①「ババ」抜き
第13譚{勇者の街・b}
勇者の街a
続き
{『勇者の街:ドラコ・グランデ』→『名称不明地点』}
「要するに、元の場所と地続きでない。特定高難易度魔術でしか出入りできない。後は、異世界と“認定されている”。こういった条件に該当すれば大抵は異世界に転移された。或いは、言い方を変えて島流しをされた。って事になる。」
俺は机の脚をたたみ、膝くらいの高さにした台の上に、カードを叩くように落とした。これでお前らジ・エンド。
「ほら。」
「ウノ言ってない。」
「必要ない。これはババ抜きだ。天に見放され運が尽きババを引いた馬鹿な敗北者だけが嫌な思いをする闇のゲーム…」
キャラバンの外では微かに阿鼻叫喚の声が聞こえてくる。激しい戦闘、聞いたことも無いモンスターの叫び声、魔法攻撃音。金属音、爆発音。そんな中でぬくぬくやるカードゲーム楽しぃい。
「あんなに急いで準備してたのって、、、カードゲームかよ!?」
アラタはよく驚いた顔をしていた。
「それに、異世界転移って!!」
俺はハートのエースの片割れを掴むためプーカのデッキに手を伸ばす。プーカは一枚だけ高く上げたカードを取らせようとするが、俺は無視して一番端っこ!
「プッ…。計画通りぃ。」
「なん…だと…?」
俺は手元に残ったジョーカーとエースをシャッフルし、リザに究極の選択を強いる。
「ふん、ナナシ。その答えは、右…いや、左だァ!!」
「はッ、バカめ!いつからジョーカーが右に無いと錯覚していたァ!! ――で...話を戻すが、恐らく渡された鱗のワッペンが、俺たちを元の世界に戻してくれる道具だ。どこにいても死ぬようなこの場所で、"失くしたら死ぬ"ってことは、失くさなきゃ死なないってことになる。まぁ外の様子からそれは確証に変わった。そしてそんな便利グッズをこの大会に寄付、というか貸し出したのがセカイという魔女。彼女の新しい能力は、契約した龍を武器や防具にして召喚する力だったはず。エルノア?」
「そうだ。いちいち聞くな。」
「間違ったらキレる癖に…。更に、トーナメントの司会みたいなことをしていたオッサンの言いぶり、観客がいる事実から察するに、今大会の中身は恐らくトーナメント、と見せかけた“バトロワ”だ。」
「恐らくばっかやん。」
プーカが何気ない一言を放り込む。
「それはさっき……」
テツが小声で水を差そうとして、止めた。
「痛い所を突くなぁお前。――しかし、実にその通りでこの話は仮説でしかない。ただ、セカイが居た場所の一つ手前に座ってた、眼鏡をかけた女の人には面識があった。あれは{フェノンズ}シーカー部隊の副隊長、ミック・ラインズ。通称ミミック。所属クランのティアは堂々の一位で世界最高峰。見た目は狂ったオタクっぽいけど、シーカーライセンスはS級のマスター。制限領域ゼロ。限界規制不干渉。正真正銘の怪物だ。」
外では魔物が暴れ、時折キャラバンを噛みついたり棍棒で叩くような音が聞こえる。その度にアラタは肩をビクつかせ壁を見渡す。
「大丈夫だ。エルノアが転移しなきゃキャラバンは消えない。それに戦意喪失して蹲ってた若人達は軒並みワッペンで戻ってる。案外リタイアする奴には優しい仕様なんじゃねぇーの?」
「えぇ、そうなの? ――あ、アガリだ。」
「一番だんね。ほんではいプーカも...あがりぃ!」
俺はリザの正面を向いてカードを見せる。ババ抜きなど相手の僅かな緊張や、その動作を見抜ければ造作もない楽勝遊戯。かかってこい機械イジリ女!!
「でも君のは、そうでもないぞ。」
エルノアが呟く。
「え?」
「サインを書いただろ?」
「はぁ。」
俺はいつの間にかワッペンに記されていたサインを見る。受付で俺が書いた、間違うこと無き俺の字。
「早く引けよ。」
「あぁ...」
「君のワッペンだけ“逆さ”なんだよ。ナナシ。」
「逆さ?」
俺はポケットに入れていたワッペンを取り出し、マジマジと確認した。重なった鱗の痕跡に対して、表目のザラザラだけが逆さに生えそろっている。
「よっしゃー!アッガリィ!!晩飯頼んだぞー!」
リザが俺のカードを引いて机に叩く。
「え、ちょっと待て。」
「待ったなーい。」
手元に残った二枚を見比べて、俺は言葉を失った。
「これ、ババですか…?」
「セカイからの、な。」




