②ロンア鉄管橋を越えた先
「鉄屑渓谷の崖上にある{ロンア村}は、ギルドからお金を貰い鉄屑渓谷の管理村として機能しています。まずはこの場所へ伺い入谷の申請をします。それが終り次第、ロンア大橋を渡り東からグルリと回り込むようにスロープを降りていきます。」
学者は地図をなぞり、キャラバンは進む。
辺りは霧が立ちこみ始め、不気味な様相を呈していた。
「ここらは一般人でも立ち入り易いように整備が成されています。しかし、次に見えるロンアの鉄管橋を西へ渡りしばらく進めば、数千年前の姿を残したままの道が危うさを残して続いています。観光客の多くはそこで引き返していきますが、その場所まで行けば、鉄屑渓谷が何たるかはお目に掛かれるはずです。」
視界の悪さ、足場の悪さ、割と気の抜けない状況に車内は静まり返る。
時は進み、学者はキャラバンの戸を慎重に開け外に出た。
そこから聞こえてくる不可解な遠い音。
――プシュー……、タンタンタンタン……。プシュー……、タンタンタン………。
一定のリズムを刻みながら鳴るそれは、
パイプの中でガスの蒸ける音や金属の叩かれ弾ける音たち。
凡そそれらはこの世界には物珍しい類のものであった。
「この地では年中、流れる川の上に深い靄が掛かっていまして、渓谷の上からこの姿を眺めることは叶いません。しかし、ここまでの道のりを対価としても、この素晴らしきキカイな神秘を望みに来る価値は、確かに有ると言えるでしょう。」
眼前に広がる景色。
それは近代の産業革命を想わせるような、
ボロボロで無骨で力強い金属やパイプの剝きだした、
何かの工場であるかのような渓谷であった。
「ここが{鉄屑渓谷}です。」
――プシュー……、タンタンタン………。カッカッカッ、プシュー……。
それは時に何かに詰まったかのように音を鈍らせ、
それでもなお能動的に一定の循環を見せ、動き続けている。
「行方不明者が多発しているのは、ここからもっと先にある鉄屑渓谷街という名の最深部です。まぁ私たち学者からすれば{鉄屑}という名前は不名誉ですが、……見えますか?ここにある境界線が。」
そういって学者は近くにある鉄骨や歯車と、
崖に生えた雑草との間に指で線をなぞった。
「ここから魔法が使えなくなります。その原因は不明ですが、この渓谷が隠す技術はこの場所でしか作動しません。……ご存知、魔法を介さない技術という物は不安定ですから、それらの仕掛けは壊れやすく異常が起こりやすい。しかし或いは、他に魔法の使えない領域が有れば、作動するかもしれませんが。」
「魔法が使えない……。」
俺は特殊領域ダンジョンを思い浮かべる。
それは往々にして高難易度であり、価値ある遺物が眠る場所。
「……心当たりが有るようですね。つまりはそう言う事です。恐らく、ここに眠る技術はロストテクノロジーでしょう。それは特殊領域に眠るオーパーツのように、私達が見つけ出すのを待っている筈です。」
学者は眼鏡を曇らせながら、
曇りの無い表情でそう言った。




