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ノアの旅人 ‐超・高難易度ダンジョン攻略専門の底辺クラン、最強キャラバンで死にゲー系迷宮を攻略する譚等 - / 第6巻~新章開始   作者: 西井シノ@『電子競技部の奮闘歴(459p)』書籍化。9/24
第2譚{人狼の村}

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⑤人狼の村にて


「に、二度と乗らないからな!!」


「毎度~。」


 丸眼鏡の中で涙をこぼしたライを降ろし、

 オクタノギルドが管轄する地域の外れへキャラバンを動かす。

 天気は快晴の無風だ。

 俺はデッキで運転するリザの後ろの席に座り、

 柔肌のような向かい風を顔に浴びながら、

 ポケットに入れていた報酬金をちゃりちゃりと鳴らした。


―――――――



「そういえばナナシ。どうして金を貰えたんだ?」


「ん~。」


 背中越しのリザの言葉を聞き、

 プーカとアルクが耳を立てて近寄って来る。


「僕も気になるな~。」


「プーカも。」


 俺はちゃりちゃり袋を弾ませたのち、

 それをクランの"財布"に向かって放り投げ、

 伸びをして空を見上げる。


「おっと、お金を投げるなよ。ナナシ。」


 アルクがそれを大事そうにしまうと、

 屋上からデッキへ顔を覗かせるテツと目が合った。


「んー、テツは分かってそうだな。」


「……まぁね。お金まで取るとは思わなかったけど。」


 テツは頷くと、

 眼を細めて少し引いたような顔をした。


「そんな顔すんなって。アルク先生の詐欺師マインドが乗り移っただけだ。」


「な、それは一体どういうことだい?――というか本当に、どういうことだい?」


 アルクは首を傾け眉をひそめると、

 真剣に困惑した面持ちでテツに詰め寄った。

 テツはそれを見るやデッキから身軽に飛び降りて、

 甲板に腰を掛けたのち、

 腕を組みながら言った。


「――あの村、全員人狼。」


 呆気にとられたようなアルクの顔を眺め、

 しばらくの沈黙の後。

 「正解。」と言ってみる。


「……え?」


 そして俺は、呆然とした顔のアルクを横目に

 ことの真相を話すことにした。


「……まぁ、何と言えば良いか。

 あの事件の犯人は被害者以外の不特定多数だ。

 まず初めにリエナの身体じゃあ、

 遺体に有ったような裂傷は残せないという前提が有る。

 しかしそうなれば誰にもアリバイが無く、

 誰にも殺すことができない状況が生まれる。

 では、

 本当に誰も武器商を殺し得なかったのか?

 その答えは否であり。

 1つだけ、誰かが武器商を殺し得る条件が存在した。


 ――それは村人の不特定多数、あるいはその全員が嘘を付いていたとき。

 つまり口裏を合わせていた場合。

 アリバイを含めた昨夜の全ての状況が一変し得る結果になる。

 恐らくはやっぱり、

 村の子供たち以外全員が嘘つきだったんじゃないかな。

 村人のアリバイはあまりにも綺麗過ぎていたし、

 アリバイ無しが生まれない程度には無駄が無かった。

 実際問題、これは逆に不自然過ぎる。

 大雨が降りしきるあの夜、

 村民全員がアリバイを持ち得るなんて不可能に近い。」


 俺は村民たちの顔を思い浮かべて、

 状況を思い出す。


「――つまり。

 もっとも大きな消去法を持っても、

 消去しきれなかった膨大な選択肢の集合こそが、

 絶対に正解できない答えだった。

 そうなれば必然、

 あの村は被害者を含め全員が人狼だった可能性が濃厚になる。

 何せあの遺体、非可食部の"頭部以外"喰われて無かったからな。

 捕食目的なら肉は残さないだろ?

 まぁ詳細な真意は結局分からなかったが、

 如何せん人狼たちが人狼を民意で殺したんだと推測できる。

 経緯は不明だがそれは民主的に裁かれたのと同義、

 被告はなんか掟とかでも破ったんだろう。」


「そ、そんな危ない所にいたんだ。でもじゃあ、その推測なら、もしかしたらだよ、中には普通の人も。」


「暮らしていたかもな。

 可能性として。

 ただ事実としては、

 彼らは互いと互いの居場所を守るために皆で嘘を付き合ったんだ。

 つまりどんな形で有れあそこは、

 人狼が居て然るべき場所。

 {人狼の村}だった。

 もう一つ忘れちゃいけない事実としては、

 そんな村にポツリと6人異端が混じっていたということ。

 死体を前に村長が気を悪くしたのも、

 血の匂いに当てられたから。

 そして新鮮なお肉が近くにあったから。

 だからあの時、優先して警戒すべきはライ=アリエスの推理と俺達の命。

 俺たちは彼が脅威に成らないように立ち回る必要が有った。

 はず、だと思うんだけどな~。

 どうでしょうか?」


 ユーヴサテラでは、独断での行動があまり推奨されていない。

 今回の件は致し方なかったとはいえ、

 俺自身がテツや他の仲間に相談せず独断で諦めたのも事実だ。

 それが如何に好転しようとも、

 仕方なかったとしても、

 それを当たり前にしてはいけない、

 "推奨はされない"というのが、ユーヴサテラの一貫したスタンスである。


 俺はジト目で睨む、

 隊の参謀様と目を合わせ、

 機嫌を伺った。


「及第点かな。」


 一応は副盟主のテツがそう言って顔を引っこめると、

 横からプーカが「9点台かぬ。」と茶化した。


「ナナシ……?僕的には、ひゃくてん……!!」


 滅茶苦茶に小声でアルクは囁き、親指を立ててニコリと笑った。

 ……あぁ、現金な奴。

 俺はそう思いながらニヤッと笑い返し、小さく両の親指を立てた。


「あっ、でもナナシ。もしも武器商が死ぬべき人間では無かったとしたら、君は悪に加担したことになる。そのことについては、どう思っているんだい?」


 ぼやっとした顔をしながら、

 アルクは中々に核心的で考えさせられることを聞いてきた。

 俺はその問いに対する答えをぼんやりと考える。


「まぁー、それでも。人狼という異形に囲まれていたあの状態から無傷で抜け出せたことを考えればワースだ。思うにこの世界には、――不道徳や悪に加担することで得られる最善も、確かに存在する。」


「なるほど。」


「逆を言えばより明確なんだ。悪に加担する選択肢には最善が無いなんて考え方は、どう考えても絵空事に過ぎないだろ?」


 俺はそう言い終えて茶を啜った。

 このお茶を買えたのも、悪に加担したかもしれないことによる「結果」である。


「まぁ、君らしいね。」


 アルクはそう言って満足気に笑った。


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