表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノアの旅人 ‐超・高難易度ダンジョン攻略専門の底辺クラン、最強キャラバンで死にゲー系迷宮を攻略する譚等 - / 第6巻~新章開始   作者: 西井シノ@『電子競技部の奮闘歴(459p)』書籍化。9/24
第23譚{斜塔のダンジョン 下層}
182/307

㉜『極寒、第二十層。~The Twentieth Layer~』


{第20層・氷平線の雪原}


「点火はよっ、点火!!ナナ!?」


「うぉおおおお、ファイアアアアアア!!!」


 火打石を何度も打ち付け点火を試みる。キャラバンの運転席を前方に見て左側、助手席と台所の間、ダイニングの隣には、暖炉を組み立てる為のスペースと、そういう設計が施してある。


「もーさ、魔法に頼りなよ。」


「うるせぇメセナ、これがユーブの伝統なんだよ。魂で炎を生み出すんだ!!」


「魔法で良い。もう魔法で良い!!」


 プーカはジタバタとしながら身体を動かし、俺は一向に燃えない火種を前に悪戦苦闘する。


「ばっか、お前。魔法が使えない特殊領域にいた場合、または魔法が不安定な領域で火を起こす場合、かつ燃料が何も無い時は火打石が最適だって、魔法学校で教わっただろうが!!」


「僕はその授業受けてないよ。」


「プーカ学校行ってない~」


「全く、誰がそんなこと教えたんだい。限定的過ぎるだろその状況。」


 確かにぐうの音も出ない。ただ俺一人なら有り得なくもない状況なのだ。


「あっ、ほら。じゃあまた指にリングをはめてさ、その石を打ってみたらどうだよ。」


「なるほど。それいいな。」


 俺は提案に乗って、何となく薬指に着けていたリングを再度、親指に着けて石を擦った。


「いけッ!!」


 瞬間、――シュボッと、30cmほどの火柱が立ち石が粉々に砕け散る。


「うぉおおお!!!」


「――ちょ、おいナナシ!キャラバンで火遊びをするな!!」


 ルームミラー越しのリザの目が鋭く光る。


「……こういう使い方だったのか。」


「正しいような、間違ってるだろうな……。」


 メセナは苦笑いをしながらそう言った。


「ただやっぱり、親指なんだろうね。正しい場所は、」


「あぁ、そうみたいな気がする。」


 包丁で食材を試し斬りしながら、切れ味の変化とその条件を調べていったが、包丁の切れ味が上がったのは"親指装着時に切れろと念じた時"だけという結果であった。そして何か事故が起きるのを防ぐために、必要の無い時は薬指に着けている。直径がフィットする為だ。


「リザ、もう少しで付きそうだ。速度を落としてくれ。」


 助手席のソフィアはそう言って。辺りを見渡した。酷い猛吹雪だ。まだ日は落ちていないが、夜になれば絶望の淵に即死するような場所である。


「普段はもっと穏やかな気候なんだけどね。まるで22層の豪雪地帯にいるみたいだ。」


「22層か……。」


 20層より下は巨大な氷の層で出来ているが、階層ごとに平野のような空間が有り、寒冷地帯のような厳しい気候が待っていて、23層ではそれがピークを迎える。


「おっ、なんだい?見たいの?」


「機会が有ったら見たいかな。」


 しかし、この第20層が一先ずの俺たちのゴールだ。これから先に挑むかどうかは、アルデンハイドの動向による。


「クレバス(巨大な氷の谷)にでも落ちれば、24層までは見られるかもな~」


「あぁ、死ぬ前の2秒間だけな。」


 ソフィアは冗談めかしにそう言い、メセナがしっかりと補足する。


「無茶な気を起こすなよ。クレバスには当たり外れがあるんだ。それに、外れはただの落とし穴で餓死。当たりを引いても落下死が良い所だ。それに9層みたいに、視界が良くない。絶対に落ちないでくれよ!」


 ホワイトアウトと言う奴か、確かに速度の出るキャラバンの走行では、視界が不明瞭なことで、普段の探査よりも慎重にならなくてはいけなくなる。


「大丈夫だっての。こっちにゃスカウトベルが有る。閉所出なくてもな、キャラバンが落ちる程の穴を探すくらい造作もないことだ。」


 リザはベルを鳴らしながらそう言った。


「寒い。」


 階段部からは、ロフトから降りてきたテツが鼻水を啜りながら歩いてくる。そして丸まる様に暖炉の前に屈んで手を当てた。


「C5まだなの?」


 手を擦り合わせながら、テツは真っ白く覆われた前方を見た。


「もう直ぐだ。あとちょいで、立派な山小屋が見えてくる。」


フリーダムうちが建設協力したんだ。木造三階建てだよ。」


 メセナは嬉しそうにそう言った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブクマ・ポイント評価お願いしまします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