第116話 青春観察! モニタリング!!
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わくわく人間観察。
これは、特別任務に挑む鹿苑寺桂馬と竜胆摩耶の二人による。
熱き挑戦の記録(非公式)である!
モニタリング、スタート!
「はぁ!? てめぇなにサボってやがる!」
「役割分担でぇす。はいはい、作業しないと終わらないねぇ~☆」
「クソァッ!」
拠点設営。
テントを張って早々に竜胆さんがサボる。
鹿苑寺君はブチ切れながらも最後までやり遂げる。
「ちょっとぉ~。ルート取りもうちょっと考えてくれませんかぁ?」
「ハッ。そんな恰好で来るのが悪いんだろうが。精々ちゃんと道作るこったな!」
「はぁ~!? 何その言い方、ムカつくんですけどぉ~?」
拠点周辺の探索(一回目)。
鹿苑寺君が敢えて草の背が高いルートを選択し、精霊鎧でごり押しする。
竜胆さんはぶちぶち怒りながらナイフで道を切り拓いた。
「あ、こら! それオレが採ったキノコ!!」
「ふぉふぇんふぇ? ふぁふぁふぃにふぉふぇふぁふぇふ」
「おんっ? 携帯糧食くれるのか……って、中身がもうねぇじゃねぇか!!」
昼食。
鹿苑寺君が探索ついでに採取した食べられるキノコを、竜胆さんが奪う。
竜胆さんの持ってきた携帯糧食(カレー味)はすでに全滅した。
「ふむふむ……ハーベストが干渉した形跡は、ねぇな」
「な、なんでまぁやが、荷物持ち……なのぉ?」
「お前がゴスロリ着てるせいで契約鎧規格の機材が使えねぇからだろうが!」
拠点周辺の探索(二回目)。
竜胆さんのゴスロリという拘りのデメリットが、表立って発生し始めた気配あり。
鹿苑寺君のフォローは少なく、まるでそれが罰則であるかのような態度を取る。
・
・
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「「う~~~~ん」」
俺たちは一斉に、腕を組んで首を捻った。
「これは……なんというか……」
「芳しくありませんわね」
「仲良くなる傾向どころか……ねぇ?」
「To bad.お互いに意地悪しちゃってるよ~」
「………」
二人での協力任務、というシチュエーションだったが。
どうやら望んでたモノとは違う感じで、それらは出力されてしまっていた。
「まず竜胆の持つ不利に対する対応ができてない」
「ゴスロリを着る、つまりは契約鎧を着ないということ。彼女本人がその不利を打ち消す対策が不十分ですし、鹿苑寺さんもそれらの不利があることを前提とした動きを取れていませんわ」
「真面目に任務に挑むのはいいが、かといって無理矢理に役目を与えて動かそうというのもなぁ」
「少数任務は、どれだけ適材適所ができるのかが肝要ですのにね」
「……こっちの二人くらい、噛み合ってれば何の問題もないんだがな」
「「?」」
後輩組も噛み合ってはいる。
手は繋いでいるのだ。がっぷり四つに。
「ふむむん。二人とも協力し合うバディであって、邪魔し合う敵じゃないんだけどねぇ~」
「………」
なかなかに前途多難。
だが、俺たちがそんな状況を想定していないわけがないのだ。
「ちょっと早いが実行するか。天常さん」
「ですわね。……細川」
ヴンッ。
「お任せください、お嬢様。レクリエーション……開始します!」
オペレーション・仲良し大作戦は、ここからが本番なのである……多分!
※ ※ ※
それは、突然に鳴り響いた。
パァンッ!
「なんだっ!?」
「なぁに~?」
何らかの破裂音。それもかなりの規模の音。
即座に姿勢を低くし警戒態勢をとる二人は、さすがに訓練を受けた軍人である。
「梅の実が弾けたってわけじゃあ、ねぇよな?」
「あっちの方から聞こえた、かもぉ~?」
周りに気を配りつつゆっくりと、音の鳴った方へ向かっていく。
「………」
それを、物陰から“隠れ身”を使った細川さんが見送っていた。
「始まったな」
「ですわね」
「上手くいくといいが」
それらの様子はモニター越しに、俺たちの目にも届いていた。
「……いったい、何が?」
「にゃふふっ! お答えしようめばえちゃんっ! 実は、昨日のうちにいろいろと仕込んでてね。二人の距離を縮めるために、あれやこれやとレクリエーションを用意したってワケ」
「ひゃぅっ! んぁ、ちょ、わかっ、た。わかったから、わかった……から……絡みつかない、で……!」
にゅるりと猫のように絡んできたタマちゃんに、背後を取られためばえちゃんからべらぼうに可愛い声(異論は認めない)が飛び出す。
思わずそっちに目を向けようとしたら、オリーに二度目の首グキされた。
「オリィィィ……後生だから、後生だから推しと女生徒の絡みスチルをぉ……!!」
「NonNon.言い出しっぺは、ちゃーんと本筋を見届けなきゃ、ね?」
「ほら黒木。うねってないでしっかりモニターを見ろ。状況が動いているぞ」
「さぁ、細川。やぁぁっておしまいなさい!」
「うぎ、ぎぎぎぎ……ぎぃぃぃ!」
俺は血の涙を流しながら、モニターに注力した。
「参ります……ポチッとな」
細川さんが仕掛けを起動する。
パンッパパパンッ!!
