②とある探索家の話
「でさぁ、それってどうやんだ?」
飯をかきこみながら、ユーヴサテラのキャラバンに揺られる小さな客が、目を光らせてそう聞いた。
「……んな。最上位のクランにお供するか、自力で方法を見つけるか。…新大陸の渡航方法はこの二つで、名誉とされる“未踏破領域探索者”になるっていう崇高な目標の為に、大志を抱いて頑張ってるトコもある。もしくは“大悪党ガレスの復活阻止”っていう慈善的な目標もあるし、オーパーツの起源を巡ったり、文明や文化、生物、地質、化学、魔法科学の調査及び探査っていう“元祖シーカー”らしい学者肌な目的もある。」
俺は教科書に載ってるようなことを言ってやる。もっともその教科書を作っている人間はオルテガな訳で、彼の言葉を代弁しているに過ぎない訳だが。
「じゃあシーカーっていうのはザックリ、“名声ルート”“慈善ルート”“学者ルート”が有るってこと?」
「ルートっていうかなぁ。まぁルート…、そういうことだ。――お前賢いなぁ。」
俺たちはジマリ街を出た後、新たな旅を始めていた。キャラバンに乗っている小さなお客さんは例の少年である。名前をアラタと言った。
彼は新天地で正式な孤児となり学校へ通うらしい。しっかりと、設備の整った学校に入れるような優しい法律のある国、戦争が滅多に起きないような安定した大国が隣接する治安の良さと、強くて勇敢な魔法使いを多数輩出する魔法学校が有る場所。俺たちはそこまでの、言わばヒッチハイクだ。
「じゃあナナシたちはどのルートのクランなの?」
アラタは俺に質問する。
「ん?いや、俺たちはどれにも属すし属さない。強いて言うなら四つ目のルートかな。なんと言えば良いか...」
「――ご飯ルート!!」
プーカが自室の窓からヒョコっと顔を出し答える。
「――お金ルート。」
アルクは背中越しに、
「――観光旅行。」
テツはハンモックの中で。
「――コイツの研究。」
リザはハンドルを叩きながら、各々が次々に言った。どうにも適当なクランである。方向性バラバラ。
「まぁ、そういうことらしい。ついでに俺もお金ルートに一票。郷土料理もお金がなきゃ高級なのは食えないし、温泉宿もキャラバンの改造もいわんやそうなる。金が無きゃ無理なのよ。」
「お金ルート…」
「結局は金、金、金なんだよアラタ君!!」
俺はアラタの肩を掴み、重みを与える。人生とは何か、旅とは何か、俺の体重とはどんなか、その重みを一身に振り下ろす。
「――わかッ!わかったよ!!それで、何処に向かってんの、このキャラバン。」
俺たちはイーステンが整備した国道の脇道から更に外れた峠への登り坂へ進路を変えていた。地図を見れば次の街までは1山分迂回することになる。
「大丈夫だ。ちゃんと安全な場所に向かってる。ただ工芸品が有名な村が有るらしくてな、リザとアルクが行ってみたいって。一応クエストギルドから金は貰ってるんだ、はした金だけど給料分は働いてやる。ちゃんと感謝するんだぞジマリ街の人達に。」
効率の良い冒険家は、時々こうやってクエストやトレードを並行して行うのだ。
「分かってるよ。超豪華なキャラバンガードだろ。……でも、蓋を開けてみれば《《ガードしてくれるキャラバン》》じゃないか。つまりキャラバンは誰もガードしてない。」
――お前は学校じゃなくて、寺にでも行けばいい。
「グチグチ文句言うな。ほぼボランティアなんだぞ...。それに、ジマリから安全な国までのルートはどれも治安が悪い。現に今だって馬が動かしてるようにカモフラージュをしてだな、凡庸な馬車に見せてリスクヘッジを怠らない...」
「ふわぁ、……ナナシ、前方に馬賊。」
リザが欠伸をしながら言った。
「――出来てないじゃん!!」
「黙らっしゃい、ケースバイケースだ。屈んでろ。我がお金ルートの力を見せてやる。守銭奴のディフェンスは堅ェんだ…。」
「カッコよく無いぞ。」
「うるさいガキだなぁ。」
俺は懐刀をまさぐる。
――あっ。
そこにあるのは刀身を忘れた鞘だけであった。
「テツ、短剣失くした。」
そう言えば、である。
「聞いたよ。でも、無い方が強いんじゃない?」
テツは首巻を後ろへ流し、ライフルを背負ってそう言った。




