表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノアの旅人 ‐超・高難易度ダンジョン攻略専門の底辺クラン、最強キャラバンで死にゲー系迷宮を攻略する譚等 - / 第6巻~新章開始   作者: 西井シノ@『電子競技部の奮闘歴(459p)』書籍化。9/24
第25譚{斜塔のダンジョン 戦層}
202/307

㊸血まみれ


「理由を述べよ。」


……理由か。それは割と明確だ。戦う理由は明確で無ければならない。何故なら迷うから。そして、死んだ時に後悔するからだ。自分だろうと、相手だろうと。しかし、まずは奴に言いたいことが有る。


「おい、勘違いするなよ。」


 そもそも考え方が、合わないのだ。


「部下の犠牲で得たものは、功績でもなんでもねえ。最善を尽くせなかったあんたの失態だ。俺はアンタが捨て駒として扱ったアムスタ=シュペルダムの祖母、シラバ=アルデンハイドからクエストを受けてここに居る。」


 オーガスタスは、しょぼくれた目を少しだけ見開き、丸くする。


「シラバ……。」


 あの夜、シラバは俺たちにクエストを依頼し、その時オーガスタスの実の姉だと聞いた。つまりアムスタとアルデンハイド一族は血縁。


「てめぇらが苦戦を強いられ、関門と据え置いたクイーンハーピーだってそうだ。彼女らはお前らが残した強欲に凌辱されたハーピーから生まれた。すなわち、強大な魔力を有し、人間並みの知能を有するハーピーは全て、お前らが犯した罪の、その子孫……。そして俺はただ、友人を守るために、更にシラバから出る報奨金の為にここに居る。」


 そう。理由なんて明確なのだ。俺以前に、アルデンハイドにとって。


「理由なんて自分で考えろ。お前らが何を得て、誰の逆鱗に触れたのか。――オーガスタス。これは全て、あんたらを否定する為の因果だよ。開拓に囚われ文明や尊厳を踏みにじり、強欲のままに侵略した所業の因果。強引な策略が呼んだリターン。だから俺はここに居て、お前らはそこに居る。」


「……ナナシ。」


 アルクが俺たちを呼ぶ。


「オーガスタス。あんたは幸運だった。俺は大口を叩けるほど強くは無いが、俺の仲間が死んでいたら、俺はアルデンハイドを、アンタを殺していたよ。」


 少し脅してみるが、オーガスタスは貫禄のままに動じない。


「……ナナシ、行こうッ。」


「そうではない。」


 ぬるりと頭を揺さぶられるような低い声が、俺の動きを制止させる。


「その紛い物が怒りの、理由を答えろと言った。」


 我儘なご老人だ。俺が怒り狂ったフリをしていると言いたいらしい。ただ偽物かと問われれば大正解である。俺は身も知らぬモンスター一族が虐殺されようと良かった。彼女ら(ハーピー)の過去を知らないからだ。或いは俺は悪に加担したのかも知れない。そうとすらも思った。だからこの怒りは偽物だ。内心は本当の正しさの所在に迷い、苦しみ、もがき喘いでいる。困惑していたのだ。だからこそ、自分のやり方を貫くしかなかった。


「演技だよ。演じて騙し、魔法は強くなる。……不殺は強者の特権だからな。俺には最強サテラの真似は出来ない。道化になる、ことぐらいでしか。」


「不殺……?!」


「ナナシッ。」


 驚いたグスタフの顔を横目に、動き出したキャラバンから手を伸ばすアルクへ摑まった。目指すは地上だ。アムスタとケニーを連れて、一旦は医療設備の整った場所、斜塔街へ戻らなければならない。


「――それと!!御宅の娘を人質に取るッ!!この意味をハッキリと理解しておけッ!!俺たちは、先へ進むッ!!!!!!」


 グスタフは去りゆく俺たちへ手を伸ばす。


「ネオ!!」


 驚いた。後ろのオーガスタスも髪の毛を逆立てている。愛する孫娘ならば戦線に立たせるな、バカめ。俺は開けた窓をピシャリと閉め、屋上へ。運転席をドンドンと叩き、ワイヤーのロックを外してハーケンガンを身体に巻き付け、ヘタレこむネオの元へ飛び込み捕まえる。


「ぽわぽわ~。飛んでいるみたいね、えへへへへ。」


 惨いことをした。


「飛んでるんだよッ。」


 巻き戻るワイヤーを掴み、ピンと張った反動で身体を浮かせ、ネオをテツの元へ放り投げる。俺は未だキャラバンへ戻らず、盾の上で引きずられながらキャプチャーすべきもう一人を探す。


「いたッ。」


 俺は盾の正面へ彼女を捉え、何とか届くように手を広げる。


「メセナッ!!!」


 何故か血まみれのメセナは、腹を抑えながら、必死にその手を伸ばして答えた。


『おいっ、……おいおいおいおいおいおおいっ!!!』








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブクマ・ポイント評価お願いしまします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