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ノアの旅人 ‐超・高難易度ダンジョン攻略専門の底辺クラン、最強キャラバンで死にゲー系迷宮を攻略する譚等 - / 第6巻~新章開始   作者: 西井シノ@『電子競技部の奮闘歴(459p)』書籍化。9/24
第7譚{魔術学院の街}

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⑤会話の横で

「盗み聞きですか?アムスタ。」


 オルテガはコーヒーカップをデスクに置き、アムスタ・シュペルダムと記された書類に判を押した。


 ――特別推薦証明。

推薦者名

ウェスティリア魔術学院ドライアド寮生徒

・アムスタ=シュペルダム

 上級位トッププロシーカー Aランク


監督者名

・オルテガ=オースティック

 極級位アポストルシーカー Sランク


 ライセンス適正を超越する高難易度ダンジョン及び、高ランククランへの参加推薦を継続する。



 仰々しい判は丁寧におされ、それからオルテガは隠し部屋に通じる螺旋状の石階段へ眼を移した。


「違いますよ先生。先生が独り占めしたんです。」


「全く……。全くもって、素晴らしい能力ですね。」


 アムスタと呼ばれた少年は目深に被ったフードを揺らし、苦笑いする。


「ハハハ……、皮肉ですかね?」


「確かに皮肉ですが、賛美も兼ねています。だからこそ私はアナタの為にこのサインを書いている訳ですから。……ナナシがフェアリアに来たときも、アナタの主席評価は確固たるものでしたしね。自信を持って下さい。」


 冒険士寮『フェアリア』から、探索士寮『ドライアド』へ入る為には隠された条件が有る。一つは常識的な話ではあるが本人の覚悟と意志が必要であること。また一つはドライアドが本当に存在するという事実にいち早く辿り着いていること(情報収集能力が問われる為。)そしてまた一つは、フェアリアで上位十名に入る優秀な成績を収めている者。


 すなわち、死者を出すリスクが高く、高度な知識と情報管理能力が求められるこの寮では、編入及び進級を拒否される事があるのだ。


 そしてこのアムスタ・シュペルダムは、最後の条件。フェアリアでの優秀な成績によりオルテガからのヘッドハンティングを受けた生徒であった。


「ユーヴは底辺クランですよ先生。僕は未だに一位です。それもフェアリアの十傑番が全員ドライアドに入った黄金世代で。僕はナナシたちには負けてません。そう言い聞かせてます。」


「それで良いんです。その謙虚さも好きですよ。」


 アムスタ・シュペルダムは天才であった。特段、冒険者や探索士としての危機管理能力、慎重さ、危機回避能力は、オルテガによく評価されているところであり、その能力は学徒の身でありながらA級ランク、トッププロライセンスを取得するように対外的にも認められていた。


「まぁ何度でも言いますが、君のスランプは明確なんです。彼らの強引なスタンスは君とは対称的なものですから、吸収できるものではない。」


「知っています。あのキャラバンは強力だし、革命的だ。野心家の先生ならばてっきり狙っているものかと思っていました。」


 オルテガは笑う。


「野心家ですか……、僕が?」


「えぇ、先生はまだシーカーを諦めていない。それだけで十分に野心的で傲慢です。ナナシもそう思っていたでしょう。それでもなお、疑り深い彼が先生を信用していることが疑問ですらあります。」


 アムスタの表情はいたって真剣であった。しかし、そんな淀んだ雰囲気を消すかのように軽い笑い声を響かせて、オルテガは口元を抑える。


「ハハハッ、フフ……、それは違いますよアムスタ。まだナナシの方が上手かもしれませんね。」


 アムスタは目をぱちくりしながら、そう聞いた。


「と言うと?」


 オルテガはその疑問に立ち上がって答える。窓の外に見える、一台のキャラバンと、その後ろで箒にまたがり彼らを見送る教え子たちを視界に捉えながら。


「ナナシはね、私が楽しんでいるのを見越しているんですよ。私の性格をよく見抜いている。とても深く。思慮深く。」


「楽しんでいる?」


 アムスタは目を細める。構わずにオルテガは言葉を続け、窓を開いた。


「えぇ。だって最高じゃないですか?底辺クランが最強キャラバンだなんて。そうでしょう?」


「殊更疑問ですね。特殊な方舟探索やりかたに重きをおくなら、彼らを自由にさせたら良い。僕みたいに。それでも先生はまだ、その立場を利用しナナシたち縛っています。……それに、例えそうでないのなら言ってやるべきです。『"モノ"に頼ってばかりでは、いずれ痛い目を見る。』って」

 

「……ん?」


 その一言にオルテガは不思議そうな顔をする。


「――あぁ。」


 そして彼は、納得を浮かべたような顔をして言った。


「"そういう"意味じゃないですよ、アムスタ。」


「えっ?」


 ばつの悪そうなアムスタを見て、オルテガは笑う。


「ははっ。昔から君は天然のクセに考え過ぎなんですよ。友を想う心は尊重しますけどね。」


「はぁ。」


 別館の頭上には花火が上がる。彼らに見える様に、魔法学徒の彼ら達が、彼らの為に遊んでいる。ピター・ピニックの駄菓子屋には要注意だ。あそこには、大人ですら肝を冷やすような魔法玩具が沢山売られている。教えを諭す者たちからすれば、頭を抱える問題だ。


 アムスタはオルテガの困ったような顔を見る。


「……えぇ……許可してないですよミスターヘンデル。……まずいですね騒音は。校長にどやされます……」


 そしてオルテガは、今日も楽しそうに落ち込むのである。




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