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ノアの旅人 ‐超・高難易度ダンジョン攻略専門の底辺クラン、最強キャラバンで死にゲー系迷宮を攻略する譚等 - / 第6巻~新章開始   作者: 西井シノ@『電子競技部の奮闘歴(459p)』書籍化。9/24
第Ⅵ譚{王族キャラバンガードの譚}
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②今月と来月の予定は王族のキャラバンガード。貯めたお金で武器を買いたいお年頃。強さはお金で買えないけれど、授業は再来月から頑張ります。業物ならたんまり出す。あんまりカスならアイツが出す。


{アーブラ国・門外の木陰広場}


 時は流れ、

 青空に浮かぶ雲は流れ、

 砂を運ぶ風は流れ、

 門前の待機列も入れ違うように流れていく。

 一行は列をなす隊商が受付が開くまでに、

 野営するキャンプ地の丸太にて腰掛けていた。


「ライラ・マーティン。ウェスティリア魔術学院ドライアド寮所属。担当は護衛士ジークだ。」


【ライラ・マーティンの登録情報】

・ステータス

  名前:ライラ・マーティン  

  種族:半鬼人デミオーク

  所属ギルド:ウェスティリア魔術学院ギルド

  所属クラン:王族キャラバンガード{エリン・ヒュドラ}

  役職:メイン 護衛士ジーク

     サブ  なし

  資格ライセンス:探索士D級



「げっ、シーカーライセンス持ってんのかよ。どいつもこいつも…」


 リザは手にした証書をプーカと覗き込む。


「ナナより、やりおるねん。ただのジョーイオカンやん。」


「上位互換。」


「G級試験を落したヤツとは比べるな。まあアンタはぁ、筋が良さそうだけどな?」


 ライラは牙をチラつかせながら、舐めるようにリザを見る。


「授業はいいの~?」


 頬杖をついて問うアムスタへ、

 ライラは溜息を吐くように返す。


「お前も知ってるだろアムスタ。オルテガが招集されて、寮監督が変わった。」


「どんな人かな~?」


「新たに赴任するそいつがイーステンの孤島に住んでるとかなんとかで遅刻中。」


「遅刻は良くないね!!」


 アムスタは拳を握り腕を振る。


「到着まで課外授業。つまるところ寮監不在のいま、学院長が二カ月間の短期でお前ら(ナナシとアムスタ)みたいな特権を全員に与えたって訳だ。」


「ほー。そんな突発案件で王族キャラバンガードか。」


 リザは感嘆の声を上げる。


「すごいの?」


 テツの疑問にリザが答えた。


「あぁ。キャラバンガードにも格がある。私たちでも雇えるような傭兵じみたキャラバンガードから、プロの知識を持った商人キャラバンガード、加えて品格を要する貴族キャラバンガード、トレイダル家のような名門貴族商に付いてるような専属契約の特殊(名門)キャラバンガード、それと同格以上と見なされる高級キャラバンガード、そしてそれらの最上位に位置するのが、失敗を許されない王族ロイヤルキャラバンガード。貰える給料も、与えられる責任も桁が違う。」


 リザは木の棒で土の上に説明がてら絵を描く。


「気に入られただけさ。昔、中等騎士過程の頃にエリン・ヒュドラを護衛した。その時以来の顔馴染みってだけだ。」


「それだけかね。」


「そんなもんさ。」


「いやはあ~」


 ライラはアムスタへ目配せをする。

 アムスタはドキッと驚いたような顔で、

 咄嗟に口の前に人差し指でつくったバツ印を

 唇へ食い込ませる。


「むっ。」


「それでいいアムスタ。探索士ってのは冒険者と一線を画す。大国の貴族は大方、探索士を隣国への諜報部隊スパイだとかと揶揄しているが、オレは目的が違うだけで本質は正しいと思っている。有名どころの探索士はみんな大国の軍隊から派生する別動隊だ。エリンがオレを指名した理由は、ウェスティリアの探索士を起用することで、争いから距離を置きたいんだろう。」


「私情で守ってくれる騎士ほど、頼れる者はないしな。」


「どうだか。」


 リザの言葉にライラは笑う。


「そんなお姫様を守らず、無名の冒険者に油売ってていいのか?」


 ライラは頷く。


「あぁ。ノスティア新国王の候補者であることに違いは無いが、アイツの序列はそもそも低い。だから、国に入れば一先ずはな。今は長旅の休憩がてらお前たちと話がしたい。いいや、差し当たっては目の前にいるヒュドラに仇なす敵対勢力の情報を、衛兵たちに伝えないといけないのかもな。」


