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ノアの旅人 ‐超・高難易度ダンジョン攻略専門の底辺クラン、最強キャラバンで死にゲー系迷宮を攻略する譚等 - / 第6巻~新章開始   作者: 西井シノ@『電子競技部の奮闘歴(459p)』書籍化。9/24
第24譚{斜塔のダンジョン 深層}
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アルデンハイド百人隊の喜劇 転換


 ルカが帰還し、有力な情報が手に入った。


「グスタフ様。対象がまもなく到着予定です。」


「そうか。……時は来た。今日を持って歴史は変わる。……大統括、定刻より決戦を開始せよ。」


「はい、グスタフ様。」


 その情報は実質的に指揮権を握るグスタフ=アルデンハイドの耳に入り、ネオ大統括の元へ流れていく。それは、アルデンハイドの作戦成功を決定的なものとする情報であり、その一報が木来たる今まで、不確定要素であったもの。


「これより、作戦を開始します。」


 いずれにせよ、計画は実行に移され、俺たちはまた戦場に出る。


「ダンテ。何の情報かな?」


「フラッグ1が到着しそうってだけだ。それよりアイザック、お前はブレンドンが味方を殺さないように躾けておけ。フラッグ1が到着しないことよりも、俺の杞憂はそこにある。」


「嫌だよそんなの、こっちはジーナと影の管理で精一杯なんだ。というか君は味方を何だと思ってる。彼はちょっとお薬の服用が必要なだけの、我々と同じ正常な大幹部だ。それに拠点ここが有るのも、彼の隊のお陰じゃないか。要らない杞憂はすべきじゃないぞダンテ。」


「残念だが。それを正常と呼べる世界で生きていないんでな。」


「奇遇だな。僕もだ。」


 アイザックはニヤリと笑った。相変わらず掴みどころの無い奴だ。支離滅裂とでも言えば良いのか。


「それよりもダネルだ。そうだろダンテ?アイツは生理的に受け付けない。というか、臭うんだよ。今日こそ戦場で高温殺菌を施してやろうと思ってるんだが、どうだろうか?」


「前言撤回だ。君がダネルを殺さないかが心配だ。」


「――冗談に決まっているだろダンテ。」


「いや、君なら殺りかねない。」


 ネオが歩き始め、追従する形で俺たちも外へ向かう。依然止まぬ砲撃を強め、ハーピーらに悟られぬよう戦力を外へと結集させていく。


「はぁ、ドキドキしてきたよ。」


「君でも緊張するのか。」


「そうだね。さっきから興奮が止まらないんだ。」


 恐らく、イカレた方だろうな。まともな感覚じゃない。


「そうか。……しかし、この決着は思いの外、楽かも分からない。」


「ん、どうしてだい?」


「ルカからの情報だ。山小屋サピロスで半人のハーピーを見つけたと。」


「へぇ……、いいね。」


 この意味は、いずれ全隊に影響を及ぼす。


「神が味方をしておりますな。」


 ヒラリーか。


「盗み聞きとはよろしくないな。神父の風上にもおけない。」


 アイザックは不敵な笑みを見せて話す。


「おやおや、嫌われましたかな?」


「いやいや君のことは大好きだよ。話が通じるからね~。」


 アイザックは赤いロングローブを靡かせて、湖畔を眺める。


「すごい基準だ。」


「そんなもんだろ。みんな素晴らしい人材だけど欠点がある。だからその中でも、君は親友の一人なのさ。」


「とても不名誉だな。」


「またまた~。」


 拠点の門を出て、各隊の先導手リーダーたちが集っていく。みんな寝起きの顔をしているが、きっとこの顔で正常だ。ギルバードは呼吸器を装着し、いつも通り顔が見えない。コーネリアスは義手の接合部から血を垂らしているが、これもよく見る光景だ。普段と同じ光景、同じメンツ、同じ目標。こんなんでも、俺たちは一つのチームとなる。


『先導手、集まれ。』


 ネオが小岩に乗り、呟くように俺たちを呼んだ。


『全隊居るな?』


 10部隊、10人の代表がネオの前に集い、ネオの後頭部か、或いはその先の戦場を眺めている。しばらくの沈黙を経てブレンドンが口を開く。


「昨日二人……、死んだ。」


「ざまぁ見ろ、カスが。」


 ゴードンが悪態を突き、セリーヌが宥めた。


『そうか。……想定内だ。しかし、想定とは幅広いものだ。私がしていない想定は敗北のみ。すなわち、お前たちがいくら死のうが、それは想定内で有り、敗北だけが許されない未来だ。分かるな?』


