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第121話 追跡ミッション!

いつも応援ありがとうございます。


感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。

楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。

誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。


本日は珍しい技能が活躍します。


「さぁて、さて」


 首尾よくB班からフリーになって始める、リインカーネーションオブラブ黒川めばえと仲間たちC班の追跡ミッション。

 今日のための準備は、前日にキッチリ終わらせている。


(“隠れ身”の起動、OK! カメラの準備、OK! 覚悟はいつでも、OK! オールグリーン!)


 平日午後2時。

 隈本最大の商業ロードは、遅いお昼を食べに来た人や俺たちと同じ買い物客、午後の仕事に向かう人たちなどが行き交い、混み合っている。

 戦いから遠い日々を過ごすたくさんの人の群れを掻い潜り、俺は女子たちの背中を追う。


(唸れ俺の撮影技能レベル3! めばえちゃんのお友達交流イベントを見逃すな!)


 気分は保護者か壁の花。

 推しの雄姿を残すべく、決死の戦いへと挑むのであった!



      ※      ※      ※



 とはいえ。

 めばえちゃんたちをただ追いかけるだけなら、そんなに苦労はない。


「お、おいあれ」

「あの白いブレザーにスカート、金の刺しゅう入りの制服って……!」

「間違いない、天2の隊員だ!」

「どけどけ、オレたちの守護神様のお通りだ! 邪魔してやるなよ!」


 ご覧の通り。

 一般市民の皆様の方が、彼女たちの場所、そしてそこに至る道を教えてくださる。


 っていうか、なんか海割るみたいに道が出来てる。


「生の天2の人初めて見た……」

「まじかるーぷの中の人とホントに同じ制服だぁ」


 天下無双の天2小隊は、一般の方からすれば完璧にカリスマアイドルか何かなのだ。


「はぁ~い、ご存じ天2所属の者たちで~す」

「Hello everyone! 今、私たち買い物中だから、お話とかはできないよ。ごめんね~」


 ざわつく人々に愛想よく返事を返すのは、さすがのギャル’sなタマちゃん&オリー。

 まさしくカリスマアイドル然とした対応でファンサを投げまくる。

 この手の対応が苦手なめばえちゃんをみだりに晒させないよう、二人できっちり位置取りを決めているのも高得点だ。


 そして。



「天2の人とつるむ巫女服の超絶美人って……まさか!?」

「あの鮮血のように赤く長い髪は……建岩の姫様!?」

「ハーベストハーベスターの、ガチの英雄!?」

「キャー! 命さまよー!」


 めばえちゃんガードの面目躍如。

 顔立ち、服装、立ち居振る舞い。すべてにおいて目立つ要素しかない姫様が、最終的に全部の視線を総取りしていく。


 魅力値1500越(EX)えは伊達じゃない。

 伊達じゃあないんだ、が。


 ワイワイ、ガヤガヤ……。


「?」


 ちょいとばかし、効果覿面すぎた。



「Oops! タマちゃん、これは……」

「オリーに同意だねぇ。ってことで」


 いち早く状況の不利に気づいたギャル二人が、めばえちゃんを左右で挟み、抱え上げ。


「「せーのっ!」」

「えっ、えぇぇぇ!?」


 ぴゅーんと二人、勢いよく駆け出して。

 抱えためばえちゃんごと、制御不能になり始めていた人の群れから飛び出していく。


「贄ちゃん、付いてきて!」

「はい」


 姫様もすぐさまそれを追いかけ飛び出せば、そこはさすがの天2小隊。

 鍛え抜かれたステータスはそこらの一般ピープルとは比べようもなく、まさしく目にも留まらぬ早業といった様子で彼らの視界から消失する。


「え、あれ? いない?」

「えっ、はやっ!」

「これが天2……」


 きょろきょろ見回し彼女たちを探す民衆たち。

 だが当の本人たちはもう、とっくの昔にここから立ち去っていた。



(さて、俺も追いかけるか)


 戸惑う人々を横目に、“隠れ身”状態の俺は悠々と歩き出す。

 なぜなら、彼女たちの行く先がどこなのか、俺には簡単にわかるから。


 ヴンッ。


 ----------


 超常能力“テレパスセンス”を実行します。


 対象“黒川めばえ”……現在地は、下通裏通り『ファッションハウスRIRICO』です。


 ----------


 ……なるほど。

 どうやらC班は、目立たないよう服を買い、制服から着替えるつもりらしい。



(……このメンツで服屋さん、か。間違いなくオリーとタマちゃんが、めばえちゃんと姫様を着せ替え人形にするよな?)


 姫様はともかく、最推しのお着替えイベント。

 そんなもの、見ないという選択肢があるだろうか?


 ……いや、ない!



(追跡ミッション再開! ターゲットロック! ファッションショーを記録せよ!)


 俺は燃え上がる推し欲のまま新市街のメインロードを外れ、目的の店へと続く裏通りへと駆け出すのだった。



      ※      ※      ※



 ファッションハウスRIRICO。


「はーい、完成!」

「GOOD! よく似合ってるよ!」

「テイラーソン様の意見に賛同いたします」

「あ、ぅ……えと、その。ありが……とう」


 ここを!

 新たな聖地として認定する!!!!!



(Oh……神よ! あなたはこちらにいらしたのですね……!!)


 店の隅に隠れて観察しながら、俺は偉大なる神々――大阿蘇様とHVVを作ったスタッフたちへ祈りを捧げる。


(まっこと、まっこと良きお着替えイベントでござった!)


 今日というこの日を、俺はきっと忘れない。

 それくらいに幸せで濃密な時間を、俺は見守ることができたのである!


