④香ばしい蒲焼きの周り
ユーヴサテラはもともと連盟であった。
それをプーカと出会ったばかりの頃、
血盟として強引に名前を渡したのには複雑な経緯がある。
しかし、彼女の実力はと言えば単純明快。
最強クラスの荷物持ち(ポーター)だ。
キャラバンの総計は1tは有るかもしれないが、
プーカなら安々と持ち上げるだろう。
そして彼女には薬師としての一面も有る。
ダンジョン固有の動植物を食べる時は、
プーカの毒見と判断が必須なのだ。
薬師としてのスキルに伴い、
プーカはユーヴサテラの医療を司っている。
一見ちゃらんぽらんであるが、
探索家としての役割の豊富さは、
他クランが喉から手が出るほど欲しくなる程の才能なのである。
「ナナシ、タレとって~。」
プーカはそう言うと、
俺が渡した秘伝たれの小壺の蓋をキュポッと快音を響かせながら開け、
中のタレを魚に塗りたくり、そのまま火の上で炙った。
「へっへっへっへ。じゅわじゅわ~」
タレに包まれた白身と皮が香ばしい匂いを上げて焼けていく。
「おぉ~。革命。」
俺は拍手をしながらそれを真似して焼いていく。
「さぁここで料理界の革命児{プーカ・ユーヴサテラ}さんに起こし頂きました。えぇ、貴方にとって料理とは。」
「ふん、我が"人生"であります。」
特に深い意味は無さそうだ。
俺はそのままマイク代わりに渡した最後の魚の串をプーカの前の地面に置いた。
「ちなみにナナシ氏、これが最後でありますか?」
「そうであります。」
「もっと獲って来いであります。」
「黙れであります。」
俺は残った串を焚火にくべて、
煤を払って立ち上がった。
「デザート作って来るわ。」
贅沢は敵だが、カロリーは勇者である。
……え?まぁ特に深い意味は無いが、砂糖と小麦が余っていたので
ミルクレープとそのシロップでも作ろうかなと思う。
スーパーもコンビニも無いこの世界だが、やれることは多い。
魔法が使えれば調理はもっと楽にできるし、
良いことだって結構ある。
そう言えばスーパーとコンビニで思い出したが、俺にはもう一つ、
崇高な目標が存在した。それは古い記憶にこびりついた"魔法の使えない世界"と、
この魔法の使える世界との因果、関係性を解き明かすことである。
実に、この願いは叶ったら良いなくらいに思っている。
旅の途中に調べたいサブクエストのようなものだ。
何故なら今はそんなことより、
この世界への好奇心が収まらないからだ。
「ナナシ、手伝おうか?」
アルクが横から顔を出し、テツが眼を擦りながらキャラバンに戻って来た。
「……僕はもう寝るよ。おやすみ二人とも。」
「え、あぁ、おやすみなさい。」
「おやすみー。」
みんなマイペースでそれぞれの方向を向いているが、
明日にもなれば俺たちはまた、
一つの方向へ進んでいく。
正に一蓮托生。
ユーヴサテラはそういったクランだ。




