⑤誰、の本
「オレつぇえええええええ!!!」
俺は動揺した手の震えを止めながら、本をバッと閉じて床へ投げつけた。
「ははっ、相変わらず凄いねサテラさん。流石だよ。」
アルクは椅子の後ろから笑って言った。
{隕石の街・外れの街道}
外に広がるカルデラ街を眺める。建て直された神殿は確かにクレーターの中央に位置していた。俺は地面にたたきつけた歴史書を拾い上げ、埃を叩いて紙をめくる。
「さながら、あの巨神兵の遺骸の位置は爆心地って所か。この本の内容が本当なら。」
カミサキ・サテラという怪物はあろうことか育ての親だ。子供相手に本気を出す大人げない奴だと思っていたが、あれでも手を抜いていたらしい。遠い日の思い出、地獄のような訓練の日々、本当に本気を出されていたら俺は赤子の腕を捻るように殺されていたのだろう。
「元々は外にも有ったんだね、あのゴーレム。」
シーラと言う特殊領域、魔法を制限される高難易度ダンジョンには、必ずその要因が存在する。巨神兵と言う未知が魔法を制限する何らかの力を持っていれば、オルテシア大陸全土のパワーバランスを揺るがす『ゲームチェンジャー』になっていたことには違いない。
「あのダンジョンで稼働する巨神兵の遺骸は魔力を無効化するって情報も有る。王子の判断がどうであれ、フェノンズは結局潰すつもりだったんだ。この王国にあった巨神兵を。というか、これが本当なら凄い本だな。カラビナの構成員は大物ばかりだ。……って、アレ?」
捲れど捲れど、白紙である。
「文字が、……無い。」
「読めないの?」
テツが残念そうな顔をしながらページを覗いた。
「ナナシが落とすからだ。本が拗ねた。」
アルクが呆れた様に呟く。
「いや、関係無いでしょうが……。きっと、魔術式が組まれてたんだ。アルク、あのオッサン一体何者なんだ。」
俺が紙切れになった本を机に置くと同時に、アルクは「えぇ」と驚いた声を漏らした。
「えっ。ナナシが連れてきたんじゃないの……?」
「いいや?」
隕石の街、高難易度ダンジョン{巨神兵の遺骸神殿}。
破壊から生まれたこの神秘の迷宮に、俺たちが挑む日はもう少しだけ先になりそうである。
「じゃあさぁ、まさかさぁ、あれがベイルさん……、とか?」
突拍子の無いアルクの推理に俺は彼の肩を叩いた。
「ははっ、おいおいおいおいおいおいッ!!――まっさかぁ!!全くメルヘンな頭をしているねアルクくん!!ぷはっ!」
「似てるもんだね、君の煽り口調もさ……。」




