第123話 推しにいいとこ見せるチャンスがあれば、新技だって披露する!
いつも応援ありがとうございます。
感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。ちょっと今、親戚の法事とそれに伴って風邪うつされて返事滞ってますけど、ちゃんと返事するんでもうちょっと待っててください!
誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。
出撃はするけどイベント会話メインの回ってありますよね。
それは、ほんの数分前の出来事。
「ん、なんだあれ?」
「隈本城に……赤い、霧?」
隈本城天守閣。
それを覆うようにうっすらと、赤い霧が漂っていた。
「おい、おい、マジか?」
「これ、通報した方がいいんじゃ……」
赤い霧が何を意味するかなんて、日ノ本の民なら誰もが当たり前に知っている。
対応を取るべく動くべき人はすぐさま動き出し、しかるべき場所へと連絡を飛ばす。
だがその異常事態は、そんな迅速果断な動きよりもなお早く進行した。
「いやっ! 霧が濃くなって!」
「あ、あぁ……! 霧の中から、何か、でっかいのが……!」
幾人かの声が上がった。
その直後。
霧が晴れ、そして――。
「――は、ハーベストだぁぁぁーーーーー!!」
誰かの叫び声が上がり。
「グルオォォォォーーーーンッ!!!」
続けて現出した脅威が、己を誇示するかのように咆哮を上げたのだった。
2020年、4月。
この日初めて、隈本市内……それも隈本城に侵略者の牙が届いた。
※ ※ ※
「ドラゴン……だとぉ!?」
天守閣に引っついたドラゴン!
キング〇ング? それとも〇スラ!?
いずれにしても、隈本民の大事な大事なランドマークに何てことしやがる!!
「贄ちゃん!」
「はい! ……精霊纏い!」
すぐそばで、姫様が契約鎧を呼び出し臨戦態勢に入る。
そのままお城に向かって――って!
「待て待て、姫様! ストーップ!!」
「終夜様!?」
「え、終夜!? どうしてここに!?」
「終夜ちゃんどうして……ハッ、まさか!?」
「どうして俺がここにいるのか、その疑問はもっともだ。でも今は、そんなことはどうでもいい。重要じゃない」
慌てて姿を現した俺に、3人が驚くのも束の間。
さらにアサルトライフルを手元に呼び出し姫様が言う。
「終夜様、隈本城の損壊は日ノ本国民の全体的な士気に影響が出ます! ですので」
「わかってる! だが姫様たちはめばえちゃんを頼む!」
自分が行く、と言おうとする姫様をもう一押しで静止して。
俺は視線を残る二人に向ける。
「タマちゃんは端末使ってみんなに連絡! 天常さん経由で六牧司令とコンタクト! 今から無茶するから、それをいつも通りの天2の独立行動だってことにしてくれ! オリーは姫様と一緒にめばえちゃんのフォローよろしく!」
「わ、わかったにゃ!」
「りょーかい!」
「よし! 頼んだ!」
これでこの場は問題なし。
万が一にもこの辺まるっと戦場になったら、まだまだステータスが仕上がってないめばえちゃんの身が危ない。
天2基準を超えてる二人と姫様には、なるべく彼女のそばにいて欲しい!
「終夜様はどうなさるおつもりですか?」
「俺か? 俺は今さっき言った通り……今から無茶をする!」
姫様があそこに行くよりも、早く。
近くの基地から届く戦力よりも、強く。
あの場の脅威を取り払えるのは……俺だから!
(俺が日ノ本の希望であることを、めばえちゃんは認めてくれていた。そんな風に俺の姿が映っているって言うのなら……俺は! そうあることに! 迷わない!!)
全速力で走り出す。
駆け出して、アーケード街を飛び出して。
路面電車も通る広い道路へ到着すれば――!
「――精霊纏い!」
俺は俺の所有物を、召喚する!
「来ぉぉぉーーーーいっ!! 呼朝ぉぉぉーーーーーーーーっっ!!!」
先人に倣って指パッチン!
直後、俺の真上にゲートが開き、舞い降りるのは我が専用機!
「でぇぇぇぇ!? 精霊殻の呼び出しぃぃぃ!?」
「It’s Amazing!」
「呼朝は終夜様の専用機……であれば呼び出せる理屈はわかりますが……規格外、です!」
驚き役感謝!
俺は現れた呼朝にさっそうと乗り込み、コックピットに着席する。
「ヨシノ!」
『いますよ、終夜。この子も、驚いてはいますが問題ありません』
「OK! んじゃ、起動だ!」
流れる動作で起動シークエンスを進め、その間に周囲の情報も取得していく。
『精霊殻、起動コード確認! すべて自由に!』
「よっしゃあ! 手動緊急モードで運用。エマージェンスコード入力! そんでもって霊子リンク! 疑似神経接続! 感応・同調・精霊契約、重層同期!」
『セーフティを最低限に。コントロールの95%をパイロットに。貴方の思うがままに』
「行くぜ、ヨシノ!」
『――夜を払い朝を呼ぶ我が舞踏は、貴方と共に』
呼朝が完全に起動する。
と、同時に周辺の地図や敵性存在の有無などの情報がタマちゃん経由で届く!
