第115話 オペレーション・仲良し大作戦!
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終夜はいつも通り。
俺たち天2が亜神級『青の氷狼』と死闘を繰り広げる舞台となった、樋相島。
そこから西へ数kmほど海を渡ったところにある離島――名をビトウ島。
かつてそこから霊やら竜やらが空へと飛び立ったとか、乙姫の竜宮への入り口があったとか。
九洲では割とメジャーな逸話を持った島の一つであるそこへ。
「どうしてオレがこいつと組まなきゃいけないんだ……」
「それはこっちのセリフなんですけど~? あーあ、まぁや輝等羅様と一緒がよかったなぁ~」
鹿苑寺桂馬と竜胆摩耶。
軍からの正式な指令で泊まり込みの偵察任務を受けた二人が、さっそくの不仲ぶりで悪態をつきあいながら、機材を積んだボートから降り立った。
それを。
「にゃっふっふ。無事に到着したみたいだよ。モニター出すね」
「……WAO! 二人の姿がはっきり見えてる! でもバレてないね?」
「これが……手果伸が天常家資本で清白開発室長と共に作ったという新型超小型ドローンか」
「オーッホッホッホ! 先日の戦いからさらに性能を上げておりましてよ!」
天久佐奪還戦で本隊の前線基地となっていた上島の一角で。
「ねぇ……これって盗さ」
「偵察任務を受けた二人の安全を後方から支援するために必要な措置なんだ。理解してくれマイフェイバリットライブアライブ黒川めばえちゃん」
「え、なに? まい……?」
「マイフェイバリットライブアライブ」
「……繰り返してとは……言って、ない、わ。黒木終夜」
「はい」
本作戦立案者の俺とオリー、二人の保護者的存在である佐々君と天常さん。監視システムを構築しているタマちゃんと……二人に万一があった際の治療役として来ていただいた絶対的俺の推しの子黒川めばえちゃんを加えた6名と。
ヴンッ。
「……細川、用意はいいわね?」
「問題ありません。レクリエーション、いつでも開始できます」
もろもろ用意した仕掛けの発動役を担当する細川さんを足した7名が。
「やっぱり、これ……まともな任務じゃ、ない……!?」
「ご安心を、黒川さん。天2では日常茶飯事ですわ!」
「えぇ……」
若干一名の困惑と共に、見守る。
「OK、それじゃいっくよー!」
「オペレーション・ピンチを中略、仲良し大作戦! 開始だ!」
ある意味ではとても俺たちらしく。
ある意味ではとてもチートめいた。
(俺の前世知識をアテにした、バカらしいにもほどがある作戦……どうなることやら、だ)
鹿苑寺君と竜胆さん。
不仲な二人を仲良しさんへと変革する、荒療治的大作戦が始まった。
※ ※ ※
まず、弁明させて欲しい。
現状不仲な二人を無理矢理にこんな状況へと追い込んだことについて、だ。
嫌な奴と無理矢理組まされて、嫌な時間を過ごさなきゃいけないそのストレスは、非常に苦しいものだろう。しかも与えられた作戦の真の目的が、その嫌な奴と仲良くすることにこそあるなんて。
そんなのを強制されるとあったら、そこに倫理はないのかと怒りたくなるのは当然だ。
だが、俺は知っている。
あの二人においては、その苦しみが覆る可能性が大いにあるのだということを!
なぜならば!
“鹿苑寺桂馬と竜胆摩耶には、個別のカップルルートがある”
俺はそれを、知っているのだ!
(カップルルート。それがわざわざ用意されているってのは“この二人がカップルになることには意味がある”という作り手側からのメッセージに他ならない)
事実、公式的正史と謳われる小説版HVVにおいても二人が恋人になる過程は描かれており、この二人の仲良しが、人類の未来にとって大きな意味を持つことになった。
即ち“佐々家派と天常家派の融和”である。
(原作の舞台となる隈8小隊において、二人は対立する二家をそれぞれ背負う形で活躍する。そんな二人がカップルになることで、隈本の有力組織が繋がりを深くする切っ掛けとなり、より日ノ本が一丸となって戦いに臨むようになる……って筋書きがあった)
二人が仲良し。つまり、佐々家と天常家が仲良し。
大局的に見てとても大きな意義を持って、二人のカップリングは推奨されているのだ。
(もちろん、利点はそれだけじゃあない!)
この二人のカップリングが成立すると、なんと、二人の持つデメリットが解消される!
