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ノアの旅人 ‐超・高難易度ダンジョン攻略専門の底辺クラン、最強キャラバンで死にゲー系迷宮を攻略する譚等 - / 第6巻~新章開始   作者: 西井シノ@『電子競技部の奮闘歴(459p)』書籍化。9/24
第13譚{勇者の街・b}

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②既知


{ユーブサテラ、キャラバン内・晩餐会}



「高難易度ダンジョンの体当たり偵察を兼ねたバトルロワイアル。ナナシの仮説が本当なら不可解な点が一つある。」


 一眠りしたテツが晩飯の匂いと共に目覚め、俺たちは恐らく、この世界では最後になる晩餐を開いていた。すなわちあれから、かなりの時間が経ったのである。不安は自ずとそれぞれが抱き始めていた。


「不可解な点ね。……ミックが来てない事とか?」


「そう。……もし、未踏破領域の調査がノーリスクで出来るなら、ミックは自分で来たいはず。彼女達S級シーカーからしたら素人同然の僕たちを送っても面白くないからね。それよりも自分の眼で見てみたいと思うのがシーカーの性だと思う。」


 テツの推測は的を得ているだろう。高難易度ダンジョン、取り分け未踏破領域などはオーパーツや金銀財宝、未知という名の知的財産の宝庫だったりする。故に新規の情報は本来、自分達だけで独占しようとするクランが多数派で、もし公表したとしても国絡みの極秘トップシークレット案件になってしまった事例も多々ある。


「異世界と見せかけた人工のダンジョン。もしくは特殊空間。まぁ転移先ここの仕組みはどうであれ、いま僕が一番恐れているのは転移事故。これは現状からは薄い線とする。二番目はシーカーライセンスの抜き打ちテストの線。僕はまだ経験無いけど、故郷にいた探索士たちが言うには資格なしと見なされれば急に剝奪されたりも…」


「それは考えすぎだろ。」


 鶏のスープを啜りながら俺は考える。


「そうだと、いいんだけど……。」


「例えそんな無粋なイベントだったとして、誰もテツの能力を疑わないさ。もし剥奪されるようなら、そのテストの方に大きな欠陥が有る。」


「うんむうんむ、プーカ氏もそう睨むでゴザルよ。……うんむ。おかわり!」


 プーカは俺のつくった特製ちゃんこ鍋を突き、舌鼓を打って頷きながら喋る。アルクもそれに続くように「そうだよ!」と箸を咥えながら言った。


――ふふ、さぞ美味かろう、その鶏団子。もっと食べなさい。白菜も取りなさい。


「ライセンスが無くてもナナシのスペシャルな推薦状が有るんじゃないの?」


 故郷の魔術学院で担当寮監督せんせいに貰ったやつだ。


「あぁ、アラタよ。あんなものは学校の、もっと言えば一教師の匙加減でいつでも取り消されんのさ。それに珍しいものだからまず詐欺を疑われる。所詮は他力本願の紙切れなんだ、万能でも無ければ過信も良くない。」


 それにしてもよく覚えていたな。この子は本当に。


「何であれ死んだら戻れる、戦意が無ければ戻れる、なんて取り返しのつかないリスク前提の立ち回りは俺たちには合わない。グランデ祭の終了は19時だったから時間いっぱいまで籠城、もし戻れなかったらこの地で新生活を始めるくらいの意気込みは必要だ。……まぁ、食料も有るみたいだし、というか眠いし、見張りも交代だし。じゃあテツ頼む。……俺は寝てから次に備える。」


「分かった。」


 と、テツが頷いたところで数分も経たずにエルノアたちの身体が薄く消え始める。転移されてから10時間。確りと運営されていれば観客も帰る頃合いだろう。それにしては今まで時間が経ち過ぎているが、トラブルが起こっていたとしても自害する選択肢は無い。


――あぁジーザス…。徹夜はやだ。徹夜はやだ。徹夜はやだ。徹夜は……。


「ナナシ。」


「....なんだよ?」


 俯く俺にエルノアが話しかける。


「君の傍に居れない状況は不本意だがら、一応伝えておく。」


「おうおう優しいねぇ。でも、手短に頼むよ?」


「いつもの倉庫は――ガリッ!!……八角と繋いである。」


 そう言いながらエルノアは俺の腕を噛んで、血が出る程に歯形を付けた。


「小指をふぁげふのは……、ん、難しいと思うけど。通常のやり方じゃ開かない。なんせ異世界だからな。あと君の貰ったそれ。その逆鱗ワッペンには再生修復効果が有るってセカイが言ってた。」


――先言えよ。


「それは、……知らなかった。」


「一応伝えておけって。」


 再生修復機能。恐らく何に作用するものなのかは限られてくる……。


「まるでセカイの犬だな、エルノア。」


「睡魔で視力が落ちたらしいな。ボクは猫だろ。」


 エルノアは顔を拭きながら真面目にそう返す。


「皮肉だったんですけどね……。」


「それと最後に。君がいつ何処で死のうがボクには構わないが、君に心残りが出来るのは不快だから一応言っておくぞ。」


「はぁ...なにかな?」


 俺は消え行くエルノアたちの前で服を叩きながら、箸と食べかけのちゃんこが入った器を机に置いて立ち上がる。


「君の短剣を盗んだのは……、ボクだ。」


 エルノアと俺の間に一瞬の沈黙が生まれる。


 俺はその言葉に驚いたように眉を上げてみるが、おかしくなって口元がニヤけて、そのままの顔でエルノアの方を見た。


「おぉ。それは、……知ってた。」


「……ったく。」


 エルノアは目をまん丸くした後、いつもの調子で興味無さげに目線を逸らしながら、この世界から消えた。








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