②気を休める人たち
「ふぅ~。」
「ちょいと休みますか。」
「うん。疲れた。」
「せがれぇえええ!!」
「おーう!!」
一行はより奥地へと足を進める。
遠くに見えてきた急斜面に、
建てられ点在する小さな丸太小屋には、
食糧の備蓄と蜂の巣のような寝床があった。
差し出されたミルクティーを我先にと口にする少女に続き、
彼らはそれを喉に通す。
「なるほど、中身は全部繋がってんだね。」
{木こりの山小屋・蜂巣荘}
「せがれはもうちょい切ってから戻る。心配せんでいい。」
おじいさんは新聞を広げ、カップの茶をすする。
「立派なベースキャンプですね~。」
「ほう。その心は?」
木製の机。隣接するキッチンには、
開閉式の木の窓が取り付けられている。
窓際には紅葉のような葉っぱがいくつも吊り下げられていた。
「心も何も、事前知識だよ。この山は元々、山頂を終環点としたシーラだった。だから数十年経った今、徐々に魔物は活発になっているし、客人用の備えがここにはある。私用の別荘だとしたら、名称があるのは不自然だ。」
「驚れぇたな。兄さんらの事前知識っちゅーのは、ここいらの極秘情報。一般人には知る由も無い話。せぇぜぇ、ここいらの治安が良かった時に、山菜採りの御一行を持て成していた時代の話までと思ってたが、そんな古い所から知ってるとはな。」
「そんなことしてたんだ。」
「そっちは知らねぇんだな。」
山小屋は土の中に埋もれる形で存在した。
地中を横穴を掘る形で掘削し、
内部からトンネルを掘る要領で基礎を作り、固めていく。
「この山小屋から山頂へと飛び立っていく。滑落死も多かったがな、上を目指す輩を出すから蜂の巣。突っついてくる魔獣を撃退するから蜂の巣。大型の魔獣対策に遮光を施したくらぁーい丸太小屋よ。この山荘が出来る前には普通の山小屋もあったがな、魔獣たちは頭が良いもんで、今の形に至るまでは、すぐさま壊されたもんだ。故にこういう見た目、こういう内装。そりゃあ観光客には人気が出ないわな。山菜は一流以上の美味が取れたが、行楽地としては使いものにならんほど、人気も治安も悪なった。」
おじいさんの広げる新聞紙には、
煙を吐くウェスティリア魔術学院の写真が動いていた。
「治安?」
「あぁ。犯罪者が寄り集まってくるんだな。」