設定資料:とある童話の研究資料
(ここは伝統あるラインズ家の禁書室だ。貴方は塵一つ無い本棚から、古びた童話に幾重にも注釈と資料が貼り足された本を発見した。中身を読み進めると、長年搔き集めた斜塔街の秘密が詰まっているようだった……。)
『――――――――{エルダのダンジョン―――――――
訳注※エルザ あるいは エルダ。研究者によりけり。
―――――
・
・
・
・
私が出会ったさすらいの女神は、淡々と語り始める。
・
・
・
・
「――【エルダのダンジョン】第102頁。第五章「潜り」より――
先刻。数々の悪意が隊を襲った。ここが信仰の為に作られた場所であるなら、いささか選民思想が強過ぎるようだ。針を生やす床、鉄槌の如く迫り来る天板、血塗られた刃の振り子、猛毒霧の仕掛け。ここを越えられるものは、形はどうであれ、既に"崇拝されている"ものであるには相違ないだろう。我が隊がそうであるように……。」
「――【エルダのダンジョン】第182頁。第6章「荒地」……――
命を落としたわけでは無い。しかし、神殿を抜けてから始まった新たな冒険の道程より、半数以上名の帰還を余儀無くされた。進行には無駄が無かった、強敵すらも私らの敵ではない。しかし、問題は食料だ。あぁ。かの大地、天国のような楽園に、心を奪う絶景だけではなく、胃袋を満たす食料が有れば……。」
「――【エルダのダンジョン】第184頁。第7章「覚悟」……――
試されているようだ。覚悟を。歩めど歩めど、変わらない景色を眺めながら、何度も何度も似通った道を進み続け、食料と水だけが消えていった。まるで、ここに住まう適応者だけが、優遇されているような悪辣な環境。そして、光無き荒野、枯れ木の樹海を進み続けた時、背中を蛇腹が伝ったように、恐怖と不安が私を襲った。方向は正しいのか、終わりは有るのか、意味は有るのか、覚悟は有るのか、と。さながら彷徨う我々は死霊のようで、餓鬼の世界に迷い込んでしまったようだ。或いは本当に、死んでいるのかもしれない……。」
「――【エルダのダンジョン】第184頁。最終章「狂気」……――
それ以来、女はしばらくの間、口を開閉したまま声を発さなくなった。そして徐に、笑顔を見せ、先刻と打って変わり、楽しそうに話を続けた。「その後は、ふふっ、すっごい遺跡が有った。その中には素晴らしいものが有った。金銀財宝とね、玩具だ。ではなくて、そのなんだったか、武器があっ、……有った。大きな槍だ、私はそれをお日様に投げてみれば、それは消えた。そうあのね、おもちゃで争いが起きた、そのおもちゃはこんな国なんて一瞬で壊せるんだけど、捨てなきゃいけなくて……」それから彼女は、意味不明に気味悪く笑いだして、しばらくして笑いが収まってから、今度は悲しそうに語り出す。「――でね、私を守る人形さんは、六才のまま死んじゃった。それから七才の誕生日、49層で、私が神様に近づいた日。私だけのプレゼント。でも、みんなは少し寂しそうな顔をしてたから、私はおうちに帰ったの。今日もママが、パイを作ってくれるから!!』彼女の話は本当なのだろうか?ここまでご一読頂いたシーカーの諸君、これだから探索は止められないよね!?」
稚拙な落書きの跡を残し、童話のページはここで破り取られている。
―――――――――』
下の星々を1クリックしてくれたら元気になります。 さすらいのブクマボタソhere
☆☆☆☆☆” ↓↓ ↓↓