 あ、俺は誓って着替えを覗いちゃおりません。

 あくまで着替え終わった推しとその仲間たちを、少し遠くから見ていただけでござんす。


 誓って、誓って……!!

 決して“姫様いるからバレそうだね”って諦めたワケじゃあないんです!

 信じてください! ハベベ勲章賭けたっていいんで!



(……こほん。流れはやっぱり案の定というか、なんというか)


 予想通りにめばえちゃんと姫様が、オリーとタマちゃんの着せ替え人形にされた。


 ああでもないこうでもないと次から次にコーデを考え試着させ、着せたら着せたで二人で評し、さらに似合う服を探し続ける。

 そんな二人の働きに対し、その手の知識に疎い様子のめばえちゃんは戸惑いつつも受け入れて、コロコロと雰囲気を変える自分の姿に一喜一憂していた。


『こ、これ……本当に着こなせてる、の?』

『似合う? そう、なの? ……本当に?』

『この色、好きだわ……黒。え、これにさっきの上着を合わせるの?』

『ど……どう? 似合って、る?』


 ………。


 そのなんとも愛らしいことぉーーーー!!


(一つひとつが俺の魂のイベントフォルダに焼き付けるべき絵画であった……!)


 特に最後の方、自分から似合ってるか聞く積極性を持ててるのが最の高っっ!

 我が人生に一片の悔いなし! めばえちゃんが楽しんでいるならオールオッケーです!


(これだけで、これだけでこの班を仕組んだ甲斐があった……!)


 俺はみんなが買った私服に着替え終えたタイミングで、パシャリと一回シャッターを切る。

 そこには四者四様に楽しげな、天2女子たちの私服姿がしっかりと映し出されていた。


 青のオーバーオールに黒のタートルネックを合わせたオリーは、肩まで伸びた薄い金髪と噛み合ってちょっと大人な仕上がりで。

 ベージュのキャミワンピに白いトップスを合わせたタマちゃんは、豊満で目を引く体のラインを上手く隠して目立たなくしている。

 透け感のある紫のチュールスカートに薄灰のスウェットを合わせた姫様は、当人の赤い長髪との相乗効果で美しくまとまっていた。


 そ・し・て!

 最愛にして最萌たる我が最推しヒロイン黒川めばえちゃん!


 そんな彼女が着こなす私服コーデは……!



「……この丈は、スースーするわ」

「No problem! 似合ってるよ!」

「そうだよん。おしゃれには時に、攻めっ気が必要ってわけ。これはその証明ね」

「よくお似合いですよ、ミニ丈」


 ……そう! ミニである!!

 ミニスカート、なのであるっっ!!


(ぐおおおお! 原作じゃもちろん、書下ろしイラストでもロングスカート派だっためばえちゃんの、ミニスカート!! な・ま・あ・し!!!)


 おっっっ、白っっっ!

 白くてスッとしてて、最低限の肉付きしかない太ももが丸見え!

 すっげぇ過剰供給! 過剰供給です!!


 あー、ダメダメ可愛すぎてエッチすぎていけません。これは罰金ですね。

 本人がちょっと恥ずかしそうにしてるのが余計にいけません。勤勉で大変によろしい!


 以下、解説ッッ!


(黒白茶色のチェック柄ミニスカートにアッシュブルーのリブハイネックセーターは、白い地肌のめばえちゃんに合わせた全体的にシックな仕上がりだ。併せて買ったのだろう黒いブーツとロングウェーブな黒髪が、黒黒で色味を引き締めてバランスも完璧。胸にワンポイント赤水晶のネックレスつけることでアクセントを足し、地味陰キャ女子属性だった彼女をミステリアス女子風へとアップデートさせている!)


 攻めっ気といっても攻めすぎているわけじゃない。

 だが、めばえちゃん15才という点を考えると、間違いなくちょっとした背伸びコーデ!


 これは……そう!


(おしゃれに興味あるけど一歩踏み出せないでいる少女に捧げる……ファーストステップ!)


 美しい。

 あまりにも美しく尊いものを、俺は見た……!



(ブラボー。おお、ブラボー!!)


 陰キャ少女の小さくも大きな一歩に祝福を!

 その道を示し導いた、二人のギャルに喝采を!

 ついでに横で見ていた美の化物にも称賛を!


(今ここに、エデンへと続く道は拓かれた……!!)


 感動。圧倒的感動!

 俺の頬を、自然と温かな何かが伝い落ちた。



「さ、お買い物の続きしよう! レッツゴーゴー!」

「贄ちゃん、めばえちゃん、おいでおいでー」

「参りましょう、めばえ様」

「……うんっ」


 イベントを一つ乗り越えて。

 少女たちが、手を取り合って街へと飛び立っていく。


 カシャッ!


 その後姿をもう一枚だけ記録に残し。


「……GG、めばえちゃん」


 俺は静かに、過剰摂取した推し成分によって砂へと還っていく。

 そしてその後もたびたび砂になりながら、仲を深めるC班の追跡を続けるのだった。


 アーケードを外れた路地裏から見える春の晴れ空に、少しずつ雲が掛かり始めていた。

撮影技能スキル:カメラを用いて撮影を行ない、思い出の写真というアイテムを生成する。風景を撮れば場所名の写真、一人だけを撮れば○○の写真、複数人を撮ればみんなの写真、など様々なアイテムになる。


応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!

ぜひぜひよろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
>気分は保護者か壁の花。  えー? 花ですか?  壁のシミでは?  と、ふと思ってしまった秋の午後。
なんという技能の悪用と言うかむだずかいw
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