 周知だ。


『聞けば、戦況も好転しているらしい。かねてより交渉の有ったフラッグ1の到達だ。情報を掴んだのは大儀だったぞダンテ。』


「いえいえ。」


――偶然だけどな……。


『しかし、戦いとはその決着よりも、どう終わらせるかが重要と聞く。つまり、いくらテンペストを占領したからと言っても、これからの開拓に必要な主戦力が消えては、クランとしての損失は大きい。だから、気を抜くな。気を抜かなければ、お前たちが死ぬことは無いだろう。……私からの指令は以上だ。後は予定通りに事を進めろ。――ただいまより進行を開始する。』


『――はッ!!!』


 遠回しに「死ぬな」ということか。この子から受けるブリーフィングは、まだ指を折るほどしか経験していないが、盟主、副盟主には無い、慈しみを感じる。


「あんなんじゃダメだ。」


 自隊へ戻る傍ら、アイザックが俺の前で呟いた。


「肝の座った奴だ、大統括を批判するとは。」


「ダンテ。僕たちは駒だ、そうだろ?もっと追い込まないと。もっと責め立てないと。それじゃあダメなんだよ、ネオちゃん……。そんなんじゃ、そんなんじゃ甘いよ……!!」


 アイザックはボソボソと喋りながら一番隊の前に着く。


「――始まるぞ豚共!竜炎ジーナ。及び第一隊、命令だ、ハーピー共を根絶やしにして来い!!」


 アイザックは両手を広げ、堂々叫んだ。


「は?なんでだし。兄ちゃんが命令すんなし。」


「隊長だろお前。」


『部下のクセに反抗かい!?..だが、それも、イイッ!!――これが主体の性ッ!!』


 ダメだコイツ。


 俺は9番隊へ戻り、心を落ち着かせる。


「……ここだけが僕の居場所だよ、カイル。」


「どうした、旦那。」


「いや、何でもない。ルカは後で合流するそうだ。ボチボチ僕らも出るとしよう。」


「了解した。行くぞテメェら。」


 そうして全隊が{十番隊、一番隊、九番隊}の三部隊を先頭に、ドッと開戦のその一足を踏み鳴らした。アルデンハイドが、進軍する。





――――――――――


『アルデンハイド百人隊・進軍形態{魂炎陣}』

構成幹部一覧


{連合外炎隊}

前方左翼

九番隊隊長 神速のダンテ     紅炎 絶剣カイル     

                 蒼炎 深淵のルカ

前方中央

一番隊隊長 赤きアイザック    紅炎 竜炎ジーナ     

                 蒼炎 炎杖アイザック 

前方右翼

十番隊隊長 狂犬ブレンドン    紅炎 破壊槌メスデスボン 

                 蒼炎 修復者リスデスボン 


{連合炎芯隊}

中央

大統括   魂炎のネオ


中央

五番隊隊長 神父ヒラリー     紅炎 豪腕ガリオス    

                 蒼炎 蒼指キケロ

中央

六番隊隊長 癒しのセリーヌ    紅炎 炎薙刀のクライス  

                 蒼炎 杖者リュカイエ


{連合内炎隊}

後方左翼

三番隊隊長 巨漢ゴードン     紅炎 巨槍アルデスボン 

                 蒼炎 巨杖バソー

後方左翼

七番隊隊長 無慈悲なダネル    紅炎 火鞭ジュテルテ   

                 蒼炎 終焉のムラトー

後方右翼

四番隊隊長 義手付きコーネリアス 紅炎 義指のショッケラ    

                 蒼炎 祭司ルクソー

後方右翼

八番隊隊長 不消のベラル     紅炎 大鎌ジャック    

                 蒼炎 黄金のジュラ


{単独近衛部隊}

副領主   支配のグスタフ

二番隊隊長 未知のギルバード   紅炎 未知のダーマ  

                 蒼炎 未知のメリタ―


{拠点天守閣}

領主    炎帝オーガスタス



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