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ノアの旅人 ‐超・高難易度ダンジョン攻略専門の底辺クラン、最強キャラバンで死にゲー系迷宮を攻略する譚等 - / 第6巻~新章開始   作者: 西井シノ@『電子競技部の奮闘歴(459p)』書籍化。9/24
第5譚{決闘の国}

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②ゴミ溜めの上

「テツ!」


 細く湿った暗い路地を正面に、小銃を軽く構えたテツが佇んでいた。


「見つけたか?」


「うん」


 俺はそう声をかけ、体制を崩す様に寝転んだ少年と目を合わせる。


「お前リーダーがいるっていったな。僕でも分かるぞ……。なんでこんな弱い奴に従ってるんだ!?」


――出会い頭に失敬な奴だ。


{ブルックリン街・未整備の退廃地区}


 路地裏に伏せ込む彼は、テツの前で鋭い眼光を放ったまま叫んでいた。外傷も無く抵抗もしてこないところを見るに、上手く脅したらしい。


「君には関係ない。」


「うるさいロボット野郎!!――お前は自分より弱い奴に付き従う大馬鹿の奴隷だッ!!この国の腐り切った貴族に飼われた家畜以下の大ボケと同じ、野良犬だよッ!!」


「違う。」


 テツは冷静な声色でそれを否定した。


「違くない、お前みたいなクソ野郎は一生後ろのリーダーぶったやつにこき使われるんだ!!そうやって騙された奴からみんな死んでった!!」


「違うって。」


「違うなら証明してみろっ!!」


 テツは眉をひそめ、困った顔で言った。


「証明は出来ないけど。……僕は、女だよ。野郎じゃない。」


――そこかよ。


「え、……女?」


 俺は恥ずかしそうな、かつ少し怒ったような顔をしたテツを後ろに下げ、少年との間に割って入った。


「ウェスティリア冒険者ギルド所属クラン以下略、お前を捕まえる。理由は勿論お分かりですね?さっさとお縄についてたぼれな少年。」


 用意した縄をピシっと張り、正面へ構える。こんなんで5万イェルを貰ってしまうと、他のクエストが馬鹿々々しく感じてしまうだろう。


「近付くなっ!!」


 しかし少年は最後の抵抗と言わんばかりに書物を広げ、血だらけの腕を描かれた魔法陣の上へと置いた。


「なんそれ。」


「僕は撃ってないよ。」


 テツは補足をするように少年の怪我へ指差した。


竜四肢りゅうじしの呪書、マヌケなトグルの道具屋が価値も分からずに撃っていた骨董品。自分の四肢の一部を贄にして力を得られる禁忌だ。これが有れば僕は強くなれるッ!!」


挿絵(By みてみん)


――呪いか。


「止めとけって。」


「近付くなッ!!」


 少年の気迫は本物だった。俺の頭の中では「ドブドラゴン」コースが次第に現実味を帯びていく。もしそうなれば5万イェルじゃあ安すぎる案件。いや、それでも妥当なのか、恐ろしいな。


「分かった。近付かないよ。」


 俺は自身の掌を斬って、手に持っていた縄と短剣を地面へと落とした。


――カチャン、と音を鳴らし倒れる短剣と同時に、俺は手を挙げ降伏の意を見せる。


「それじゃあ降参。――しませんっ!!」


 フリを見せ、俺は手の平から滴る流血を魔法陣目掛けて巻き散らした。我ながら何とも清潔感の無い攻撃だろうか。しかし。


『クソッ!!――竜四肢の解ッ!!……あ?えっ?」


 効果は抜群らしい。俺はそのまま足を伸ばし、膝から先をしならせるように少年の胴体へ蹴り込んだ。


「カッハァッ……!!!」


 少年の指先は微かに燻り、焦げる様に黒く染まっていた。


「竜四肢の呪書。古代文字は読めないが今の感じだと炎竜系統。お前の左腕を焼き焦がし、竜腕に変える代物。」


「なんでだっ!!どうしてっ!!?」


「さぁな。いずれにせよ聞きたいことが出来た。5万イェルは勿体無いが、とりあえずキャラバンまで来てもらう。」


 俺は呪書を拾い上げプーカへと投げる。


――ボトッ。


 振り向くと、さも当たり前のようにキャッチしないプーカが、本を睨め付けていた。


「ちょっと、プーカちゃん?!」


「重い。」


「――お前はポーター何だけどっ!!」


「こんぐらい自分で持ちなはれ。」


 そう言われると、そうするべきな気がしてきた。(子供じゃあるまいし。)と君はそう言いたいのかい?うん?


「まぁいいや。立て少年。」


「フシンだ。」


「良いから来い。街のお偉い人にお尻ペンペンされて、挙げ句一生治らない痔を抱えながら牢獄で死にたく無かったら、"こんな弱い奴の背中を追っかけて"付いてくるんだな。」


 俺は思い出した悪態をここぞとばかりに言い返した。







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