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①裕福な国

第Ⅳ譚{裕福な国}


「当面の目標は、ホームとなる島を目指すための船を造ること。そのために、僕らにはお金がいるのです!!」


 アムスタは腰に手を当て胸を張る。

 右から義肢で金欠、

 クエスト失敗で金欠①、

 クエスト失敗で金欠②(技術師)、

 クエスト失敗で金欠③(肩に黒猫)、

 が横並びに一列。重厚な城壁の門前で立っていた。



{サステイル領『アーブラ国』}

挿絵(By みてみん)


「ふん。身元証明なしの田舎の旅人ね。」


「はい~!」


「んで、その後ろのは何だ。」


 ノアズアーク=フォームポケット。斜塔ダンジョンにて損害を出したとはいえ、依然巨大な木製のナップザックに窓越しの守衛は目を移す。


「荷物ねん。」


「そんなの分かってるんだよ。中身が何かって言ってるの。」


 プーカは重そうに担ぐそれを降ろし、解放されたように背伸びをした。


「あぁ、中身は空ですよ。」


 アムスタはノアズアークを重そうに傾け、中身を見せる。覗き込むようにする守衛は立ち上がり、ついには事務所の扉を開いて表へ繰り出した。


「良く見せろ。」


「もう、存分にぃ。」


 アムスタは心配そうに黒猫へ目配せをする。黒猫はプーカと共に日向の方へそっぽ向いていた。アムスタはツーと汗を垂らすと「えへへぇ」と声を漏らした。


「うむ。」


 守衛の男はネクタイをクイッと結び直し、小さな木のハッチを開く。中にはボロボロになった白い下着が転がっていた。アムスタは両手を広げ、プーカの肩で舌を出す黒猫へ静かに飛び掛かる。


「新型の洗濯機のようだな。もっとも魔法弱者向けの商品を売りに来たとは思えんが。おい。」


「あ、あ、アブラをあわよくば買おうかと。言わばそのための樽のような容れ物ですよ。なんでパンツが入っているのかな~!!誰のかな~!!」


「ふむ。」


 アムスタはひょいとそれを拾うとポケットへ忍ばせる。一方、守衛はポケットからコロリと紫色の眼球を取り出し、中へかざす。眼球はキョロキョロと不気味に中を覗くと、しばらく考える様に瞳をグルグル回した。アムスタはパンツを握りしめ生唾を呑み込む。


「仕掛けが、ある訳でも無さそうだな。」


 眼球は瞳孔を開くと、その瞳を鮮やかな蒼色に光らせた。守衛はコンコンと木の内側をノックし耳を傾け頷いた。


「空洞音もしない。まぁ、いいだろう。」


 テツはリザの服を引っ張ると耳打ちする様に顔を寄せる。


「厳重だね。」


「まぁな。小国が乱立してる地域じゃ、富を蓄えた国には城壁が必須だ。今は平和とはいえ、備えあれば患いなし。テロリスト対策にもなるし、ある意味、スタンダードな手続き。それにヒュドラの脅威がある今、私たちは安易に足が付く手続きは出来ない。」


「うん。」


「だがここは、アーブラ国。ここの国民は一人残らず裕福だって噂だ。私が活動家なら、喧嘩は売らずに支援を募るけどな。」


「・・・一人残らず、裕福.....」


 リザは横に垂らした髪を戻し、守衛とアムスタの方へ一歩進む。


「もうええでしょう。(技術師)」


 守衛は、その言葉に腕時計を一瞥して頷いた。


「ふむ。そうだな。.....アレ、あんたどっかで見たことあるような――」


 アムスタは顔を上げた守衛の脇腹へ、割って入る様に軽く肘を入れる。


「たは~!!いやだなぁ守衛さん、パンツ見たからってナンパだなんて~、そうやって今まで公権力を行使して何人も女の子のアンなトコやコンナトコまで隅々と隅々隅々・・・」


「おい、貴様。私のキャリアを傷つけるようなあらぬ疑いを」


「わぁ~!!大きな声!!」


「それはお前ッ.....もういいッ通れ、さっさと、さっさと通れ!!」


「あら~!!」


 プーカはフォームポケットを担ぎ、三人は背中を押されるアムスタの後ろを歩き始める。


「ごはん楽しみ。」


「楽しみねん!!」


「無いぞ、死ぬほど高いからな。次の街までレーションだ。」


「ヒェッ.....」


「おい誰だ今、息を引き取ったような声出したやつ。」









{裕福な国}







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