⑩魔術学院の教壇から
「どうだった?私の授業は?」
「現実味が無かった。」
チャイムが鳴り、ミックラインズは質問に来た意欲的な魔術学徒と会話をしていた。
「でも、一番現実味が無いと言われるのは{護衛の任務}での話さ。」
「なら、みんなにもそれを聞かせればよかったんじゃないのか?」
少年は首を傾げ、ミックはそれに苦笑いをする。
「話が長すぎると授業に収まらないんだ。大人の都合。決められた時間と言う制約があるからね。でも要望が有れば話したいと思っているよ。でも実に、あの時の記憶は昨日のことのように思い出される……。」
ミックは机の上で頬杖を付きながら笑った。
「あの時は全てがぶっ飛んでいた。それもダンジョンでは無い地上世界でのことさ。でも、アレには裏話があってね。私たちがバースに辿り着く為の100回のシュミレーション。どうやら10回辺りで大まかな作戦の流れは決まっていたらしいんだ。」
「え?」
ミックは人差し指をピンと立てる。
「ふんむ。つまりは、シュミレーションの中での私が10回目辺りで、内通者も失敗作も見つけ出し、最後の作戦に至ったと考えられるんだ。本人も隠していたけど、途中の魔力の消耗量と、俯瞰的に見たあの時の状況から推察するに、10回も有れば結論に至れたのではないかと自己を分析しているのだよ。我ながらシュミレーションの中でも頭が良いことでミックちゃんは、多分10回も経たずに辿り着いたんじゃないかな?でもぉ? しかしそれなら残りの90回強も、ナナシは何をしていたんだろうね?」
ミックラインズは天板を見ながら、ニヤリと笑って考える。
「ニヒっ。ずばり、利用されたんじゃないかな~。私らが知っての通り、ユーヴサテラってクランは面白い所だからね。そしてその目的はとても高い。それは私らの現在地よりも遥か上のところ。彼らにとっては私らすら踏み台なのかもしれない。」
「どういうことだ?」
「ふんむっ。」
ミックはその問いに、潔く答えた。
「フェノンズシーカー団の二番艇。あの巨大キャラバンには沢山の価値ある情報が保存されていた。私の推測が正しければ、ナナシは私らの機密書類を脳に叩き込んだのさ。シーカーの世界は実力=情報量。はぁ、窮地だったとは言え一杯喰わされたなぁミックラインズよ(トホホ)」
ミックはそう言って笑ったが、少年はしたり顔で「違うね」と、机に伏せるミックを見下ろしながら言った。
「なっ、君。何かを知っているかおだね~?」
「――どうかな。」
少年は口笛を吹いて目を逸らす。
「んなぁっ。マスターシーカー様に隠し事は不可能さ。どんな情報でも引っ張り出してやるっての。……ねぇっ、単位とかでどうかな?いやや、その何か優等生としての推薦とかでも良しッ!!」
「――いやだ。」
「ねぇえええ!!教えてちょんまげなんつって、いやまじで!!!」
魔術学徒の教壇の上は、今日も探求心ある活気に溢れていた。