表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノアの旅人 ‐超・高難易度ダンジョン攻略専門の底辺クラン、最強キャラバンで死にゲー系迷宮を攻略する譚等 - / 第6巻~新章開始   作者: 西井シノ@『電子競技部の奮闘歴(459p)』書籍化。9/24
第20譚{斜塔のダンジョン}
148/307

⑥Day1- Camp 2 - Layer5

「着いた…」


 意外と遠かった。キャラバンでは楽々進めるような傾斜も、木の根っこでちょっとだけ出来た段差も、いちいち足を上げて体重をかけて、積み重ねて積み重ねて。キャラバンってありがてぇ...。



{トライデント第五層・開拓されし大洞牢}


「飯どこぉ~」


 プーカが唸る様な声を出す。


「第五層のキャンプ地にあるってさ」


「キャンプ地どこぉ~」


「確かに教えてもらってないな」


「えぇ~」


 そんな風に軽口を叩き、溶けたように歩く俺達の前方に―パカラッパカラッと、軽快な足音を立てた生き物が近付いてくる。


「―ヒヒィーン!」


 馬だ。それもただの馬ではない。こいつには立派な名前が有る。


「力丸~!」


 プーカがそう言って近寄っていく。


「お~、どうどう。偉いぞ~力丸。」


 力丸はキャラバンが使役する契約獣だ。強いて言えばエルノアの契約魔法ベスティナとも言えるが、キャラバンというオーパーツを媒介し召喚している。つまり魔剣から出る炎のようなものであるが、しかし契約召喚で拘束している馬だ。何処にいたってキャラバンの元まで戻ることが出来る。


「よっと。」


 俺は力丸に跨りプーカに手を伸ばす。かなりしっかりとした馬だ。軍馬として多様な経験が有り、物怖じせず、しかも速い。クランを結成する前からいた契約獣だから細かな種類とかは知らないが、真っ白い毛に魔法体制の強いところから"白毛魔戦馬"と呼ばれる戦馬種のエリートだと思われている。


「よっしゃ~、頼むぞ。」


 俺はようやく腰を下ろし、軽い力で手綱を握った。まだ浅層とは言えダンジョンは広い。この道のりを自分の足だけで往復するクランがいると思うと、いいや逆なのだろう、これはキャラバンシーキングの弊害だ。俺たちは今までかなりの楽をしてきたのだ。


「おっ、明るい。」


 そんなこんなで第五層の開けた道を進んでいくと、力丸の進行方向、ダンジョンの端っこに位置するだろう遠い場所に、小さな灯火の集まりが見えた。


「着いた~?」


 俺の背中を枕にしたプーカが、目を擦りながら聞く。


「あぁ...着いた。」


 その地は、地下第一層に負けず劣らずの賑わいを見せる。他のダンジョンでは考えられないほど大きなキャンプ地であった。監視の為の高台と併設する小屋。トライデントギルドのマーク。その隣、入り口を形成する木の門には大きな獣の引っ掻き傷が見える。縄張りを示す獣避けだろうか、しかし躊躇なく、力丸はその門をくぐり、村とも言える巨大なキャンプ地に歩みを進めていった。簡素なトタンの小屋の中からはこちらを覗く人影が見える。流石に子供の影は見えないが小屋の看板は、宿屋に、酒屋に、道具屋に、武器屋に、チョークで書かれた値段は有り得ない程高いが、間違いなくそれは屋根の有る"お店"で、品数も豊富であった。


「感動的だ。こんな所でも商いしてる。」


 地下一層との違いを強いてあげるとするならば、民家が無い所か。無論店の中で寝泊まりしている人はいるだろうが、全ての建物には寝泊まりすること以外に目的が有るらしい。例えば看板の見えない建物には40組は収納できそうな下駄箱が置いてある。隣は一見変わった様子は無いが、ガラス戸が無い。気の壁も色違いの塗装が見て取れる、およそ耐火性に優れていそう外壁だ。


「あ、キャラバン!」


 プーカが一軒のボロッちい宿屋に指をさす。


「あ、ホントだ。」


 そこには、灯りの消えた俺たちのキャラバンが有った。









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブクマ・ポイント評価お願いしまします!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