 リザは眉をひそめ怪訝な顔で言う。


「おい、お前もそれ知ってるのか?」


「東西南北、末端の兵士まで丸聞こえさ。」


「ほらね?」


 アムスタは片目を閉じて、目配せした。


「ねぇリザちゃん、ノアちと向こうのアレ見たいからお金ちょうだいねん。」


 馬耳東風のプーカが指差す方向、

 隊商の屋台を一瞥してリザは、

 ポケットから出した硬貨を親指で弾く。


「ん。」


「ワーイ!!」


 ライラは暫く黙ってから、リザへ問う。


「アイツも…ナナシのクランの奴なのか?」


「そうだ。(...なんならエース。)」


 リザは言葉を呑み込み、

 吐き出さないように腕を組む。


「ま、まぁいい。なんにせよ、お前らがヒュドラを敵に回したことは大きい。そんな泥船にアムスタが自ら乗り込みに行ったことも驚きだが、ハッキリ言って、状況は目まぐるしく回っている。良くも悪くもな。」


「どういうこと?」


 含みのあるライラの言葉に、

 アムスタは首を傾げた。

TIPS

・キャラバンガード

『さまざまな文化が交流・融合するきっかけともなるキャラバン(隊商)は通常、商品の輸送中に盗賊団などの略奪、暴行などの危険から集団的に身を守り、商品の安全やいざというときの保険のために、複数の商人や輸送を営む者が共同出資して契約を結ぶことによって組織されている。

 そのためキャラバンは、その指揮者、事実上の「隊長」の指揮のもとに隊列を組み、水場や旅程、停泊などを日程を決定するが、キャラバンガードにはそれら計画性の上、更に戦闘能力や、高位になるほどに品格までも求められてくる。

 またキャラバンガードの格を示すTierは数値が大きくなるほどに、求められる能力、そして得られる給料が高いと言われている。重要な点は、キャラバンガードと傭兵の住み分けがなされている所であり、一般に隊長役、あるいは隊長補佐として2、3人のキャラバンガードが雇われる一方、キャラバンガードとは別に、追加で十数人の傭兵が雇われることもあるが、給料を惜しまない者ほどキャラバンガードのみを何人も雇うことがある。その際は、役不足に陥る者が出ることが常である。


(Tier)

Tier6 王族ロイヤルキャラバンガード

 →近衛兵と言って差し支えないCGキャラバンガード。だが近衛兵的な側面に+して全地域、全経路における最高峰の知識が要される。戦闘能力及び、盤面把握、戦況理解、土地勘。全てに長けた者が選出される。(こともあれば、気まぐれで選ばれることもある。)


Tier5 高級キャラバンガード

 →実質的に最上位のCG。優れた王族CGは、おおよそ全員が高級CGの地位を経ている。


Tier4 名門キャラバンガード

 →別名、特殊CG。長きにわたり信頼を得た商人CGや元軍師などが専属契約を結ぶ。大量、高価な商品を運ぶことが多く、任務の危険性が跳ね上がる。同じルートを辿ることが多いので専門性が高い。イメージは「地元最強」。


Tier3 貴族キャラバンガード

 →ベテランのCGが多く、これまでの信頼と実績が求められる。盗賊上がりの中でも、元馬賊や地政学、土地勘に長けた者のみが登り詰める。また貴族らの目に止まるため、多少の品格が求められてくる。 


Tier2 商人キャラバンガード

 →傭兵CGが経験を積むと雇用されることがある。彼らが一般的なキャラバンガードのスタンダード。


Tier1 傭兵キャラバンガード

 →もっとも敷居は低く、元囚人や、元盗賊となんでもござれ。反面、隊長格には上位TierのCGが雇われることがある。その背景には依頼主に麻薬組織やカルトなどの多い事が関係している。敷居が低いためか、稀にゴロツキのゴールデンチームが結成されることがあり、出会った盗賊らは、界隈の先輩方に頭を下げてトンずらしていくので、場合によっては最も優れている。「目には目を」である。


                              ――――』

 


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