②焚火の周り
無魔(=魔法を使えない人間のこと。)がイジメられる職業が有る。
1に戦闘家(傭兵)、
2に冒険家、
3に探索家だ。
そして俺たち{ユーヴサテラ}は5人中4人が魔法を使えず、
このランキングの上位三つを総なめしているという快挙っぷりである。
「焼けた?」
パチパチと燃える火に、
魚の脂が炙られその身と共にジワッと焼ける。
大事なのは焦らないことだ……。
じっくりじっくり、その時を待つ。
「そろそろだ……。」
「美味ぇ。ナナシ天才。」
ハフハフとフワフワの身を冷ましながら、
プーカはパリパリの皮目に歯形を残す。
「いや、それまだなんだけど………。」
溜息を一つ吐き、
焼けたと思われる魚から皆に配っていく。
プーカは先にかぶりついてしまったが、
生焼けでも無さそうだし、
良い毒見担当になった。
塩加減も……、うん。悪くない。
「ハフッ……、ん、そいで……、次は何処へ向かうんだっけか。」
清流のせせらぎがBGMだ。
リザは魚に被り付きながら、俺に視線を向ける。
彼女は鍛冶師で有り技術士でありキャラバンの操舵士だ。
それ故にこういった打ち合わせは毎夜の如く行われる。
「東の方に街とダンジョンが有るらしい。だから東で……。」
「本日もまた、ハフッ……、アバウトだな。」
明確な目的地が無い時は計画も適当になる。
それこそ他国との交流が無い街に着いた時や文明の未発達な国に赴けば、
隣国への地図が無いなんて事はザラにある。
俺は焚いていた釜の白米をお椀によそい、
焼魚の脂を乗せて、
醤油ベースの甘味ダレを小匙にすくってトロリと垂らした。
「そんなもんだろ、旅なんて。」
言葉を紡ぎながら、
タレと魚を乗せた白米を口へ掻きこんでいく。
少し熱いが中々……、うん。
これもジューシーで美味い。
「まぁな。私も好きな所に行けるし、万々歳。」
「行き先を決められないなんて、僕はトレーダー失格だよ………」
リザとは対照的にアルクは肩をガックシと下げて俯いていた。
確かに目的地はアルクが指定することも多い。
小さい頃から各地を転々としていたアルクの商売勘や土地勘は、
クランにとって大きな指針となるからだ。
しかし、交易商売をするだけが{ユーヴサテラ}では無いのだから致し方ない所もあり、
現状トレーダーとしては充分過ぎる程に働いていくれている。
「キャラバンは調子良いんだろ?」
その言葉にリザは軽く頷いて、
咀嚼が終わった後に自信満々に言った。
「いつも通りだ、何処へだって行けるさ。」
この言葉は文字通り、
火の中水の中、
モンスターの群れの中ですらという意味でも有るのだろう。
この世界には荷車探索法という言葉が有るが、
その最たるもの。
否、その枠組みにすら当てはまらないほどに、
キャラバンを駆使する探索士隊こそが、
俺たちなのである。
Tips
・荷車探索法(=キャラバン・シーキング)
『本来、閉所や難所の多々存在するダンジョンにおいて荷物はそれぞれ必要最低限分を各人が背負い運ぶのが一般とされている。しかしダンジョンによっては荷車を扱い、中継地点ないしキャンプ地まで家畜に荷物を運ばせる方法も存在した。その長所は何と言っても潤沢な物資量であり、荷車探索法が通れば飛躍的に攻略が進むとされている為、採算の取れる主要なダンジョンでは、この探索法を行う為だけにダンジョンの浅層を路面整備することが少なくない。だが、どれだけの整備を施そうと、未だかつてその低機動力という難点を克服できたクランは存在しなかった。』




