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ノアの旅人 ‐超・高難易度ダンジョン攻略専門の底辺クラン、最強キャラバンで死にゲー系迷宮を攻略する譚等 - / 第6巻~新章開始   作者: 西井シノ@『電子競技部の奮闘歴(459p)』書籍化。9/24
第10譚{運命の村}

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④運命の村


 その後の2日間、この村で襲われるだとか煙たがられるだとか変わった様子は無く。キャラバンでキャンプをとりながら昼には市を覗いたり、工芸品の見学をさせてもらった。はっきり言って村長宅での一軒がなければ最高の村であったし最高の滞在であった。例えるなら小川沿いのキャンプ場に映画村のセットがくっついた様な、古風で自然に恵まれた美しい場所。特に天然温泉を引いた石造りの簡素な露天風呂は、

観光名所と成り得るような可能性を感じた。しかし反面、夜は格別に暗く不気味である。電気を通してくれ、電気を。


「なんだかんだ良い村じゃねぇかー?」


「明日何もなければね。」


 リザの言葉にアルクが釘を刺した。


「へへ~、大丈夫だって。」


 その言葉に俺も続く。


「そうそう、俺たちがいるって」

 

 根拠のない自身と共に俺たちは眠りに着いた。外では鈴虫の鳴き声と、川沿い特有の涼風が穏やかな初秋の兆しを身体に告げた。全くもって初秋では無いが、霧に満ちたこの村は、つくづく秋のように寒い。



――――――


{ウヌメン村・滞在3日目}


「よくぞお越し下さった。ふむ、二人ほどおらぬようじゃが。しかし、ニーナマもよく来たな、座りなさい。」


 大きな胸に長い黒髪の少女が純白の死に装束でポツリ、座布団に膝をついた。屋敷の周りには多くの人の気配が集い。屋敷の周囲を囲んだ


「旅のお方よ、彼女の、ニーナマにくだされた予言はこうじゃ。3日後の朝方、旅人の前で、蒸発して死ぬ。」


 少女は俯いて何も発さない。


「ニーナマ。主はじき死ぬ。新たな犠牲者が出る前にホレ、今生に言い遺すことは無いかの?旅人様にも忠告してやってくれぬか?お前が今までに見てきたお告げの奇跡とその残酷さ。変えられぬ運命の話を是非、未来へ繋げてくれぬかの?」


「...はい。いえ。その。」


 彼女は言い淀みながらコチラを見る。


「私は...私は、じきに死にますけど。その、」


 言葉に詰まる彼女に村長たちは涙ぐみなから頷く。


「あの、その…」


「うん。…言ってみなさい、ニーナマ。」


 彼女は村長の言葉に一瞬俯き、また顔をパッと上げ俺たちにこう言った。


「あの...よかったら。この村をまだ、その、嫌いにならないで下さい。私はこの村が…大好きなんです。」


「それだけか?ニーナマ。」


「えっ…とぉ、それと、この村で代々伝わる運命のぉ…予言について、そのぉ。」


――なるほどな。


 俺の頭には今、一瞬の光明のような閃きが浮かんでいる。囚われし運命の村。大方昔の伝道者が何を言いたかったのかが分かった。感極まってもう泣きそうである。泣いてしまおう。


「ブラッ…!!ブラボゥ!!!!」


「ナナシ...」


 テツが溜息交じりに名前を呼んだが、無視だ。俺は座っていた座布団から拍手喝采で立ち上がり少女と村長たちの間に割って入って手を広げた。


「素晴らしい!自分が死の淵に立っているというのに、このぉ子は!――最期まで村を愛し、その愛をただの通りかかった旅人風情に伝え、自分のことなど意も介さず村に着いての御話まで…はぁぁぁぁぁ!!!!なんてッ、良い子なんだッ!!」


「――はえッ...!?」


 少女は驚いた顔で俺のことを見る。何十年続いたのだろうか。この伝統自体は昔から有るらしいけれども。


「はぁ、この村はなんと素晴らしい村なのでしょうか!少ない日数では有りましたが我々にはヒシヒシと!もうッ、ヒシッ!ヒシッ!と伝わりました!数多ある美しい工芸品に、それを生み出す職人らの高い技術力!美しく穏やかな小川に新鮮な川魚、豊かな山菜、泉質の優れた天然の温泉!極めつけはこんなにも優しく村想いな子供たち!!」


「ほぇ…それはどうも。」


「いえいえ、ぜひ私たちもこの村のことを勧めましょう!仲間に、家族に、友人に、ですから次は泊まれるところや、整備された道路が有れば訪れやすいところではあるんですけどねぇ!!ああッ!!と失礼!!余計なお世話でしたかッ!!しかしまぁ、エラく素晴らしいものを見せて貰ったものでまったく!!――ですから彼女が死ぬ前に是非とも私たちの技術も見てもらいたいのです!よろしいですね!?!?」


「え、えぇ。」


「よぉし。」


 俺はおもむろに立ち上がった3人へ視線を送る。アルクは唾を呑み、テツはプーカを背負って首巻きを使い身体へ縛り付けた。


「では始めましょう。」


 俺は隠していた短剣の鞘から先で手の輪っかを作り幻影を引き抜く。


「ご覧下さい。これが世にも珍しい呪いのダガーでございます。生また年も場所も不明、一説にはオーパーツ。場違いな超遺物とも言われております。さぁ、この剣に掛かれば切れないものは御座いません!」


「ほぉ、では、えっと、何か堅いものをお持ちしましょうか……?」


 村長は首を傾げる。


「いえいえ、そんな陳腐なものは切りませんよ。ほらアルク氏こっちへ」


 そういうとスタスタと嫌そうに近づいてきたアルクの胸の前を俺は撫でるようにスッと一太刀、空を切ってみせた。


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