の違いを感じる。
ただ一声の圧が、この場を支配しようと手を広げているみたいだ。
のんきに構えてたら、一瞬で呑み込まれるなコレ。
「そうですね。とりあえず……」
気圧されないよう息を吐いて、俺は、不参加態度の姫様の方を向き。
「……姫様、ゲットアウト」
「はい」
彼女を部屋から追い出した。
シュバッと即去りした姫様が襖を閉じれば、その向こうで「え? 新姫様とあの方で二人きり? 贄様それはお戯れが……!」なんて慌てた巫女さんの声が聞こえたが。
パンッ!
新姫様が拍手一回。
それで何も聞こえなくなった。
……さて。
「なるほど。命は、完全に貴方側に付いているのですね」
「俺にそうする予定はなかったんだが、そうなっちゃったんだよな」
「………」
まず手始めに、敬語をやめる。
雰囲気の変化を感じ取り、新姫様の方も警戒レベルを上げたのを感じたが、それでいい。
(ヘタに下手に出るようなことはしない。俺と彼女らは、対等だ)
改めて新姫様の方を向き、座布団に座りなおして。
真っ直ぐに相手を見つめれば、赤い瞳は揺らぐことなくこちらの出方を探るように強く見つめ返してくる。
「……では、お聞かせ願います。命すら追い出してまで私と話したいこととは、いったいなんでしょう?」
神秘的な美少女なんていう見た目に、惑わされてはいけない。
彼女こそ、この世界に深く干渉してきた上位存在――“白の一族”で最初にこの世界にやってきた干渉者。
今日までに至るン千年を生きる、超常の存在なのだから。
(出し惜しみはなしだ。初手で会話の主導権を……獲る!)
気合を入れろ黒木終夜!
この会話こそが、俺の推しの未来を左右する分水嶺。
マイエターナルラブフォーチュン黒川めばえに迫る運命を切り拓くための、一手!
そのために切るカードは――!
「――改めて、俺と会ってくれて感謝だ。新姫様……いや、α-10218」
「!!?!?」
披露した原作知識を前に。
うちの姫様とは似ても似つかない、感情豊かな驚き顔が新姫様に浮かんで。
「どこでその名をっ!?」
「それと、観測されてるのはわかってるから。顔を出してくれ、γ-28275」
「なぁっ?!」
相手の質問を無視して続けた言葉に。
いよいよもって目の前の美少女は目を真ん丸にして。
『うえへぇ~、そこまでわかってるんだ? ホント、どれだけ知ってるの? キミ?』
直後。
ヴンッと音を立てて展開したモニター越しに、白衣にでっかい丸メガネの野暮ったい女性が顔を出し。
「あ、奪還戦の時の新型精霊殻開発マジでありがとうございました。超助かりました。クスノキ副室長」
『ほぁ? あ、ドーモドーモ……って、うへぁ、マジかぁ……』
ペコッと頭を下げてみせたら。
画面越しの女性――本土のマッドな研究開発チーム所属の開発者にして“白の一族”横井クスノキ女史は、いろいろ察してドン引き顔を浮かべた。
「黒木終夜っ! 貴方は、いったい……!?」
『うへぇ~。コレ絶対ヤバい奴だぁ~』
困惑する二人の“白の一族”を前に。
「それじゃ、てっとり早く話を進めたいから本題に行かせてもらうぜ」
『「!!」』
「俺の目的は……あんたらが定めた黒川めばえのラスボス化計画、その絶対阻止だ!」
俺は静かに拳を握り、掴んだ権利を行使し始めるのだった。
ロリババアは、いいぞ(鳴き声)
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