連続して鳴り響く破裂音。
「竜胆!」
「えっ、きゃぁ!!」
機動歩兵としての勘が働き、いち早く動いた鹿苑寺君が竜胆さんを庇って身を伏せる。
「チッ、明らかにタイミング測った鳴り方だ。何かいるぞ」
「……あのぉ~?」
「あん?」
「……どいて、くれませんかぁ~?」
「うあっ!? わ、わりぃっ!」
押し倒す格好になっていたのを慌てて手放し、平謝りする鹿苑寺君。
「……別に、いいですけどぉ~」
対して竜胆さんは不満げにしつつも、いつもよりトゲトゲしくない声を出した。
それから。
「はい、ポチッとな」
「おあっ! 岩が落ちてきやがった!?」
「こっち!」
転がり落ちてくる岩を寸でのところで回避させたり。
「続けてポチッとな」
「ああーーーー?」
「捕獲用の罠!? いったい誰がどういう意図で設置してやがったんだ……?」
「考えるより先に助けて欲しい、な☆」
網の吊り上げ罠で捕獲したり。
「ポチッとな」
「この足跡、もしかしたらゴブリンかもしれねぇな。竜胆はどう思う?」
「まぁや的にはぁ……ん、もうちょっと良く見せて」
「おわっ、見たいからって圧し掛かってくんじゃねぇ!!」
高いレベルで偽装した痕跡をあえて発見させたり。
「ポチッとな」
「ん? なんか光って……あっ、ここ滑りやすくなってやがるな。気をつけろ」
「ひぁっ? ちょっと、わかったから腕引っ張らないで~?」
滑りやすい場所をそれとなく示唆したり。
細川さんらしい、細やかかつ大胆なシチュ投げ……レクリエーションの数々に。
「オーッホッホッホ! さすがですわ細川! 怒涛の危険回避で些末な対立を意識させなくしたおかげで、自然と二人の距離が近づいてますわよーーー!!」
その主である天常さんは大喜びだった。
「やってることはどっかの冒険ものバラエティそのものなんだが、それで確かに単純接触が増え、互いを自然とフォローし合うようになっているな……?」
「YES! これが天常さんクオリティだね!」
「画的にもいい物が撮れてるよ~」
「……ごくりっ」
周りも気づけば二人の動向に注目し、熱い視線をモニターに送っている。
「いったん戻るか。ほら」
「りょーかい。んっ」
「「おおー」」
拠点に帰還する途中。
二人が自然と手を取り合って協力する姿が見れた時には、感嘆の声が上がった。
(これは……いけるかもしらんね)
やはりというかなんというか。
二人の相性がいいんだろう、強制的とはいえ触れ合うことで理解が深まり、互いの持っている険が取れていくのが見て取れる。
「この調子なら、少なくとも互いを少しは認め合う関係になれるかもしれないな」
「I agree! 仲良しできるといいんだけど……」
「でしたら……細川、彼らの夕食後にポイントGへ誘導なさい!」
「はい、お嬢様」
天常さんからの指示を受け、細川さんが二人の傍から離れていき。
「お、いよいよか」
「キタキタ! いよいよクライマックスだねぇ~!」
佐々君とタマちゃんも、期待に声音を高くする。
「ポイントG……?」
ここまでくるとさすがに観客モードにも慣れためばえちゃんの言葉に。
「それは、見てからのお楽しみ……ですわっ!」
天常さんは、得意満面といった様子で胸を張るのだった。
※ ※ ※
そして、二人の夕食後。
「怪しい光が見えたと思って調べてみたら、こんな洞窟があるなんてな」
「長いこと削られ続けてできた横穴、なのかもぉ?」
「何かが潜んでる可能性がある、気をつけていくぜ」
「はぁいはぁ~い」
うんうん。しっかり武装してる方が前衛やってるな。えらいぞー。
竜胆さんもいちいち鹿苑寺君の指示に噛みつかなくなっているし、順調だ。
細川さんの誘導で二人を連れてきたのは、島の絶壁横っ面から続く洞穴。
ここには二人の仲を急接近させるための、最後の大仕掛けが用意されている。
その奥にあるのは――。
「――これってぇ~……地底湖?」
広いドーム状の空間と、地底湖。
そして。
「!? なにかいやがる! 下がってろ!!」
「え、きゃあっ!」
ザザァァァッ!!
地底湖から突如として姿を現したのは――!
「GURUGYAOOOOーーーーーー!!」
「「!?!?」」
――妖精級ハーベスト、ゴーレム!!
(ただし、アレは天常家の技術力で作ったハリボテだがな!)
本物そっくりのハイクオリティ! これで危機感バリバリに煽れるな!
生命のピンチに勇気を奮い行動し、ともに乗り切った先に芽生える新たな感情!
まさしく吊り橋効果ガン狙いの最終兵器が、これだった。
「いよいよ大詰めですわ!」
「ベストショット、狙ってくよ~ん」
「ほら黒木、茶だ。黒川もいるか?」
「お、ありがとう」
「……あり、がと」
佐々君が配ってくれたお茶を頂きつつ、モニターに注目する。
ちょうど、私服姿の細川さんがこっちに向かって手を振っていた。
ヴンッ!
「お嬢様!」
「なんですの、細川?」
お、このお茶うっま……。
「あのゴーレム! 本物です!!」
「「ブフーーーー!!!」」
俺とめばえちゃんは、まったくの同タイミングで茶を噴いたのだった。
ゴーレム「GAOOON!(来ちゃった☆)」
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