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ノアの旅人 ‐超・高難易度ダンジョン攻略専門の底辺クラン、最強キャラバンで死にゲー系迷宮を攻略する譚等 - / 第6巻~新章開始   作者: 西井シノ@『電子競技部の奮闘歴(459p)』書籍化。9/24
第19譚{斜塔ダンジョンの街 上層}
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⑯禁書庫の魔術


 空中に舞っていたベールを剥がすように、リリーの杖が図書室に掛けられていた魔法を解いていく。


「ここが、ラインズ家大書斎。すなわち、禁書庫に御座います。」


 そこに見える光景は、図書室に構えられていた大扉に相応しい広さの"書斎"だった。


「でけぇ…。」


「はい。のべ101300もの蔵書数を誇り、その中の9割が秘匿書物、すなわち禁書。ラインズ家が何代にも渡って搔き集めた情報の宝物庫がここでございます。」


 剥がしたベールの防衛魔法も強力なものであったが、それだけではなく、本自体にも鍵の掛かったものすら見える。禁書庫というだけなら{ユーブサテラ}のキャラバンにもゲートの一つとして存在するが、さながらここは禁書図書館。


「区分けとしては、先程から見えていた棚が一般閲覧を可能としているもので、それ以外の、今現れた全ての本棚が禁書棚でございます。加えて説明する様にと仰せ使いましたことが一つ。今しがた奥に見えました書斎横の暖炉ですが、あの暖炉裏は隠し通路となっておりまして、斜塔を覆う強固な壁の中から階段、或いはゴンドラを利用することで地上階層に御座いますラインズ家別邸に移動することが出来ます。」


「あの、教会か!!」


 俺たちはソフィアが酔いつぶれていた間に散策した教会の地下室を思い浮かべる。そこはまるでお城の地下牢のようなレンガ造りの閉所。あまりにも長い通路が見えた為進まなかったが、なるほどラインズ家は、トライデントの唯一王"本部ギルド"の立ち位置を脅かす力を持っている。


「はい。仰る通りでございます。現在、ソフィアちゃん…、ッ…失礼。ソフィア様が」


――ちゃん付けかぁ~。


 俺たちの何人かはニヤリと笑い腕を組んだ。


「…住んでいらっしゃる教会は、おんぼろな見た目をしていますが、強固な防衛魔法により外敵からの侵入者を寄せ付けません。これは、現在のC1と仕組みがよく似ております。」


 層間を安全に渡る関所を持ち、なおかつ地上階層にキャンプ地を持つ。


「まるで地上階に行くための前哨基地のようである…、なんて記述も禁書なかには御座います。」


 前線を維持する為の拠点か、はたまた前線そのものだったか、ラインズ家にまつわる話はとても興味深いが、疑問に思うことがちらほらある。


「リリーは何で、見も知らずの俺たちに、こんなにペラペラと機密を話してくれるんだ?」


 情報を宝と考える"シーカー"にとっては不気味な話だ。


「はい、一重に命令だからでございます。ソフィア・ラインズはアレでも{ラインズ}現当主でございますから。私はただ従うまで。」


 それでも、パトロンになってもらったのは昨日の今日だ。不可解なことには変わりない。


「んー、しかし、強いて言うのなら"本気だから"ではないでしょうか。」


 リリーは顎に人差し指を置き、含みを持たせた言い方をする。彼女は見た目やその話し方に相反して、立ち居振る舞いは子供っぽい。


「それに、目に見える全てがこの世の全てだとお思いなら、僭越ながら、シーカーには向いていないでしょう。」


 言葉も挑発的になったみたいだ。本来はもっとフラットな娘なんだろう。


「仰る通りだ。」


 プーカは書斎の中心にある大きな椅子を揺らし、テツは既に何冊か広げている。リザは技術系の棚を漁り、アルクは売り物を見るように、ツカツカと歩きながら全体を眺めている。


「でもまさか、これで全てじゃないとはな…。」


 俺は感心したように周りをグルリと眺め「流石だ...」と呟いた。


「それは、どうでしょうか…。禁書はまだ有るかもしれませんし、もしかしたらー、無いかもしれませんよ。」


――ふん、掛かったな。


「今のは誘導だ。多分禁書はこれ以上無いし、仮に有ったとしても大した量じゃないだろ。」


「ん…。ふふ、それは~、どうですかね?」


 リリーは笑いながら振り返り、誤魔化すように軽いウィンクをした。





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