③オルテガの日常
「TIER1シーカークランは7つ。
フェノン騎士団シーカー部隊{船主:オリバー・ウィリアムズ}
ネビュラ探索隊{元主:アルプ・ネビュラ}
サラマンダル・アルデンハイド{領主:オーガスタス・アルデンハイド}
ウィンディーノス・ヒュドラ{領主:ウィル・ヒュドラ}
アレクサンドロス探潜団{頭領:ブラン・アレクサンドロス}
アポロニカ騎士団シーカー部隊{団長:アーサー・ヴィクトリア}
そして、
トーチライツ探索隊{先導主:オルテガ・オースティック}。
まず初めに、
探索士を志す皆さんにまず伝えておくべきことは、これらを束ねる偉大な彼らには近づかない方が良いということです。……え?いや、止めて下さいよ。僕は例外ですってば。」
いつも通り生徒に茶化されながら、この天邪鬼たちを束ねる偉大な教室の長は、苦笑いを浮かべながら黒板に文字を書き足していく。
「……こらこら皆さん。謙遜したとは言え、僕も昔は凄かったんですから。――とかく、TIER1クランの特徴、TIER2との差別化として挙げられるのはやはり、アポストルシーカーの存在に有ります。オーパーツという各国の軍事力を左右し得る未解明技術の化石が注目され、あらゆる国家が総力を挙げシーカークランへのバックアップを謀る現代情勢。どれだけクランとしての力を蓄えようとも、一線を越えさせない圧倒的な力の証明書こそが{アポストルクラン(=構成員にアポストルシーカーがいる。)}であるという事です。」
「フェノンズに入るにはどうすれば良いんですか!」
「TIER1クランにも募集を行っている所と、スカウトでしか人を取らない所に分かれます。」
教室に居る生徒の人数は21人。内14人がオルテガのスカウトにより編入しドライアドへ寮を移した。
「先生にスカウトされた私なら入れますか?!」
「えぇ。フェノンズはともかく、他のクランになら入れるかもしれません。しかし、人員募集を何度も行うクランは生還率が低い傾向に有ります。TIER1クランであるにも関わらず、命を軽んじている可能性が有るのです。特段、大規模な人員を持つクランはその傾向にあります。アポストルシーカーとは飽くまで、シーカーとしての能力が最高位なだけであって、人格までが認められたわけでは無い。実力主義の中でだけ得られる称号なのです。特にブラン、オーガスタス、そしてアーサー。彼らは間違う事無きクズでしょう。」
オルテガは爽やかな笑顔でそう言った。狂気を孕むその瞳には、彼を彼らの同類だと思わせる異常性がある。もっとも、それを悟れない者はこの教室には居なかった。探索士寮ドライアド。ここは特殊な生徒が集まる学寮である。
「しかし、彼らのその功績、技術、能力、そこに至るまでの道筋等々を、同じ探索士として学ばない手は有りません。そしてそれらを多少なりとも御話出来るのが私のクラスでの特権です。……さぁ、みなさん。ノートを開いてください。」