「敵個体数1! 作戦地点隈本城! 天2独立機動小隊精霊殻2番機『呼朝』……跳ぶぜぇ!」
システムオールグリーン!
超過駆動の緑の燐光ぶっ放し、俺たちの呼朝は街の空へと跳び出す。
(見ててくれよめばえちゃん! 日ノ本の希望、きっちりこなしてくるぜ!)
目標ドラゴン!
ワンパンで、終わらすっ!!
※ ※ ※
「グルオォォォォーーーーンッ!!!」
「しゃらくせぇぇーーーーーーーーっっ!!」
一足飛びに急接近するこっちに向かい、吐き出されたブレスを超過駆動の燐光で無理矢理突破!
その勢いのまま精霊拳を打ち込んで、ドラゴンの横っ面をぶちのめす!
ボッ!!
「グボッ!!」
振り抜いたこぶしが、ドラゴンの首から上を吹っ飛ばす。
「!?!?!?」
頭を失ったドラゴンの体が掴んでいた天守閣から離れ、そのまま仰向けに地面へと墜落する。
ズシンッと派手な音と砂煙を立てて、地に落ちた精霊級最強のハーベストは絶命した。
「っし、ワンパン!」
『鎧袖一触です』
集団戦闘中に空襲してくるとかでもなければこんなもんよ!
ついでにお城の損壊チェック!
「……んー」
『この程度でしたら、そう修繕も難しくないと思います』
「だよな!」
日ノ本の大工さん、とても有能。
ヒビとか穴くらいなら、ダイジョーブ。
「で。こいつはどうして現れたんだ?」
足元で今にも消えていくさなかのドラゴンを見下ろしながら、各種レーダーを確かめる。
「マーキングがある感じでもなし……タマちゃん情報からすると赤い霧が突然空に漂って現れた? あれってこんな高いところまで浮かないよな?」
空からの襲来っていうとそれこそ亜神級“空泳ぐクジラ”案件だが、あれが落としてくるのはあくまで妖精級の数が呼べる雑魚のはず。
「たまたま……なのか? いや、違うよなぁ?」
心当たりは、ある。
(このあいだのゴーレムと同じだ。ありえないタイミング、ありえない場所で現れる敵。そんな芸当ができるのは、この世界を箱庭みてぇに見ることができる……上位存在たち)
六色世界の奴らだ。
(おそらく今も、どこかで俺たちの動きを覗いてやがるはずだ。ただ、それを見つけるのは至難の業だろうってのも、わかる)
六色世界の奴らも、当然ながら超常能力を使う。
それも例えば同じ“隠れ身”だとしても、性能が段違いの奴を平気で活用してくるんだ。
(素のスペックはそう違わない。だが、あいつらは技能レベルに+補正入れるような装備を使うんだ)
今もきっと、隠れ身に使う隠密と同調の技能レベルを4相当で使ってやがるだろう。
そうなると、それを見破るためのこっちの技能レベルが3だと不利は必至。
幸運技能でもありゃヤマカンでぶち当たる可能性だってあるんだが……。
「チッ、いけすかねぇな」
『どうしましたか、終夜?』
「今、間違いなく俺たちを観察してる奴がいる。だが、俺の力じゃそれを見つけきれねぇんだ」
まったくもって業腹だ。
相手の意図が分からないまま、後手に回され盤面を引っ掻き回され続けている。
錬金技能レベルが4とかいう超天才でもいれば、技能レベルに補正入れるアイテムも作れそうなものなんだが……そんな奴設定資料集にも載ってなかったからな。
『終夜』
「あぁ、悪いヨシノ。ちょっと冷静さを欠いてたな」
『より精度の高い技能を使いたければ、精霊殻と精霊の力を借りて、感覚を拡張すればいいのではないですか?』
「……あ」
俺はヤタロウを呼び出し、精霊殻の重層同期のメイン格をヨシノと代わってもらった。
「…………いた」
俺は呼朝を駆り、本丸から移動する。
見つけたそいつはすぐ近く、隈本城を見上げる二の丸公園の中に、堂々と立っていた。
こっちを見て、笑っていた。
「お前が……ここんところちょっかい出しまくりの、黒幕か!」
「……おんやぁ、これは想定外だ。黒木終夜に見つかってしまったねぇ?」
白衣を着た――黒い瞳の男だった。
TIPS:二の丸公園は現実では二の丸広場って名前です。公園呼びは地元民の癖ですね。
え、ドラゴン君の活躍? そこにないならないですね……。
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