表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノアの旅人 ‐超・高難易度ダンジョン攻略専門の底辺クラン、最強キャラバンで死にゲー系迷宮を攻略する譚等 - / 第6巻~新章開始   作者: 西井シノ@『電子競技部の奮闘歴(459p)』書籍化。9/24
第4譚{生きている失われた国}

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/307

③鉄屑渓谷街


『ターノフ。――フォーム・ポケット。』


 最後にキャラバンを降りたリザが、

 その木目に手を当てて囁く。


「ノアズ・アーク」


 それを了承するように呼応したエルノアは、

 キャラバンを輝かせ、その姿を担げる大樽ほどの大きさにした。

 これをプーカが嫌そうに担ぐまでがワンセットである。

 【ノアズアーク・フォームポケット】

 重量はそのままに、無限に収納を可能とする木製ナップザックの完成だ。


「ここまでの快適な陸の旅も良かったのですが、この先はキャラバンでは危険でしょう。ですが私は……、えぇっ?!」


 キャラバン、そんなものは何処にも無かった。

 そう言わんばかりに各々がアクエイと目を逸らす。

 口は禍の元とは言うが、いらん情報を伝えてやる義理は無い。


「さぁ、行きましょう。」


 俺は学者の背中を押して、

 鉄パイプの剥き出した狭い道を進んで行った。



――――――――


{鉄屑渓谷街}

挿絵(By みてみん)



 錆びれた鉄橋の下は川の流れる奈落である。

 至るとこで足場は切れており、

 渓谷特有の湿気が鉄を滑らせ、

 足の縺れを誘っている。

 普通に転落したっておかしな話では無いだろう。


「地図でも説明した通り、この周辺で死者が出ています。」


「学者さん。何故ここだと分かるんですか?」


 俺は辺りを警戒しながら進んでいく。

 しかし人影はおろか生物の痕跡すらも見当たらない。


「転落死体は下流に流れ着きますからね、道中にも死体が無かったという事は、この鉄屑渓谷街でしか死者が出ない筈なんです。如何せん3隊10名が行方不明。いや、全滅していますから、神隠しでも起きたのでしょうか。」


 俺たちが15人と1匹目にならないことを祈るばかりだ。


「この広大な仕掛けは、渓谷の温度を調節するものだと言われています。渓谷に有るのは水力を利用しているからでは無いかと……。」


 学者はそのまま鉄板の上に座り込み、

 口数を減らしながらスケッチを始めた。


「……或いは、水量を調節し氾濫を防いでいたのかもしれません。ここらには家屋もありますから、それが街と言われている所以でも有りますし……。」


 アルクはオドオドしながら音の鳴る場所を見つめている。

 これは通常運転だ。

 しかしテツは時折ライフルのスコープを覗き込み、

 いつも以上に辺りを警戒していた。


「しかし奇妙なことも有るのです。」


 学者はスケッチブックをしまい、

 ゆっくりと深部へ進み始める。


「……機械の狭間に有る軒並みには、人が住んでいたような痕跡は無いんですよね。例えばベッドだとか、火を起こす場所だとか、居住空間はあれど生活感は無いんです。この鉄臭さの為か動物も寄り付かず、生物の骨や遺骸だとかも勿論ありません。あとは……」


 そして彼は、一際大きな鉄製水車の前で立ち止まり屈んだ。


「……血痕だとかも。」


 靴の下には血の乾いた汚れが、

 鉄床の錆びと共に消えようとしていた。

 そうそれは本来、こんな場所には有るはずが無かったもの。

 

 ――っ!?


「ナナシ!!」


 テツの叫び。

 刹那、細い何かが風を切って飛来するような音が鳴った。

 鼓動が高鳴り、臨戦態勢。

 俺は瞬間的に短剣を抜き、学者の眼前へ迫り来る矢を二つに叩いて落とす。

 しかし。


『ぐうぅっ、うわぁあああ・・・!!!』


 ズレた軌道の一矢が学者の腕を穿っていた。


『うッ、腕がぁぁああああああああ!!!!』


 なんつー、威力。

 学者には肉が抜けた様な大きな傷が上腕に空いている。

 ただならぬ速度と質量。

 ただならぬ一射。

 それも全くの同時に。


「ナナシ。」


 反撃待ったなしの殺意。

 すかさず銃口を向けたテツに俺は目配せをした。


「あぁ、撃て!!」


 と指示を飛ばすが速いか、撃つが早いか、

 ――ダァンッと、鳴り響く銃声の轟音が二回。

 テツは攻撃された方向へ向け空気の弾丸を返す。


「全員、屈め。当たれば死ぬぞ。」


 応戦するように飛ぶ大きな矢が、

 鉄の欄干に当たりけたたましい音を鳴らしている。

 状況は余りにも芳しくない。


――カンッ、カン!!


――ヒュゥッ。


 死の風切り音が、度々耳を掠めていく。

 全くもって地味な戦い。

 しかしそこには確実に、ゲームオーバーが迫っていた。

 きっと死ぬときはこうやって死ぬんだろうな。

 意外や意外にも呆気なく、遺言は「あ」だったりする。


『ひぃいいいいいいいい!!!!!』


「馬鹿!!」


 俺は咄嗟に学者の頭を抑え、残る退路を振り返った。

 湿気の混じった冷汗がつたる。

 足場は悪く土地勘には乏しい。

 こういう時の打開策は、一つしか無い。


















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブクマ・ポイント評価お願いしまします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