具体的には鹿苑寺君の突撃癖と、竜胆さんのナイフイベント。
いずれも残しておいたところで小隊運営的にはデメリットしかないものだから、運営重視の熟練プレイヤーの中には、ゲーム開始から二人をくっつけてしまう奴すらいたほどだ。
もちろんそれぞれ真白君とのイベントも完備されているから、あくまでそれらも一つの選択でしかない。
だが、あえて彼らを狙わないなら、とりあえずくっつけておいて損はない二人なのだ。
二人が仲良し。つまり、二人がより優秀になる。
個人という側面から見ても、二人がカップリングされることで得るメリットは大きいのだ。
ぶっちゃけ公式からお出しされてる範囲なら、二人の相性ほぼほぼ120%ベストマッチだからね!
毎日のように言い合う二人の姿も、俺にはどっかの次期当主と現当主がじゃれ合ってるのと同じようにしか見えてなかったし。
伊達にエピローグで末永く幸せに暮らしました保障されているペアではないのである。
(以上のことから、俺は今日……悪になる!)
吊り橋効果だろうがストックホルム症候群だろうがなんだっていい。
二人には仲良くなってもらって、ぜひとも落ち着いてもらいたいのだ。
そしてあわよくば……その雰囲気が伝染し!
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「さ、最近……どこも色めいてる、わ、ね」(最強最カワおどおど顔)
「そうだね。めばえちゃん」(イケボ)
「どこもかしこも、恋、ばっかり……」(超絶セクシーため息)
「そうだね。めばえちゃん」(イケボ)
「………」(絵になる沈黙)
「どうしたんだい。めばえちゃん?」(キメ顔)
「……あ、あの、あなたは……」(輝かしき赤い頬と上目遣い)
「うん?」(超クールで優しい視線)
「誰かと……恋、とか……しない、の?」(最強最速最短の殺し文句)
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みたいな。
みたいなみたいなみたいななーーーーー!?
そういう空気? みたいな? そういう雰囲気? みたいな?
そういうシチュエーションみたいなのは大いにあり得ると思うわけなんだ!!
いやもちろん俺が相手じゃなくてもいいんだけどねー!?
そこはほら、可能性の話だから、ねっ☆
「……あれ、なに?」
「いつもの発作だ、夢の国へ旅立っている。そっとしておいてやるといい」
「えぇ……」
ともかく!
小隊全体がポジティブな雰囲気になるように、本作戦は大事だということである!
以上弁明終わり!
作戦を本格稼働だ!
鹿苑寺君と竜胆さんの仲良し度を、稼ぎに稼いでハッピータイムを目指そう!
※ ※ ※
「お、動き出したよんっ」
タマちゃんの言葉に、俺たちは一斉にモニターに注目する。
動き出した二人はまず、島の中でキャンプを張れそうな場所を探し始めたようだった。
「腰を据えて調べることが必要な任務だからな。安全な場所を探すのは大事だ」
「まずは島の全体を把握してからの方がよいのではありませんの?」
「それにしても起点となる場所は必要だろう? 一息入れられる場所の有無は大きい」
二人の動きをモニタリングしている佐々君と天常さんによる解説。
それをなるほどふむふむと頷きながら聞いている我が推し。
「……控えめに言ってここは天国なのでは?」
「シュウヤ、ちゃんとモニター見て」
俺としてはめばえちゃんだけ見ていたい気持ちしかないが、止む無し。
オリーに首をグキッとされながら、モニターを見る。
そう大きくない島だからこその急勾配に四苦八苦しながら、二人は高所を目指していた。
ひとまずはセオリー通りの動き、ただ……。
「……Oops.この二人、お互いを一切手助けしようとしてないね?」
「だな」
「ですわね」
仲がわるわるな二人は、互いに顔を見合わすたびに「ふんっ」とそっぽを向くばかり。
っていうか、ここにきてもゴスロリな竜胆さんに渋々手を差し伸べた鹿苑寺君に、竜胆さんがナイフ出して牽制してるし。
(これは……ダメかもしらんね)
もってくれよ、俺の原作知識!!
次回! 鹿苑寺、死す! バトルGO!
……にはならないように、しっかりと見守っていこう。
※正式版※
やめて! 竜胆さんとの共同作戦、彼女の機嫌が不機嫌になったら、ワンミスでナイフの射程圏内にいる鹿苑寺の命がゴッドスピードしちゃう!
お願い、死なないで鹿苑寺!
キミが今ここで倒れたら、児童養護施設のみんなとの約束はどうなっちゃうの?
終夜の原作知識はまだ残ってる。ここを乗り切れば、ゴスロリスキーに勝てるんだから!
次回! 鹿苑寺、死す! バトルGO!
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