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ノアの旅人 ‐超・高難易度ダンジョン攻略専門の底辺クラン、最強キャラバンで死にゲー系迷宮を攻略する譚等 - / 第6巻~新章開始   作者: 西井シノ@『電子競技部の奮闘歴(459p)』書籍化。9/24
第8譚{洞穴シーラの街}

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⑦コスパの女王


「大丈夫か?」


「あ、あぁ…」


 怪我人発見。



――――――


{ジマリ大洞穴・第二層浅部}



「プーカ、C2まで運ぶから応急処置だけして。僕は周囲を警戒しとく。」


「ガッテン!」


 俺とテツが組み立てた作戦はこうだ。


 まず、第二層を浅部、中部、深部と分け、中部の取り分け安全な地帯へC2(=キャンプ2)を設置。可能な限り遭難者を集めフレアでメインキャンプのキャラバンを呼ぶ。メインキャラバンとは1層2層間の通路にいるエルノアたちのことだ。彼らがC2到着次第作戦は終了。これがプランA、俺たちの定めたデッドライン。そしてもう1つ少々現実味の欠けるプランBがある。


「プーカもう一人見つけた!」


 天井からアンカーガンで吊り下がりながら、テツが大きな声を洞穴で響かせる。


「俺が運ぶ!!テツ、こっち見ておいてくれ!」


「分かった!」


 そしてシーラでの死亡原因率を考え、作戦は随時柔軟に変わっていく。2人目のこのオッサンは恐らく滑落をして気を失っている。シーラでの死亡原因の一位も滑落であるが、見渡すに大規模な地割れなどの痕跡は無い。加えて本事故は巨大生物による中隊の士気低下パニックが要因の事故と思われると推測。しかし巨大生物等での死亡事例は存外少なく、もしも隊が分裂しただけで有るならば生存者は多い....はずだ。


「もう辺りにはいない。安全なC2を探しに行こう。」


――そう、C2はまだ見つかっていない。


「よっこいしょういち…。んねぇ、重い!!」


「余裕そうだぞ。そんなもんか~?――あ~昨日の晩飯の食い過ぎですかね?」


「冗談!まだまだ!!」


「ありがとうプーカ。(単純すぎて)本当、助かってる。」


 プーカは元来、薬師だ。獲ってきた得物が食用か否か、どうやったら食べれるかをその場で判断することが出来る。加えて現在、背負っている物資と救助者の総重量は250キロに迫るものだ。薬師兼、運び屋(ポーター)兼、調理師(料理するのは他だが...)というこの怪物スペックは、正直、他クランなら喉から手が出る程の人材。ダンジョン攻略においては重宝される特技ばかりだ。文句垂れる癖に、よく未だにウチに居てくれてる。


「ミートボールね!」


「もちろん。でも良く飽きないな。」


「あれは癖になる味ぃ...」


 毎度同じ手法で飯を強請られるが、正直有り難過ぎてむしろ奢ってあげたくなる。そして確かにアレはいい味だった。俺はまだ試していないが、エスニックな香りのソースもあるらしい。あとは7種のチーズソース、斜塔街の高級トマトソース。ビーフソテー、ジャーキー、ラザニア、ビーフミートのピッツァ。とどめは...


「五層の…」


「五層?」

 テツが俺の小言に過剰反応する。ダンジョンじゃないよ。


「いや、五層のジマリバーガー...なんでもない。」

――ダメだ。集中しろ。


「テツ。思うに、プランBの方が容易な気がしてきた。」


 テツはぼんやりと目線を合わせて頷く。


「えっと、今更だけど...僕もそう思う。でも本当に今は|50:50《フィフティー;フィフティー》ってところ」


――言い得て妙とやら…。


「確かに、数字で言えば俺もそんなもんだ。」


 乗り気では無い。無いがしかし、不穏な空気が張り詰めている。


 プランB。それはとても極論的で行き当たりばったりの代物。しかし有用...且つ条件次第で最善。シーラにおいて最高の手段。終着点であり円環のスイッチ。


「とにかく、今はC2を作ろう」


「そうだな。」


 プランがどう転ぼうとC2を作る過程は変わらない。本来のダンジョンなら中間層のC1から最深部まで直接アタックするような距離であるが、C2に安全地帯があるならばC1すら本当は必要無い。


「嘘、やっぱ70:30」


「―どっちが?」


「七割、B」


 直感だろう。俺もテツも感覚タイプ。しかし今回は要因の明確な直感。だから俺はどうせ後で「だろうな」だとか「やっぱりな」だとかの言葉を返す予定。


「一応聞いとく。理由は?」


「ふん。」


 彼女は自分の言葉の重みを知っている。その一言、一つの判断が全滅に繋がることも。だから冷静に周りをもう一度眺めてから、確認する様に頷き、俺の方へ向いて応えた。


「簡単…過ぎるよ、このダンジョン。」


――あぁーあ。川の流れのように、穏やかに、


「だろうな。」


 俺は深いため息を吐いた。残業が決まった瞬間である。しかしながら、昔から憧れていたプロシーカーと同じ結論に達している事実。幾多の死地を未然に防ぐ独特の嗅覚に付いていけているこの感覚は、子供心にいつだって興奮してしまう。昔はただ、追うことしか出来なかったシーカーの背中が、今は一緒に進みながら並ぶ肩になった。しかしテツは怪訝な顔のまま行く道を見据え、渋い顔をする。


「それと何となく...嫌な予感がする。」


 能天気に浸っていた俺の頭に、その予感は感じ取れていなかった。


「これが・・・」


 俺はポッと、思ったことが声に出かけた。


「何?」


 喉まで登り詰めたこの言葉を呑み込み、足首を捻挫しそうになるような安定しないガレ場をしっかり蹴って、俺は薄暗い前方に顔を向けた。


「いいや、進もう。」



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