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ノアの旅人 ‐超・高難易度ダンジョン攻略専門の底辺クラン、最強キャラバンで死にゲー系迷宮を攻略する譚等 - / 第6巻~新章開始   作者: 西井シノ@『電子競技部の奮闘歴(459p)』書籍化。9/24
第20譚{斜塔のダンジョン}
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③VS(ヴァーサス)

 キャラバンは難なく進み、階層は四層に。危惧すべき{オメガ・トロール}が生息している大牢屋はもう目の前という所まで来た。


{第四層・大堅牢、出口付近}


「洞窟牢か…。」


 俺の呟きをソフィアが拾う。


「自然を利用した天然の刑務所だ。岩壁でいくつも部屋が区切られ、その部屋の中にある窪みを牢屋として活用する。壁の中には魔鉱石が良く埋まっていて、基盤となる土質も大概に堅い。エルザのダンジョンにもこの層のことについてはとりわけ細かく書かれている。」


 最初あたりのページだ。そこらへんまでは読んだ。


「なんでここらだけ詳細に書いたんだろうな。」


「分からないが、私はそれも含めてリアルだと感じている。なんせ五層にはキャンプ地が有ってそれ以降は安寧の地が減って慌ただしい。私はエルザのダンジョンをエルザ自身が書いた本だと捉えているから、背景情報の減少がダンジョンの難易度と比例していってると考えている。」


 なるほど肌触りの良い一説。エルザ本人は何らかのメモを残しながら書き進んでいき、生還した後にメモを見ながら暗号的な物語を書いた。これはとても吞み込みやすい。


「じゃあ、逆に中層以降はフィクションだったって考え方も出来るよね?」


 意外にもメセナが口を挟む。夢の無い発言だ。


「そんな顔をしないでくれよユーヴサテラ。私は元からずっと否定派なんだ。こんな現実味の無い話を元に命を落とすなんて堪ったもんじゃないだろ?私たちは弱者なんだ。情報弱者さ。だから49層があるかどうかは48層から確かめなきゃいけない。48層は47層から、47は46。そうやって積み重ねた知識の山が情報なんだ。こんな小説の為に命を投げ出すなんてバカらしいってのが一貫した私のスタンス。」


「いやいや、メセナ。何も俺たちは無意味な特攻をするわけじゃないんだから。」


 俺がそういうとメセナは笑って言った。


「へへ、36層まで突っ込もうっていう新米冒険者ルーキーが特攻じゃないっていうのは可笑しな話だけどね…。ところで、ここらからはオメガ・トロールが出現する。大洞牢の大きな部屋あたりだ。」


 洞窟は奥に行くほど広がっていく。縦も横も壁の厚みも、徐々に開放的になっていく。


「そういえば俺たちが来た方向は狭かったな。段々広くなってってる。」


 その疑問にメセナが答える。


「あぁ、かつては私たちが来た方向に凶悪犯がいたらしいんだ。で今しがた向かっている方向に多くの囚人が共同空間で収監されていた。つまり進むにつれ罪が浅い人達のスペースになっているってこと。でもモンスターの気性の荒さは進むにつれ高まっていく。」


 確かに、オメガというくらいのトロールなんだから、先程いたような狭い空間には適さなそうである。


「そこでさ、私は君らの実力をもっと知りたいから、ユーヴサテラだけで大食堂。つまりオメガトロールの生息域を超えて欲しいと思っているんだ。助力はしない。」


 メセナはふんぞり返って俺たちに提案する。


「な、…おいおい、とことん仕事しない気だな?」


 俺はたいそうリラックスしたメセナを見て言った。


「待ちたまえユーヴサテラ。少なからず我々マスターシーカーは、情報を伝えてあげているんだ~。仕事はしている。そうだろソフィア?」


「ん?あ、あぁ。」


 俯いたままのソフィアがハッと気づいたように言う。


「そうだなぁ、ここからは本当に余裕が無くなって来る。シーカーとしての心得だとか、問題点だとか、この層で伝えられることが有れば最期のレクチャーでもしてやるさ。」


―お前もか…

 俺は溜息を吐いて仲間を見る。アルク以外はみんな興味無さそうにしている。いや、それもそうか。元来俺たちは一人で潜るつもりだった。マスターシーカーなんて勿論無しで。


「分かった。」


 俺は渋々といった表情をしながら承諾した。








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