第105話 いつもの朝練、増えたメンバー
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日常は少しずつ変化して。
3月も半ばを過ぎて。
隈本に、桜の季節がやってきた。
「スッ、スッ、スッ、スッ……」
夜明け前のこの時間。
日課のランニングコースを、いつものように一定のペースを刻んで走る。
「ふっ、ふっ、ふっ……」
それから半歩遅れて走るのは、隈本御三家がひとつ、佐々家の次期当主――佐々千代麿君だ。
「スッ、スッ、スッ、スッ……」
「ふっ、ふっ、ふっ……」
体を起こすための馴らしランニング。
だからずっと変わらない一定の速度で続けてきたこれに、かつてはボロボロになっていた佐々君が、今はピッタリとついてくる。
「……そろそろスパートをかける」
「!」
いつからか、お決まりのように声をかけるようになったそれを今日も口にして。
「……来いっ!」
「ふぅっ!」
ラストスパート。二人の競争。
踏み込みからの、ステータス全開での加速ダッシュ!
「は、やっ!? くろ、く、のぉぉぉーーーー!!!」
必死に食らいつこうとする佐々君を振り切って、最高速ちょっと前くらいのペースで誰もいない天久佐パールラインを駆け抜ける。
道の駅から坂を上って基地内へと突入し、ゴールへ向かって大ジャンプ!
「ふっ、んっ!!」
くるくる前宙3回転!
ズサッとグラウンドの砂へと着地して、跪くようなポーズで制止する。
パチパチパチパチ……!
そこへ、複数人からの拍手が響いた。
「おはようございます。終夜様」
「おはよう! 黒木くん!」
「ほんと、朝から元気ねぇ……」
すでに基地内の寮へ移住を済ませている、姫様、清白さん、パイセンの3人と。
「今の動き……契約鎧の補助なしでできるのかよ!? これが、緑の風の実力……!」
同じく寮に入ってる、期待の新人機動歩兵――鹿苑寺桂馬君だ。
天2が拡張されてから、いつもの朝練メンバーもさらに賑やかになっている。
「はぁっ、はぁっ、はぁ~~~……くっ」
「毎日毎日ご苦労様でしてよ、千代麿」
「千代麿様、タオルです」
「ふぅ、ふぅ。ありがとう、細川」
遅れてゴールした佐々君を労うのは、彼と同じ隈本御三家の一角、天常家の現当主――天常輝等羅さんとその従者――細川渚さんだ。
この3人はいわゆる幼馴染という奴で、原作ハベベよりも御三家の距離がさらに近くなったこの世界では、それはもう仲良しさんをしている。
「輝等羅様~☆ 今日の柔軟、まぁやとしませんかぁ~?」
「いいですわよ、摩耶さん。今日の衣装もキマってますわね」
「きゃー! 輝等羅様に褒められた~☆ まぁや嬉しいです~☆」
そこに最近、桂馬君と同じく期待の新人ゴスロリ整備士――竜胆摩耶さんが引っ付くようになっている。
「おい竜胆。お前レベル差考えて訓練したらどうなんだ? 天常さんと組んでも相手にあんまり得がないだろ」
「はぁ~? なんでそんな萎えること言っちゃうの? 輝等羅様がいいって言ってくれてるんだからぁ、いいに決まってるでしょ~? これだから教育にうるさい佐々家のワンちゃんはさ~」
「なっ!? 今の時代は一分一秒が無駄にできねぇだろうが! より質の高い訓練しようってのの何がいけねぇんだよ! 非効率の塊がよ!」
「この衣装の魂が理解できない程度じゃお相手になりません~。一昨日来やがってくださいね~、ロ・ク・オ・ン・ジ・くぅ~~ん☆」
バチバチィッ!!
「コラッ! 喧嘩するくらいなら訓練に時間使うべきだろう。鹿苑寺! 竜胆!」
「おーっほっほっほ! 二人は今日も元気いっぱいですわねぇ」
「……千代麿様。場を収めるためにも今日は鹿苑寺様と訓練なさるとよろしいかと思います」
「待て細川、今日は黒木と久々に……う、わかった」
親佐々家派と親天常家派が加わって、御三家周りもますます層が厚くなっている様子だった。
それぞれ忙しくなったのもあり、毎日これだけのメンバーが揃う日は減ってしまったが、それでもみんなで訓練するこの時間は俺たちの日常として、もう欠かせないものになっている。
ちなみにこの朝練。
我が親愛なる最推しにして今を生きる真なる幸福の体現者、黒川めばえちゃんももちろん毎日誘ってはいるんだが。
「じー……」
ご覧の通り。
今はまだ、遠くの物陰からこっそりと見つめてくるだけで参加まではしてくれない状態だ。
こうして早起きしてくれてるし、自主練はそれなりにやってて基本はできてるみたいだし、いつか手取り足取りきっちり鍛え上げたい所存である。
いや、いっそ今からでもククク――。
「――終夜、ステイ」
「はい」
やりすぎ推し活、ダメ絶対。
「まったく……さ、私たちも始めましょうか」
「はい。巡様」
「よーし、頑張ろう!」
ジャージを脱ぎ、軍学校指定の体操着姿になるパイセンたちも、やる気は十分な様子。
さて、今日もみんなでしっかり朝練……の、その前に。
「なぁ、清白さん」
「なになに、黒木くん?」
俺は一つの疑問を、清白さんへと投げかける。
「……それ」
「うん?」
「そこの兵器ちゃん、どうするつもりなんだ?」
「気づいてたんなら早く助けてくださいッスよ! 黒木さぁ~~~~ん!!」
俺が指差した先。
清白さんに首根っこを掴まれ引きずられ、逃げられなくされていた兵器ちゃん――瓶兆一二三さんが泣いていた。
新メンバー、掘り下げていきます。
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