第111話 育っていくもの
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ちょっとずつちょっとずつ。
交流会を行なった、その翌日。
今日もまた、俺たちは朝活にいそしんでいた。
「どうだ黒木、このボクの柔軟力は! もう完全に地面とピッタリだぞ! 腰も浮いてない!」
「普通にすごいぞ佐々君」
「へはっ! そ、そそそそそうだろうそうだろう! なんならこのまま手だけで体を持ち上げ……」
「それするならメインで使う筋肉が違うな、ここだ」
「……はうんっ!」
順調に成長を重ねている佐々君に次の段階を示しつつ、俺は集まったメンバーを確かめる。
「後輩組、ラストスパートですわよ!」
「はいっ! 輝等羅様!」
「うおおおおお!!」
今日は天常さんが鹿苑寺君と竜胆さんを請け負い、面倒を見ている。
基礎体力の向上を目指したグラウンドの走り込みは、二人が競い合ってこなすのも相まって効果大だ。
天常さん自身は二人に爆速で先行して周回差を付け、すでにゴールしている。
「こうきて、次はこう、かしら?」
「はい。お上手です、巡様」
別のところでは、パイセンが細川さんから戦いの型を学んでいた。
割とくるくる回る動きが多いのは、どこぞの神楽舞をベースにした動きだかららしい。
現人神モードの運用においては、あれが最適解なんだとか。
ちなみにこの動きは建岩流。
訓練効率を考え事前に姫様から細川さんへ指導が入り、そしてパイセンへと伝授されている。
そして当の姫様は――。
「“神懸かり”……参ります」
「はい!」
「ッス!」
――清白さんと瓶兆さん、二人を相手に本気の組み手を行なっていた。
※ ※ ※
「わあーーーー!!」
「ぎゃーーーーッス!!」
ぽーんっ、すぽーんっ。
二人が景気よく宙を舞うのも、これで何度目か。
「立って。構えて。次」
容赦なく、そして的確にシゴいて二人を鍛え上げる建岩の姫様。
ステータス的には拮抗している清白さんだが、神懸かりが載ってる分、幸運技能をぶち抜いて吹き飛ばされている。
いわんや兵器ちゃんをや、である。
「ぜひー、ぜひー……つ、辛い!」
朝活メンバーの中でも特に強度の高い訓練をしているというのもあって、瓶兆さんの顔に余裕はない。
それでも根性出して立ち上がり、再び姫様へと向かっていく。
それは根性大好き鹿苑寺君をして「覚悟決まってんな」と感嘆するレベルだった。
(昨日の今日で、変わるもんだなぁ……)
前日首根っこ掴まれて引っ張られてたとは思えない、この変わりよう。
間違いなくイベントを起こした成果がそこに広がっている。
「いい空気だな、黒木」
「だな」
密着し、さらなる柔軟に勤しみながら、俺と佐々君は高みの見物である。
「小隊内の士気がさらに向上しているからな」
「後輩組もここの基準を理解した、ということだろう。誇らしいことだ」
目に見える形の結果は、こうして確認できた。
(あとは、相性補正と関連性補正について、だな)
目に見えないマスクデータ。
ぶっちゃけ今日のメンツが昨日と同じなのは、その確認のためである。
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超常能力“他者ステータスの閲覧”を行います。
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(見るべきは、成長の伸び率)
10分刻みで更新されるステータスの変化を、キッチリとチェックする。
俺は日常的に周りのステータスを“視て”いたから、その変化を見逃しはしない。
「……ふむ」
「どうだ黒木? 何かわかったか?」
「そうだな……」
みんなのステータス変化をチェックした、その結果。
「間違いなく、伸びが良くなっている」
「本当か!?」
「あぁ」
喜ばしい事実が判明した。
「成長率、上がってたのね」
「やりましたわね!」
「うおおおお! これが絆の力って奴か! すげぇ!」
すぐにみんなへ伝えれば、歓声が上がった。
「ねぇねぇ、黒木せんぱぁい。それってぇ、まぁやと輝等羅様がこれからもぉ~~っと仲良くなったら、もぉ~~っと強くなれるってことですよねぇ?」
「そうなるな」
「……きゃはっ☆ なんかそれってぇ、スイッチ入っちゃいますねぇ~☆」
ナイフちゃんには若干入っちゃいけない何かが入っている気がするが、それはそれ。
「つまるところ、青春に無駄はなし! ですわね!!」
「やはり、何かしらの超常による影響があるのでしょうか?」
「建岩の資料を当たればなにか分かるやもしれませんし、また近々実家に参ろうかと思います」
開かれた可能性に、俺たちは今はただ喜べばいい。
「……そっか。もっともっと、強くなれるんだ」
「よかったッスね。帆乃花さん」
「! えっ、一二三ちゃん。今……!」
日々の積み重ねが、みんなの何かを育んでいく。
「~~~~っ!! 一二三ちゃーん!!」
「おおっとぉ! なんッスかいきなり……へへっ」
代わる代わる訪れる変化を受け入れながら、またひとつ、またひとつと。
「さ! 効果があると分かったなら、この機会を逃す手はございません! 訓練も、交流も、ますます気合を入れて参りましてよ! よろしいですわね!」
「「おおー!」」
天2はまだまだ強くなる。
そしてその強さが何かを守り、新しい何かが育つ可能性を広げていくのだ。
だから――。
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「――だから、一緒に訓練をしよう! めばえちゃん!!」
俺も、絆をもっともっと育てたい!
めばえちゃんとの新しい可能性を、俺も広げていきたい!
「……あなたの言う効率は、理解した……わ」
「じゃあ!」
「でもあなたとは、無理」
ぷいっ。てってって……。
「………」
「今日もフラれたな、黒木」
「ちゃんと話を聞いてもらえるだけ有情ですわね」
………。
「……うぐぅぇあぅおおおおおおん!!! どうじでぇぇーーーー!?!?」
「「自業自得」」
「ヴぇああああーーーーー!!!」
推しの塩対応。
やっぱ……辛ぇわ!!!
組織内関係が円熟してきていろいろな組み合わせ、繋がりが楽しめるようになるの好き。
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